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フィーニス・ウィア ❖終焉の軌跡❖  作者: 朱華のキキョウ
1章 血肉啜る悪魔の元に
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57話 英傑の騎士は尚も誓い 拾弐

 【ギャエェェェェェ!!!】


 身体中穴だらけになった〈ハイドレッド・ワーム〉は奇声をあげ、力なく地面へ倒れる。

 次第に〈ハイドレッド・ワーム〉は光だし、泡沫となって消えていく。

 アソビトは笑みを浮かべながらスナイパーライフルを担ぎ直し、鼻を鳴らした。


「いい腕慣らしになったぜ」


 そう言ってその場を離れようと振り返ったアソビトは目の前に立っている人物に気づき、足を止めた。

 その人物はキラキラと目を輝かせ、アソビトの元へ爆速で駆け寄った。


「Amazing! It's really great!」

「え、え?えっと?」


 突然迫られ、流暢な英語を淡々と口にするその人物にアソビトは終始困惑状態だった。

 それに気づいた人物は慌てて口を塞ぎ、深呼吸をして口を開いた。


「エッ、と……は、はじめマシて……わタし、の、ナマえわ……Silvelion(シルヴァリオン)と、もうしマス」


 先程の流暢な英語とは打って代わり、辿々しい日本語で喋り始めた女性、シルヴァリオンは身振り手振りをしながら喋り続ける。


「あ、ナタの……おなマえ、おしエて、くダサい」

「……あ、名前?えっと、アソビトといいます」


 シルヴァリオンの敬語に釣られ、アソビトも敬語を使う。

 まさか返答が来るとは思ってなかったのか、シルヴァリオンはすごい大喜びし、口を開いた。


「あノ、さっきノ、と、トテも、すごい……デスね!わタし、かンどう、しまシタ!」

「あ、えと、頑張って日本語で話さなくてもこのゲームには〈翻訳機能〉がついているので、大丈夫ですよ」


 アソビトの言葉にシルヴァリオンはそうなの!?と驚いた顔をしながらメニュー画面を表示させ、設定を開く。そして確かにそこには〈Translation〉と書かれており、恥ずかしそうに頬を赤らめながら〈ON〉へ切り替えた。


「親切にどうもありがとうございます、アソビトさん」


 アソビトの前に文字が浮かぶ。〈トワイライト・アイソレーション〉に搭載されている翻訳機能。それは喋った言語を直接変換するのではなく、喋った言語を文字に起こし、その文字を変換させてプレイヤーへと表示させるものになっている。

 この翻訳機能はお互いに有効にしなければならず、片方が有効にしていても翻訳はされない。アソビトはゲームを始めた当初から翻訳機能を有効にしていたため、シルヴァリオンが有効にするまで互いに翻訳されなかったという訳だ。


「あの、アソビトさんに1つお願いをしたいのですが、いいですか?」

「お願いですか?」

「はい、わたし……まだこのゲームを初めてまだ日が浅いんです。なので、このゲームについて少し教えて頂けませんか?」


 シルヴァリオンの言葉にアソビトは少し驚きを露わにしていた。


 ──聞いた事のない名前だと思ったが、まさか初心者!?まじか、このゲームに新規とかいるんだ、まじか


 アソビトは驚きつつも咳払いをし、口を開いた。


「えっと、分かりました。自分もかなり久しぶりにプレイしますが、教えられる部分は教えます」

「本当ですか!ありがとうございます!」


 嬉しそうに跳ねるシルヴァリオンにアソビトは小っ恥ずかしそうに頭を掻く。

 嬉しそうにシルヴァリオンがアソビトに向かって口を開いた。


「それではアソビトさん、早速……あ、待ってください」


 シルヴァリオンは1人で言葉を止め、少し俯いた。それにアソビトは首を傾げていた。


「なんか、コメントが……」

「コメント?もしや、ゲーム実況者の方ですか?」


 ゲーム実況者。動画配信サービスでゲームをプレイしているところを生配信、もしくは動画で視聴者を楽しませ、スーパーチャットやサブスクリプション、視聴数によって報酬を貰い、生活する人達のことだ。

 VRMMOが流行る前まではコントローラーやキーマウでのプレイによる客観的実況しか出来なかったが、VRMMOが流行ったことにより、臨場感たっぷりの一人称視点実況が主流となった。

 ゲーム画面はもちろん、メニュー画面なども全てゲームの世界での眼前に出現するため、視聴者もまるでプレイしているかのような臨場感が味わえるようになった。

 ゲームによっては酔いが酷い視聴者用への配慮として第三者視点プレイ画面を表示することも出来る。その場合はプレイヤーは一人称視点だが、動画に映る画面は三人称視点になる。

 シルヴァリオンはアソビトの言葉に頷きながら口を開いた。


「そうですね、ゲーム実況をしています。今なんか、コメント欄が盛り上がってるんですよね、ちょっと確認しますね……」


 そう言ってシルヴァリオンは空を指でスワイプする。今のシルヴァリオンの目にはコメント欄が映り、なぜ盛りあがっているのかをコメントを遡って確認している。


 ──このゲーム過疎ってるから人がいることに歓喜してるんだろうな、まぁかく言う俺もかなり驚いてるし最後までプレイしたものとして嬉しさもあるんだが


 そんなことを考えているとシルヴァリオンが何故か仕切りにこちらをチラリと見てくる。

 なんだろうと首を傾げていると、シルヴァリオンはかなり驚いた表情でアソビトを見た。


「……あの、何かありました?」


 アソビトがそう問いかけると、シルヴァリオンは震えた口で言葉を紡いだ。


「……アソビトさん、コメントであなたが()を……〈プロゲーマーからあげ〉を打ち破ったと言っているんですが、それは……本当ですか?」


 シルヴァリオンの言葉にアソビトは苦笑いを浮かべながら口を開いた。


「え、えぇまぁ……言っても、ハンデがあったおかげですが」


 その言葉にシルヴァリオンは酷く驚愕している様子だった。

〈シルヴァリオン〉の名前の由来

銀色の英語のSilverシルバーと朱色の英語のVermilionバーミリオンを組み合わせたもの

銀朱色から取っています

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