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フィーニス・ウィア ❖終焉の軌跡❖  作者: 朱華のキキョウ
1章 血肉啜る悪魔の元に
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72話 英傑の騎士は尚も誓い 弐拾漆

 空で滞空し、口を青白く輝かせるヲクテルースへコウとからあげがとり天に跨り、急接近する。


「大技なんてさせるかよ!」


 攻撃の届く範囲まで近づいたのを確認し、からあげはとり天の背中から飛び上がり、ヲクテルースへ〈竜の鉤爪(ドラゴン・クロウ)〉を振りかざす。

 それを目の端に捉えたヲクテルースは開いていた口を閉じ、からあげからの攻撃を回避する。


「あっ!お前避けるのは違うだろ!」


 攻撃を簡単に躱されたからあげは文句を言いながら落下する。が、それをコウが掴み、とり天の背に乗せる。


「何やってんのよ」

「仕方ねぇだろ、避けるなんて思ってないんだから」


 言い訳を口にするからあげにコウはため息を吐きながら双大剣を構えた。


「普通のエネミーじゃないんだから大技中に避けるなんて簡単に予測できるでしょ」


 からあげにそう告げながらコウはとり天の背から飛び上がり、ヲクテルースの背中に飛び移る。

 背中に乗られたのを察知したヲクテルースは体を大きく震わせ、コウを振り落とそうとするが、背中に張り付いたコウは落ちることなく、双大剣を振りかぶった。


「この前覚えたスキルの実験台にさせてもらうわよ!」


 振りかぶった双大剣をコウは容赦なくヲクテルースへと叩き込んだ。


「〈覇王の豪舞(ドレンシア・ルーラ)〉!」


 〈覇王の豪舞(ドレンシア・ルーラ)〉、エネミーへ乱舞を行うジョブ〈覇王ルーラー〉の専用スキル。攻撃がエネミーにヒットしている間は一切途切れず、攻撃を永遠に叩き込むことが出来る。

 背中に何度も重い攻撃を喰らうヲクテルースは更に体を振り回し、背中に乗るコウを振り落とそうとする。

 完全に気がそれたのを確認したからあげはとり天に合図を送る。


「とり天、オレの動きに合わせろ。あいつの脳天ぶち抜くぞ!」


 【キィァ!】


 とり天はからあげの言葉に元気よく返事をする。返事を聞いたからあげはとり天の背から飛び、ヲクテルースの頭上へと飛び上がった。

 暴れ回るヲクテルースの背中では未だコウが双大剣を振っていた。

 ブレにブレるヲクテルースの脳天を目で追い、ヲクテルースの頭の動きを予測する。

 不規則に動いているように見える頭の動き、それを凝視するからあげは笑みを浮かべ、とり天へと声を出した。


「オレの攻撃に重ねろとり天!」


 【ギャィァァァ!】


 返事をし、とり天はからあげの更に上へと飛び上がる。それを確認せず、からあげは動き回るヲクテルースの脳天へ獣爪剣を向けた。


「行くぞとり天!〈螺旋爪抉らせんつめうがち〉!」


 【キィァァァァァ!!!】


 ヲクテルースの脳天へ落下するからあげは空中で体を捻り、獣爪剣を前に回転しながらヲクテルースの脳天へと落下する。その後をとり天が翼を畳み、まるでミサイルのようにヲクテルースの脳天へ飛び込む。

 暴れ回るヲクテルースが気付かぬ間に迫る危機は確実にヲクテルースの脳天を穿った。


「地に落ちやがれぇ!」


 獣爪剣ととり天の嘴がヲクテルースの脳天を貫く。ヲクテルースは頭部が下方へと弾かれ、その反動で体が回転し、背中から地面へ落下する。


「ちょっ、攻撃止められないんだけど!」


 ヲクテルースの背中でスキル〈覇王の豪舞(ドレンシア・ルーラ)〉を発動したコウは嘆きながらヲクテルースと共に落下する。

 〈覇王の豪舞(ドレンシア・ルーラ)〉は攻撃がエネミーに当たっていれば攻撃が止まることがない。かなり強い効果だが、長所は時に短所へとなり得る。攻撃が当たっている状態であれば、攻撃の手が止まることは無い。つまり、攻撃を途中で中断するなどできないのだ。エネミーが攻撃を避ける、もしくは倒れない限り、攻撃の手を止めることはできないのだ。

 背を地面へ向け、落下するヲクテルースは閉じていた口を大きく開き、からあげへと顔を向けた。


 ──は?おいおい、そんな話聞いてねぇぞ!


 喉を青白く光らせるヲクテルースを目にしたからあげは焦り出し、隣にいるとり天の脚を掴み、とり天へ声を荒らげた。


「とり天!あいつに狙われないように不規則に飛び回れ!」


 【キィ?】


「いいから!」


 からあげの言葉に疑問を抱いていたとり天。そんなとり天をからあげは催促する。わけも分からずとり天は翼を広げ、ヲクテルースに狙われにくくなるように不規則に飛び始めた。

 飛び回るとり天に目を向け、ヲクテルースは迷いなく喉の奥の青白いものを棒状に伸ばし、吐き出した。

 ヲクテルースの喉から飛び出した青白い光線は空を狙い、とり天から完全に外れる。それを見て安心したからあげ。しかし、ヲクテルースが簡単に逃がす訳もなく、光線はとり天の飛行速度を優に上回り、とり天の後を追う。

 背後から迫り来る光線を回避するため、飛び回るとり天だったが、ヲクテルースの狙いは正確だった。

 ヲクテルースの口から飛び出す光線はとり天の後を確実に追い、遂にとり天とからあげを捉え、光線を直撃させた。それと同時にヲクテルースは背中から地面へと落下し、コウはヲクテルースによって押し潰された。

 ドカーン!と爆発が起こり、砂埃が爆風によって巻き起こされた。

 砂埃は長い間ヲクテルースの姿を隠していたが、それは徐々に晴れていき、中の状況を顕にした。

 薄らと砂埃の中で立つその巨大な影は翼を大きく広げ、立ち込める砂埃を一気に払い除けた。


 【グルォォォォォォ!!!】


 勝利の咆哮を上げるヲクテルースの足元には押し潰さ、体の節々から赤いポリゴンを散らすコウが倒れ、空からは黒焦げになったとり天とからあげが落下する。

 咆哮を上げるヲクテルースの前方、そこには地面に髪を乱れさせ力なく倒れるレモン、壁に激突したのち、地面へ崩れ落ちるゾルちゃん、そしてバァルによって胴体に大きな(×)の傷を付けられたアソビトが地面へ膝を着けていた。

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