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フィーニス・ウィア ❖終焉の軌跡❖  作者: 朱華のキキョウ
1章 血肉啜る悪魔の元に
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75話 英傑の騎士は尚も誓い 参拾

 ゆらゆらと揺らめく青い炎は真っ直ぐにアソビトのことを睨みつけていた。


 ──第4形態……おいおい、多すぎるだろ


 頬に汗を伝わせ、笑みを浮かべるアソビト。そんなアソビトの前方に立つバァルからは身の毛すら立たないほどの威圧が放たれていた。

 まるで41度の熱に苛まれたときのような惨い感覚が常に体を支配する。


「初めてだ……こんなにも楽しくて、胸躍る戦いは……こんなにも本気を出したいと思ったのは!」


 バァルは嬉しそうに天を仰いだ。そんなバァルにからあげが苦い顔を浮かべる。


「性格変わりすぎだろこいつ」


 誰しもが思ったことを口にするからあげ。バァルはそんなことには気も向けず、アソビトに目を向けた。


「俺は、お前に出会うためにこの1万年を生き続けていたんだ。きっとそうさ、お前に全力をぶつけ、砕けるために俺は生き続けていたんだ」


 1人で盛り上がり始めたバァルに全員が眉を顰めていた。攻撃を仕掛けてくる様子もなく、全員が警戒心を緩めていた。

 バァルは両手を広げ、また天を仰ぐ。しかし、先程とは違い、明らかに雰囲気が変わっていた。


「こんなことを思ったのはお前で2人目だ。タイマンで決着をつけよう……〈無源の呪縛(アグレクト・チェーン)〉!」


 その言葉がバァルの口から飛び出した瞬間、アソビト以外の全員が地面から突き出した鎖に掴まれ、地面に強制的に膝を着かせる。


「えっ!ちょ、なにこれっ!?」

「なんだこれ、取れねぇっ!」

「〈特殊スキル〉……これは厄介ですね」


 鎖を無理やりに剥がそうとするコウとからあげとは違い、レモンは鎖を見るなり全く動こうとせず、アソビトに顔を向けた。


「主様、この鎖に繋がれている以上、私たちは何もできません。〈暴喰ぼうしょく〉が言っていた通り、ここからは主様と〈暴喰〉のタイマンです」

「……嘘だろおい……」


 さすがに絶句するアソビトにバァルは嬉々として声をかけた。


「本気でやり会おう。俺とお前の、タイマンで。俺が勝つか、お前が勝つか、真の戦いを始めよう!」


 喜び、声を荒らげ、笑うバァルにアソビトは呆れたようにため息をつき、轟剣を地面へ突き立てた。


「たく、神ゲーなのかクソゲーなのか、ハッキリしねぇゲームだなぁ」


 頭をポリポリと掻き、そう呟くアソビトは言葉の後にため息を吐いた。

 それからアソビトは笑みを浮かべ、バァルへと顔を向けた。


「そんな曖昧なゲームが、1番中毒性があるんだよなぁ!」


 アソビトはそう言って轟剣に触れる。アソビトが触れた轟剣は剣身を地面に刺していたが、中枢ちゅうすうにある球体の液体は満タンに満たされていた。


「タイマンだろうがなんだろうがやってやるよ。俺の〈新スタイル〉でな!」


 轟剣の柄を強く握り締め、勢いよく地面から抜き出す。そして、アソビトは轟剣を両手で持った。


「〈轟解ごうかいゲージ〉解放だ!」


 アソビトがそう言った瞬間、轟剣は煙を吐き出した。


 一般的に大剣と呼ばれる巨大な剣。〈フィーニス・ウィア〉では多くの武器種が大剣枠に分類されている。そんな大剣枠に分類される武器種の中で性能がずば抜けて高いのが、〈轟剣〉と呼ばれる武器種。

 制作にかかる素材や費用、それに加え鍛冶師の腕もかなり良くなければ作ること自体叶わず、ドロップアイテムとして存在しない。そのため、レベルカンストプレイヤーも入手している人はかなり少なく、そもそも存在すら知らないプレイヤーもいる。

 〈轟剣〉が大剣枠の武器種の中で性能がずば抜けて高いと言われる所以がある。それが〈轟解ゲージ〉による変形だ。

 武器はあらゆる武器へと姿を変えることが出来る。それはプレイヤーのステータスや戦闘スタイル、そしてプレイヤーの意思も把握される。


 アソビトの手の中にある〈轟剣〉は煙を吐き出し、自らの姿を隠す。

 音を立て、煙が多く出る。それは次第に小さくなり、煙が止まる。

 煙の中にある巨剣とそれを持つアソビトの影が見える。その影の中でアソビトは轟剣の柄を両手で握り締め、柄を両手で強く押す。

 柄を両手で強く押し始めた時、轟剣が煙を出した時とは違う音が鳴り出す。まるで機械のギアが回り出したかのように音が鳴る。

 しかし、その音に気を取られず、アソビトは柄を押し続けた。そして、ギアの回転速度が上がった音がなった瞬間、アソビトの手にある柄が左右に別れ、煙の影の巨剣は消え失せる。

 アソビトは両手に持ったそれに目を向け、笑みを浮かべ、自身を覆う煙を切り払った。

 アソビトを覆っていた煙が晴れ、姿を消した轟剣が何に変化したのかを顕にした。


「あれって……」

()()、か?」


 アソビトの両手に握られた細く鋭い2本の片刃の剣が輝石の光を反射させる。

 コウとからあげはアソビトの両手に握られる剣を見て驚きを顕にした。


「こんな軽量武器、久しぶりに握るなぁ。まぁ、腕慣らしには丁度いい相手か」


 アソビトはバァルを睨みつけ、そう口にした。バァルは小さく笑い、右手の手鎧をグッと嵌めた。


「さぁ、始めよう。生死をかけた戦いってやつを!」


 バァルは両手を広げ、アソビトにそう言い放った。

後々触れるかもですが一応

〈フィーニス・ウィア〉ではジョブによる武器の装備制限はなく、基本どのジョブでも全ての武器種を使用することが出来る

しかし、ジョブの説明に書いてある、相性〈悪〉と記された武器種やそれに付属する武器はレベルの上昇率が低かったり、スキル取得に時間がかかったりとデメリットが存在する

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