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フィーニス・ウィア ❖終焉の軌跡❖  作者: 朱華のキキョウ
1章 血肉啜る悪魔の元に
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4話 新武器ゲット

 アソビトは大剣を構え、エネミーと敵対していた。 牙を剥き出しにし、涎を垂らして息を吐く。その口には大剣が加えられており、全身は赤紫色の体毛で覆われている。

 4足でしっかりと地面を踏み締め、耳をピクピクと動かす。


 ──狼?にしては体格がデカイな


 狼の見た目をしたエネミーの頭上に簡易ステータスが表示される。


グウェルフェンダー

Level:8


 ゴブリンを狩り、レベルを上げたアソビト。現在のアソビトのレベルは10。アソビトの方がレベルは上だ。


「狼……恐らくスピード重視。でもなんで大剣をくわえてんだ?」


 口に咥えられた大剣は黒く煌めき、弓の様に湾曲した刃を持つ。

 アソビトの現在所持している〈ローデリア〉よりも軽量な見た目をしている。

 アソビトはグウェルフェンダーを指差し、笑みを浮かべた。


「お前の武器、見た目もいいし機動力もありそうだなぁ」


【グルルルルル……】


 明らかな威嚇体制を取るグウェルフェンダーにアソビトは笑みを浮かべ、大剣をグウェルフェンダーに向けた。


「お前の大剣、俺が使ってやるよ!」


 その煽りに促進され、グウェルフェンダーは大剣を強く噛み締め、アソビトに飛びかかる。


【グルルアアアア!】


 一直線にアソビトに飛んでくるグウェルフェンダーを大剣で攻撃する。が、グウェルフェンダーは咥えた大剣で華麗にいなし、あろう事か空中で体をひねり、大剣を振り攻撃を仕掛けてくる。

 湾曲した大剣を〈ローデリア〉で防ぐが、弾き返され、後ろに退く他なかった。


「おいおい、なんて咬合力こうごうりょくだよ」


 とんでもないスピードと威力で放たれた湾曲した大剣の攻撃だが、牙の傷は愚か、顎の力が一切緩んでいない。

 大剣を咥えるだけの咬合力はあるようだ。


「だが、こんなところでそのドロップしそうな武器を見過ごす気は無い。お前を狩ってその武器貰い受ける!」


 アソビトは走り出し、先制攻撃を仕掛ける。

 グウェルフェンダーはカウンターを狙うかのように4足でしっかりと地面を踏み締め、大剣を噛み直す。

 アソビトとグウェルフェンダーの距離が目と鼻の先までに縮まり、互いに大剣を振った。


「〈アンガード・ベリアル〉!」


 〈ローデリア〉はとてつもないスピードで振り下ろされる。グウェルフェンダーの大剣が〈ローデリア〉を防ぐべく〈ローデリア〉に狙いを定め勢いよく振り上げられる。

 湾曲した大剣と〈ローデリア〉がぶつかった瞬間、湾曲した大剣が弾かれ、そのまま地面に突き刺さった。


「残念だったな!〈アンガード・ベリアル〉はガードやカウンターを無理やり剥せるんだ。カウンターを選んだお前の運の尽きだ!」


 地面から大剣を引き抜こうと踏ん張るグウェルフェンダーにアソビトは無情にも〈ローデリア〉を振り下ろした。


「新たなスキルだ、食らっとけ!〈確実な(サルベージュ・)る断罪(ログウェン)〉!」


 振り下ろされた〈ローデリア〉はグウェルフェンダーの首を一切の引っかかりなく斬り落とす。

 グウェルフェンダーは次第にポリゴン化し、霧散して消えていく。地面に突き刺さった大剣を残して。


「やっぱりドロップしたな!」


 地面に突き刺さる湾曲した大剣に触れるアソビト。そのまま地面から引き抜き、持ち上げる。

 その時、武器詳細ウィンドウが表示され、武器の詳細が表示される。


黒淵こくえん赤紫狼剣しゃくしろうけん 武器種:湾曲大剣

WPNLv(ウェポンレベル).12

必要必須ステータス

STM(スタミナ):40 STR(筋力):80 HIT/DEX(命中/器用):45 AGI(スピード):35


 装備するにはステータス数値を表示されているもの以上にする必要がある。

 アソビトのステータスを参照すると、AGI以外の数値は条件達成しているようだ。


「スピードが足りてないのか。でも振り分けまだ1つもしてないし、ステータス上げちゃお」


 アソビトはステータスを振り分け、AGIの数値を35にした。7ステータス値を振り分け、残り振り分けステータス値は3になってしまった。


「この3はまた後でにするか。それよりも早速装備して使ってみるか」


 装備武器を〈ローデリア〉から〈黒淵の赤紫狼剣〉に変え、〈ローデリア〉が手元から消える。

 アソビトは〈黒淵の赤紫狼剣〉を肩に乗せる。


「いいねぇ、〈ローデリア〉よりも機動力ありそうだ。実際スピードステータス上げられたし」


 その時、アソビトの目の前に1メートルほどある蜥蜴トカゲが3匹ほど出てくる。


スレクティック

Level:5


 舌をピロピロと出しながらゆっくりとアソビトの元へと近づいてくる。

 アソビトは笑みを浮かべ、〈黒淵の赤紫狼剣〉を構えた。


「早速試し斬りの時間か?やってやるよ」


 アソビトは湾曲大剣を振りかざした。

 そして時は流れ、気づけば空の色は赤くなり、陽が沈み出していた。

 アソビトは試し斬りを何度も行い、現在のレベルは13。レモンやゾルちゃんもエネミーを倒していることを考えると少しレベルの上がりが少なく感じるが、経験値獲得可能量がパートナーNPCと共有のため、獲得できる経験値量が減るのは妥当な調整だろう。

 そろそろ集合した方がいいだろうと思い、アソビトはマップを開く。


「ピンの位置は……結構離れたな。戻るか」


 アソビトはマップを閉じ、湾曲大剣を収納する。それからピンの位置まで歩みを進める。

 途中エネミーと戦闘をするプレイヤーなどに遭遇したが、そのまま無視してピンの元へと向かった。

 10分ほど歩き、ピンが目視で確認できるところまで距離が縮まる。

 そしてピンの位置にはもう既にレモンとゾルちゃんが集合していた。


 ──お、早いな


 そう思いつつも、アソビトは急ぐ素振りもなくマイペースに歩いていく。

 ピンの元で待機するレモンとゾルちゃん。アソビトがこちらへと歩いてきているのを確認し、ゾルちゃんは尻尾を振り、レモンはお辞儀をする。

 時期にピンの元まで辿たどり着き、アソビトはレモンとゾルちゃんに言葉をかけた。


「悪い、少し遅かったか?」


 アソビトの言葉にレモンは首を横に振る。


「いえ、私は少し早めにとここで待機していました。ゾルちゃんはピンの位置からそこまで離れていませんでしたので、すぐに合流したのです」


 【ギャウン!】


 レモンの言葉にそうだと言わんばかりにゾルちゃんが鳴く。


「主様はかなり遠くまで行ってらしたのですね」

「あぁ、エネミーを倒してたらいつの間にかな」

「その顔ですと、良い事があったのですね」


 アソビトの顔を見てそう言うレモン。


「そんなわかりやすい顔してる?」

「はい」


 少し照れくさそうにアソビトは後頭部を掻き、武器を手元に出した。


「……これは、〈黒淵の赤紫狼剣〉ですか。珍しいものを入手しましたね」

「これ、レアドロップなのか?」


 アソビトの言葉にレモンは頷く。


「そもそもですが、グウェルフェンダー自体強敵です。苦戦する人はかなり多いですよ」

「え、そうなのか?確かに癖はあったけど、そこまで固くもなかったし」

「物理攻撃の耐性はあまり高くありませんが、魔法攻撃の耐性はかなり高いんです。それに、主様のジョブはスピードがあまりないので同じジョブの方々は苦戦する人が多いです。〈竜騎士ドラゴンセイバー〉などの〈相棒タッグ〉と共に戦闘する場合も、連携がしっかり取れていなければ苦戦します」

「一応強敵扱いではあるのか」

「戦闘チュートリアルでも感じたことではありますが、主様は恐らく他の人よりもフルダイブ型ゲームへの慣れが高いのだと思います」


 アソビトは少し考える。確かにフルダイブ型ゲームのほとんどをプレイしている。その他にも〈死にゲー〉とも呼ばれるゲームをやり込み続け、気づけば初見殺しにも4割の確率で回避できるようになった。

 明らかに自分が異常なのが露呈している。


「……俺が変なのか」

「はい」

「ストレートに言うのやめて?」


 ため息をつき、悲しそうな顔を浮かべるアソビト。

 だからこそ気づけなかった。背後から忍び寄る()()に。


「!?」


 【!?】


 レモンは目を見開き、アソビトを突き飛ばした。


「主さ──」


 唐突に突き飛ばされ、驚きを隠せないアソビト。転ける前に何とか体勢を立て直し、安堵のため息をついた。


「突然何すんだレ……モ……」


 突然突き飛ばしてきたレモンに文句を言おうと顔を上げた瞬間、アソビトの言葉は喉で詰まった。

 そこには肩から脚にかけて深い斬り傷が走っているレモンとレモンを庇ったであろうゾルちゃんが翼に深い斬り傷をつけ、離れた場所で倒れている。


「レモ──」


 レモンとゾルちゃんに向かって手を伸ばそうとしたアソビトだったが、背後から感じる吐き気を催すほどの寒気に息が詰まった。

 アソビトは恐怖に動かぬ体をどうにか動かし、後ろをゆっくりと振り向いた。



 [〈特異奇矯種ユニークプライマリア〉、〈傲慢ごうまん狂歪きょうわい メレデヴェレデ〉に遭逢そうほうしました]

遭遇……

これホント大丈夫かな

遭逢に言葉変えたけど変わらないような……

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