1-2 境遇
男には様々な過去があった。
それだけの強さを持ちながら、苦悩する日々だった。
その彼を、彼は見逃さない。
突然名も知れぬ豪腕の戦斧使いと出くわし、そして突然にも戦闘は始まった。中々変わった人物なのだろうが、その男の身のこなし方を見ている限り、グランバートの兵士でも敵わないような相手ではないだろうかと、実際に戦いを終えたカリウスはそう感じていた。
「お前、はじめから俺たちを殺そうと思ってなかっただろう?」
「えっ、あぁいや…まぁな」
「何か事情があるんでしょ?」
確かにその男が強いのはよく分かった。しかしカリウスは、戦う前からその男から殺気を感じ取ることが出来なかった。戦いにおける憎悪や悪意を兵士として学んだカリウスにも、その程度はすぐに分かっていた。メロディが事情を聞くと、その男は話し始めた。
「元々こんなことするつもりはない。だが、もう疲れたんだ。山賊でこき使われながら生きるのはもういい。だから意地で抜け出してきた。抜け出せたは良いが、行く宛もねぇ」
その男は、山賊の生活から抜け出してまだ一週間しか経っていないという。しかし、一週間の間食事も殆どせず、綺麗かどうかも分からない川の水で何とかしてきたという。不憫にも思えるが、カリウスとしては、それよりも山賊暮らしの男がどうしてここまで強くなれたのかが気になっていた。それを直接聞くことは、無かったが。
しかし、この男には苦難の中にも強く生きようとしている。今まで会ってきた兵士たちとは違う生き方で、強くあろうとしている。
…この人なら。
「もしよかったら、だけど、俺たちに協力してくれないだろうか」
「…?」
「俺たちは、ある道化師を追っているんだ。グランバート城にある大切な物を奪い、城を破壊した極悪者だ」
それを聞いた時、流石にその男も驚いた。たった一人の道化師が城を破壊することなど、普通誰も考えない。それだけ大きな爆弾でも持っていったのか、と考える人も多いだろう。カリウスは、その辺りの事情も少し説明した。そして、情報を集めるために町に向かっていることも告げる。
「ということなんだ。もしよければ、一緒に来て欲しい。きっと心強い味方になれると思うんだ」
「私もそう思うよ。貴方の腕だけじゃなくって、他にもいろいろ頼れるところがありそう!」
改めてその男は、この二人の器が大きいことを実感する。見ず知らずの相手に襲撃されたのに、自分に殺意が全くないことを見抜かれ、その強さに協力してもらいたい、と頼んできている。
彼には、迷う必要が無かった。
「むしろ、俺から言いたい。協力させてくれ!」
「よし、決まったな」
「だね!」
…アイク。
それが、豪腕の戦斧使いの名前であった。
…。




