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透子と伽耶の日常

6月3日。私たちは登校した。純聖女学院の夏服は紺のセーラーに白のミニスカートだが、ブルマー離れを始めたので快適♥ウチはいまだに廃れたはずの昭和のブルマーを踏襲する古臭あい女子校。刺激のない生活に私たちは飽き飽きしていた。4月は必ずクラス内で新しい友だちを作るが、今年からソレを廃止。今さらそんなことしたって処女をもらってくれる人はいない。私たちは先日の女子旅の余韻が色濃く残り、連絡がつかなくなったセレイたちを偲んだ。クラスメイトはてっきり新しい彼氏ができたと誤解したほどだ。「また名古屋に来ないかな」「透子、毎日そればっかりね」だが伽耶ですらルスカにメガネを褒められてキクチで新しいメガネに買い替えたばかり。「赤札堂で充分って言ってなかった?」「あ、新しい判断よ」これまで伽耶は赤札堂で買ったブラック・ジャックをモチーフにしたメガネが大のお気に入りだった。でも恋は女の子を変える。私たちはバロンに再会するために生きてるし、月末にまた逢える。「7月の5日か6日よ?」「え!?そうだった?」「6月28日と29日が訓練日」まず訓練が先。対戦が翌週。私はやっと理解したが、伽耶は冷静。だが現実だけを見て生きるのは味気ない。おっとりした天然タイプの私と理知的なリアリストの伽耶は対照的。だが参戦すればのめり込むのは意外と後者だったりする。彼らは紳士的だし私たちに無粋なマネをしなかった。写真やビデオはしこたま撮られたが、たぶんリベンジポルノはされないだろう。私たちは昼休みにチラシの校正に没頭した。もちろん名古屋の美人母娘や姉妹。友人同士にばらまくチラシ。最近やっとカラー化したが、まるで昭和末期を彷彿とさせた。日本語の文章がちょくちょく怪しいし、キャッチフレーズが古い。なので私たちは勝手にアレンジし、現代風に仕上げた。かくして異世界側の野望は私たちの手でかなり控えめなものにサイズダウンした。だがノワは喜んだ。「問い合わせが増えたのよ」イベントの参加者も延べ10人を超えてきたし、バロンが対戦相手だから三十路の女性がメインターゲット。私たちは野望に胸を膨らませた。事務員はやさぐれてヤル気をなくしていたが、私たちの加入で息を吹き返した。ノワには参戦の前祝いに1万円のお米券が与えられた。コレで10キロのおコメが買える。農政の無能無策で日本に常駐する事務員たちの生活は厳しかった。だが農政大臣が変わるや彼女たちは顔をしかめた。「アイツじゃムリ」異世界は新大臣を酷評した。農政の見通しは[大本営発表]と揶揄され、わざわざ大本営発表に似せて大々的に報道された。「こんなに当たらない見通しを1度たりとも見たことがない」異世界の識者たちは呆れ返った。私たちは夏服の試作品のカタログを見てうっとりした。白の半袖のカッターシャツに黒のブルマー。ノースリーブの紺のスク水。だが黒のブルマーは生地が薄くてショーツの重ね着と変わらない。コスチュームに試作品も正規もなく、どちらでも大丈夫。私たちは無償でコスチュームもブーツも貸与され、修繕も事務所に持ち込めば対応してもらえる。ただし同じコスチュームを2着以上所有できない。ブーツも1人1足が原則。私たちは前祝いとして[バロン通信]が贈られた。バロンの専門誌だが、私たちは無料で定期購読できた。毎週月曜日に届くが内容は濃密。彼らは家庭を持たないが、さまざまな悩みを抱えていた。娯楽の乏しさや生活の厳しさ。パチンカスに借り逃げされたエピソードが多く、バロンは呪詛を込めてヤツラを憎んだ。名古屋を拠点に商売する人が多いが、かと言って中日ファンでもない。だが監督が井上に代わってからがぜん中日を応援し始めた。阿部と藤川には迷監督の匂いしか感じない。DNAは日本一になった。ヤクルトはイマイチだし広島は地味すぎ。だから中日しか応援するチームがない。長年にわたり商売してもなお彼らは名古屋に愛着を覚えなかった。イヤーな目で見られるたびにバロンはカン違い女を[パンパン]と名付けて心底唾棄した。「寒いわね」「アレはもはや女じゃないわ」うだる梅雨だが私たちはこれからでアタマがいっぱい。毎日セレイたちからの連絡を待つが、音信不通。彼らは名古屋に定住せず、リアルと異世界を往復した。女子高生にすら見向きもしないバロンは名古屋に何にも感じなかった。セレイたちは夜の店や風俗にも行かず、ひたすら商売に精を出した。私たちはそんなバロンに古いオトコを見出し、惹かれた。異世界へ参戦する子はたいがい日本に幻滅してるし、リアルにマトモな出逢いがないと白けきってる。だが[アンチ日本]は異世界のスタンダードだし、彼らに大歓迎される。このあたりがリアルとの違いであり[日本ダイスキ]なんて要らない。異世界は日本ギライばかりだから受け入れられやすいのだ。もとより私たちは日本に愛着ないし、今すぐにでも出たいわ。

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