表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/7

チュートリアルは自力でお願いします

 ガチリと鍵が開くような、パズルのピースが合うようなそんな音がした。

 一番最初に感じたのは、とてつもない爽快感だった。

 まるで体に雁字搦めにされていた鎖から解き放たれたような、全能感。

 

「俺は……死んだのか?」


 言葉とは裏腹に、俺の体はここ10年で一番『生きてる』そう感じている。

 目に入ったのは、木の葉の隙間から見える太陽の輝きだった。


「なんて、綺麗なんだ……」

 

 肺いっぱいに空気を吸い込み、ゆっくりと吐く、その空気の味わいに懐かしいと思ったのは気のせいか否か。

 死んだはずなのだ、俺は神に摩耗して使い物にならないと判断され消されるはずだった。

 死して初めて生を感じるとは可笑しな話ではあると思いつつも、どう言う理由かはさておき、自分が生きてる事だけはしっかりと感じ取れた。

 おそらく考えうるのは、最後にみたあの銀色の、恐ろしくそして美しいあの少女の事だろう。

 あの少女をまず恐ろしいと感じた、魂が裂けるような、心が砕けるような、見てるだけで全てを捨て去りたい圧倒的恐怖を。

 しかし、それとは裏腹にあの少女には美しさを感じた、魂が導かれるような、心が惹かれる、見てるだけで全てを捧げたくなるような、圧倒的な美しさを。

 

 体を動かしてみる、そして初めて自分が地面に仰向けに倒れている事に気づく、視界が空を向いてる時点で気づけと言う話である、なんとマヌケな。

 俺は立ち上がり、衣服についた土や木の葉を払う、身につけてる衣服は、現代の物とは思えぬなにやら異国情緒あふれる布で出来た服だった。

 辺りを見回すと生い茂る木々から、ここが森の中だと言う事が分かる。

 

「あれ?」


 体が軽い、農作業である程度鍛えられていた体だったが、ここまで引き締まっていなかったはずだ。

 そして視線も低い。

 その上、今上げた声がなんだか高い気がする。

 おかしい、これは本当に俺の体なのだろうか?

 そう思いながら、自分の体をまさぐる。

 すると、腰元にやや大きな袋があることに気づく、それ以外持ち物といったものは無くとりあえず袋に手を入れてみる。

 重さから言って大したものが入っていない気がするが、今は自分の顔が見たい。

 なにか鏡のようなものでも入っていないだろうかと思い手を奥まで入れると、硬い感触があり、それを引き出してみた。

 

「はぁ?」


 明らかに袋の重さや形的には不釣り合いな鏡が出てきた、大きさ的には、入っていてもおかしくないような、壁掛けにして使いそうな鏡である。

 まぁ、いいとにかく今は、自分の顔をとその鏡を覗きこんでみるとそこには……。


「お、俺、だよな?」


 確かに自分だった、しかしそれは……。


「若返ってる?」


 その顔は若返っていた、10年ほど、そう、記憶を失ったあの頃の顔に。


「おいおい、嘘だろ?」


 声を上げてその鏡、正確に言えば鏡に写った自分の顔を見ていると。


 名称:真実の鏡

 この鏡はあらゆる虚構を許さない、そこに写すは真実のみである。


 なんか出た。

 何という説明文、そして俺の独り言を否定しやがった。

 

「――――ッ」


 声にならない、声。

 とりあえず落ち着こう。

 まず、俺は若返っている、そしてなにか鏡からは文字が出た。

 いや、鏡に文字が写ってるわけはなく、空中に文字が表示されていると言うのが正しいのだろうか?


「あれか?ネット小説の鑑定とかそう言う能力で見た事あるぞこれ」


 俺は、療養中はインドアと言うより、あまり外出をしなくなり本を読む事も多くネット小説やゲームなどにハマっていた。

 ハマっていたというより、あれは単純な現実逃避だったのだが、その手の知識に事欠く事は無い。


「そう言えば、あの時あったアレは神様的な何かで異世界とか何とか言ってたか、それ系のテンプレでいくと、俺は異世界に来たって事か?」


 自分に言い聞かすように独り呟くが、漠然とあの空間の事を思い出せるが、あまり思い出せない、あの少女のインパクトは薄れず記憶にあるのだが。


「いやでも、俺は消却されるはずだったわけで、異世界に捨てられたって感じで良いのかな?」


 あの空間、と言うよりここに来る以前からやたら無気力だった気力が、今は力溢れ頭は妙に冴え渡るのはひとえに若返ったおかげだろうか?


「それにしては、こんな妙にレアっぽいアイテム持ってる理由が分からん」


 真実の鏡と呼ばれるこのアイテムはどう考えてもレア物っぽい雰囲気がする金細工で縁取りされた横幅20CM程の円形のこの鏡を、袋にもどしてみる。

 やはり、と言っていいのだろうか、袋大きさ的にもっとパンパンに膨れ上がるはずなのに、外から触っても中に鏡が入ってる様には感じない、柔らかくなんだか綿でもつまってるかの様にふんわりと少し膨らんでる程度だ。


「な、なるほど……」


 自分の理解力の限界は超えていた、が自分の中に溢れる気力が混乱を抑え、別に気にしなくてもなんとかなるし、そんなもんだよねと感じさせてくる。

 確かにその通りかもしれない、別に命の危機でもないし困る事ではないし、逆に便利なものである。

 ここに来る前までのネガティブだった感情が、妙にポジティブに偏ってる気がするが、まぁ、良いことだろう。

 今までがネガティブ過ぎただけというのもあるだろうし。


「さて、テンプレなら、ここで、なんかチュートリアルとかあるはずなんだがそんな物ないしな。」


 辺りを、見回すと木漏れ日で明るく照らされた森の中と言った感じである、無論、自分を召喚したお姫様やロリババァどころか動物さえ見当たらない。

 

「やはり、魔物とか出たりするんだろうか?」

 

 魔物、モンスター、言い方は色々あるが、異世界の定番と言った危険がある生物が襲ってくる事が今一番の警戒対象だろう。

 いや、まぁ、なんでここを異世界だとすんなり認めてるかって疑問もある。

 ただこういう不思議アイテムを持たされ若返りさせられて、元の世界に戻された可能性もある。

 あるのだが、確かにあるのだが、自分にはここが異世界だと感じられるのだ、どうしようもないくらい否定出来ない程に、すんなりここが異世界だと確信していた。


「テンプレ通りでいけば、周りからキャーとかき聞こえて助けにいくのがテンプレなんだろうが、そんな事も無いな」


 オタク脳と言うなかれ、ここが異世界だと言うのならばそういう時の対処法と言ったらテンプレを参考にするしかないだろう。

 異世界に行った時の対応方法等元の世界では誰も教えてくれないし、調べても分からないだろう。

 それこそガイドブック代わりになるのはラノベくらいな物である。

 

「とりあえず、テンプレで言うならこれか、『ステータス』」


 そう唱えるように呟くと、もはや当然と言わんばかりにでてきたそれ。

 

 名前 クルト=アイダ

 職業 伝説の勇者

 称号 世界に愛されし者

 レベル 9999 OVER


 スキル

 鑑定A 剣術SS 勇者EX 精霊魔法EX 騎乗S 言語翻訳EX 

 閲覧不能使用不能スキル多数


「突っ込み所有りすぎだろ……。」


 とりあえず、上からいこうか。

 名前は、まぁ西洋風に直せばこうなるだろうし、問題は無いわな。

 んで、職業は、あーうん、どうやら俺は勇者らしい、以上。

 以上って言ったら以上なんだよ、これ以上どうしろと。

 いやまぁ、神様転移チート勇者って事なんだろう誰も魔王倒せとか言ってくれねぇけど。

 言われても倒しに行きたくないがな。

 称号も、似たようなものだな。

 世界を守る勇者なんだから、世界から支援してもらえるって事だろう、おそらくきっと。

 でレベルだけど、チートばんざーいって事で良いんだろうか。

 きっといいんだろう。

 まぁ、異世界にいきなりほっぽり出されてなんの説明もなくチート無しだったら死ぬわな。

 レベルだけ表示されて、HPとかMPとか無いけどそう言う概念はないのだろうか?

 で、まぁスキルだけど、おそらく英語がAに近いほど高く、SとかSSとか上がっていくのだろう。

 EXはまぁ、別格って扱いでいいのかな? もしくはカンストか?

 鑑定は、まぁ、アレだ物の詳細が分かるってやつだろうな、真実の鏡を鑑定したんだろうな、発動方法わからんけど。

 剣術は、きっと勇者だから聖剣とかで戦える用についてるんだろうな、発動方法わからんけど。

 勇者ってスキルなのか? どんなスキルなんだよ、意味も発動方法もわからんけど。

 精霊魔法ってのは、読んで字の如く精霊を使った魔法だろうなら、発動方法わからんけど。

 騎乗って事は、馬とか乗れんのか?乗馬の経験とかねぇけど、きっと乗れるのか、のったら発動すんのか?

 言語翻訳ってのはやっぱりあれだよな、異世界で言葉通じないってのをなんとかしてくれるんだよな。

 きっと、発動方法わかんねぇけど、きっとパッシブだよな?自動発動だよな? EXなんだし文字も対応してんだろうなぁ?

 閲覧不能使用不能って事は封印されし力があるとかそう言うフラグだよな?

 

「とまぁ、ここまで考えたけども、分からんって事しか分からなかった。収穫は俺が勇者だって事か、というか知りたくなかったわ。」


 勇者なんぞ、所詮魔王に単身つっこまされる鉄砲玉のみたいなもので、魔王を倒したら倒したで排除されたりするだろうし、録なもんじゃないてのが俺の感想である。


「まぁ、とりあえずここでうだうだしていても仕方ない、森から出てみるか……どっちが出口かわからんけど」


とありあえず説明ばっかりになったけどこんなものかな、あとはアイテム袋説明をもうちょっとするかも。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ