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透子と伽耶の日常2

6月10日。私たちは登校した。ダックたちに再会できたし、あとは地道に活動に従事するのみ。私たちのA組には他校の男子と付き合ってる子がほぼいない。そのせいかちょっぴり優越感に浸れる。私たちはブランカ公国周辺の国々のチラシの校正を任されるようになったが、ダダ公国がダントツに多い。ただこの国はシラサギ公国のシードマン制度を踏襲する古臭いお国柄。どこまで本気か知らないが、チラシを読むとどうやらあんまり穏やかそうな方々ではなさそう。かと言ってダダ公国はシラサギ公国みたいな大国ではない。ソコで私たちは彼らの野望を阻止すべく立ち上がった。と言ってもやり方は実にシンプル。校正するふりをして内容を穏やかなモノへと書き換えるのだ。まだ名古屋には事務所さえなく、島流しに遭ったのは世間知らずのお嬢さまクレモン。18歳の彼女はレオパレスの仮設事務所で連日奮闘。もちろん新米エージェントはチラシに何が書かれているのかさえ知らなかった。私たちが穏便な内容に書き換えたせいか徐々に問い合わせが増えた。だがダダ公国は日本を真似て現場をナメまくってるからチラシを書いた人たちが消息不明。イベントはおろか事務所の開設すらできない有り様。もちろんチラシのチェックなどする人はいなかった。私たちはバレない程度にサボタージュを続けたが、親日派のダダ公国はリアルでは鼻つまみ者でしかない。クレモンに嫌がらせはないが、男性エージェントは早くもいかついポリスメンに徹底マークされた。彼らは北の指導者のダサダサカットを真似ていたからだ。「なぜそんな髪型をしてるんだ?」「僕たちの国で大流行してるんです」「そんな国があるわけないだろ」「いやホントなんですよ」「署まで来てもらおうか」ダダ公国は日本を真似ていたがリスペクトなど微塵もなかった。だからこそ落ち目の名古屋を狙ったのだが、思惑は見事に外れた。確かに名古屋は凋落したが、異世界で親日派は袋叩きに遭うしかない。ましてや日本に常駐するエージェントはみんな貧しかった。ダダ公国の男性エージェントはコミュニティーに入れず、途方に暮れた。私たちは[日本叩き]で溜飲を下げた。かと言ってクレモンとの関係は良好だし、彼女はますます私たちへの依存を強めた。だがダダ公国は日本と違い、根元まで性根が腐りきっていなかった。潔く己の非を認め、改心したのだ。彼らはシードマン制度を廃止し、バロン制度に移行すると発表した。そのため私たちは姉妹みたいな関係になり、男性エージェントも晴れてコミュニティーへの仲間入りを果たした。彼らは髪型を[震災カット]に変え人気を博した。[親日派が消えた]以上の悦びはなく、異世界はダダ公国を見直した。かと言ってソレは内輪の話に過ぎず、いまだに事務員はレオパレスで雑務に励む。だが思わぬライバルの出現で私たちは盛り上がった。クレモンはまだ1度もイベントを開けていないが、親日派をやめてからダダ公国に追い風が吹き始めた。事務員は現場軽視を改め、自らチラシをポスティングして回った。モノクロのチラシはカラーに変わり、男尊女卑の風潮は改められた。クレモンは兼ねてからヘンな国だと違和感を覚えていたが、徐々に確信へと変わった。私たちは昼休みに事務員とラインしたが[なぜ農政が超絶無能なのか]尋ねられた。「コメを作ったことさえない輩に農政がわかると思う?」「確かにね」現場をナメ腐った輩に現場がわかるわけない。それだけの話。袋入りのコメだけが異常なまでに高止まりしていったい誰が喜ぶというのか。超絶無能なのは農政だけじゃない。6月に備蓄米を大量に放出したって参院選までとても間に合わないだろう。見え透いた選挙対策としか思えない。「大阪万博は?」「アレが日本の真の実力」1970年は世界が安定に向かっていたし、大阪万博はどハマりした。だがソレは大阪のチカラではない。ラッキーだっただけだから再現性がない。追い風参考タイムを真の実力とカン違いしちゃった。学生運動が急激に萎んだのはリーダーがクソだからだ。マトモなリーダーがもはや日本にいなかった。そのため運動家が大阪万博に行って日和るが、それ以前に気持ちが萎えていたのだろう。万博だけで平和になるなら東京五輪の開催で日中戦争の拡大を止められたはず。だがアヘンを取りに行った帝国陸軍は食べていけるが戦略がない。本来ならば敵を海へ海へと追い込むべきがアヘンを取りに山へ山へと行ってしまった。更には当時の日本はナチスを真似てラジオを使い、大衆を巧みに扇動していた。仮に東京五輪が開催されていたとしても日中戦争の拡大を止められたのか?かなり疑問符がつく。私たちはクレモンに佐原母娘を紹介した。千夏はクラスメイトで明るくて活発。母親の綾子は穏やかで優しい女性。2人はさっそくエージェント活動に従事。私たちは力を合わせ、一緒にダダ公国を盛り上げることにした。

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