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フィーニス・ウィア ❖終焉の軌跡❖  作者: 朱華のキキョウ
1章 血肉啜る悪魔の元に
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48話 血肉啜る悪魔の元に 参

 アソビトとレモンの目の前に現れた巨大な竜、〈暴喰ぼうしょく誓言せいごん ヲクテルース〉はアソビト達を見下ろし、牙を剥き出しにする。

 アソビトとレモンは武器を手に取り、戦闘態勢に入る。

 それを確認したヲクテルースは問答無用で突進を仕掛けてくる。


「いきなりかっ!」


 アソビトとレモンは左右に躱し、突進を避ける。


 【グルァァァ!】


 ヲクテルースは回避されることが分かっていたかのように尻尾を振り、アソビトに攻撃を仕掛ける。


「主様!」


 顔を上げた瞬間にレモンの声がアソビトの耳を突き刺す。咄嗟に体を軽く後ろへと倒す。その瞬間、目の前をヲクテルースの尻尾が通り、風が髪を撫でる。


 ──あっ……ぶねぇっ……!!!


 ほんの数ミリズレていれば攻撃に被弾していたアソビトは間一髪過ぎた回避に冷や汗を流しながら立ち上がる。

 こちらへと顔を向けるヲクテルースは牙を剥き、アソビトを睨みつける。レモンには目も向けず、ただひたすらにアソビトを敵視しているようだ。


「そんなにこの右腕が好きか?どいつもこいつも執拗しつこい……」


 アソビトは大剣を構え、笑みを浮かべた。


「そこまでご執心ならくれてやるよ、てめぇのしかばねにな!」


 【グオォォォ!!!】


 ヲクテルースは咆哮を上げ、アソビトの元まで走る。それから前足を大きく振りかぶり、アソビトに振り下ろす。

 スキル〈グライド・ステップ〉で難なく回避し、ヲクテルースの後ろ足へと回り込む。すぐさま攻撃を仕掛けようとするアソビトだが、ヲクテルースの後ろ足による追撃にそれは叶わず、その場を回避せざるを得なかった。

 アソビトにしか目を向けず、攻撃を仕掛けるヲクテルースの背後、レモンが槍を構え、ふぅーと息を吐く。それから大きく息を吸い、槍を片手に持った。


「対多数の敵を相手にするならば、全ての敵に意識を向けること。主様が鍛錬をしている時、エルガ様がそう私に言っていました」


 片手に力を入れる。槍の柄に巻きついた革がギリギリと音を立て、しわを立てていく。

 レモンは目を細め、アソビトに攻撃を仕掛けるために動き回るヲクテルースの体についた切り傷に狙いを定める。


「なぜ全ての敵に意識を向けなければならないのか、今からあなたにも教えてあげますよ」


 レモンは1歩足を前に強く踏み込み、口をプクッと膨らませ、全力を込めて槍をヲクテルースの傷に投げ込んだ。


 ──〈投槍獅砕とうそうしさい〉!


 槍を手放すと同時に口に溜まった息を吐き出すレモン。槍はとてつもない勢いで空を飛び、ヲクテルースの傷を穿った。


 【ガルゥォォォォ!!!】


 傷口に槍が勢い良く突き刺さり、赤いポリゴンが弾ける。

 完全に体勢が崩れるヲクテルースの体を踏み、アソビトはヲクテルースの頭上へと跳び上がる。

 上を向き、咆哮を上げるヲクテルースにアソビトは容赦なく大剣を大きく振りかぶった。そして、その振りかぶられた大剣はヲクテルースの頭部目掛けて振り下ろされた。


「〈エンプレス・ブレイク〉!」


 大剣は弧を描き、ヲクテルースの角に激突する。バキッと鋭い音を響かせ、大剣はヲクテルースの角をへし折った。


 【グァァァァォォォ!!!】


「まだまだ行くぞ!」


 角をへし折られ、怯むヲクテルースにアソビトは追撃を仕掛けるべく、地に足をつけ、大剣を低く構えた。


「〈アップデント・ドレイデア〉!」


 地面を削りながら振り上げれた大剣はヲクテルースの前足に大きく切り傷を走らせる。

 赤いポリゴンが散り、痛々しく傷口が開くヲクテルースの前足にアソビトは容赦などするはずもなく、大剣を何度も振り回した。


 【グオォォォォォォォォ!!!】


「このまま削りきってやるよ!」


 痛みに耐えながらヲクテルースは何とかアソビトに攻撃を加えるが、アソビトはそれを意図も容易く躱し、更に前足へダメージを与える。

 レモンもヲクテルースの背後からダッシュで近寄り、傷口に突き刺さった槍の元へと飛び上がり、槍を手に取る。傷口から槍を抜き出し、地に足をつけ、背後からヲクテルースを攻撃する。

 前後から無数に攻撃を喰らい、身動きが取りにくくなったヲクテルースは牙を剥き出し、怒りのままに顔を歪ませ、息を吐いた。


 【グルゥァァァ!】


 ヲクテルースはアソビトとレモンの攻撃を一度中断させるため、前足と尻尾で2人をその場から退かせる。

 攻撃を回避するため、その場から離れざる得なかった2人は大人しく回避を行う。しかし、その回避が2人の首を絞めることになってしまう。

 2人が回避を行ったことを確認し、ヲクテルースは翼を広げ、空へと飛び上がる。

 アソビトとレモンの攻撃が届かなそうなところまで飛び上がったヲクテルースはアソビト達を見下ろす。


「逃げに徹する気か?攻撃届かないとこに逃げるとか卑怯だぞ!」


 地面で吠えるアソビト。それを見下ろしているヲクテルースは眉を顰めつつも、息を口から吐き出す。その反応にアソビトは疑問を持った。


 ──なんだ?今なんか、気まずそうにした?もしかして、こっちの言葉を理解してるのか?


 今まで戦ってきたエネミーに言葉を理解したかのような反応を示す様子は無かった。本能的に攻撃先を読んでいたエネミーは存在したものの、完全に人語を理解したエネミーは同じく人語を話すエルガ達だけだ。

 眉を顰め、顎に手を当てるアソビト。それには気を向けず、ヲクテルースは上を向く。それを合図にヲクテルースの背中に生えている棘が尻尾から順に光を放っていく。

 それを目にしたレモンは考え事にけっているアソビトを揺らした。


「主様!考え事は後にしてください!」

「な、んぅえ?なになに?」

「なになにじゃありません、攻撃が来ます!」


 レモンがそう言ってヲクテルースに指を差す。レモンが指差す先で停留するヲクテルース。太陽の光があまり届かない渓谷の地下、ヲクテルースの背の棘が全体を照らし、黒い輝石の光をかき消す。ヲクテルースの腹部が青白く輝き始め、その輝きはどんどんと首へと動いていく。

 そして遂に、その光はヲクテルースの口にまで到達する。

 明らかに攻撃の準備を進めるヲクテルースにアソビトは目を見開き、冷や汗を垂らして背に寒気を感じる。アソビトの本能が体へ、脳へ、全身へ語りかける。今から来る攻撃は確実にこちらの命を絶やしてくると。

 アソビトはレモンに顔を向け、口を開いた。


「レモン、あの攻撃を防ぐ方法持ってるか!」


 鬼気迫る顔で問いかけてくるアソビトに戸惑いながらもレモンは答えた。


「え、えっと、防御系のスキルは会得していませんが」


 その言葉にアソビトは顔を歪めた。


 ──防御系のスキルなし……ゲームを多くプレイしてきた俺の直感が告げてる。あれは回避できるような代物じゃない。防御系スキルがない場合、倒されるのは確実だ……くそ、こんなことなら〈仲癒ちゅうゆのアンプル〉を買っとくべきだった!


 思考を巡らせ、攻撃を凌ぐ方法を模索しているアソビト。方法が見つからず、頭を抱えているが、ヲクテルースはそれに気を止めず、容赦なく顔を下に向け、口を開いた。

 それを目にしたアソビトは苦虫を噛み潰す。


「レモン、どうにかしてあの攻撃を回避してくれ!1番の方法は壁をよじ登る、それだけだ!」

「なんだかよく分かりませんが、分かりました!」


 レモンは急ぎ壁の方向へと走り出す。アソビトはそれを確認し、防御系のスキルを発動した。

 ヲクテルースの開いた口から青い粒がまばゆい光を放ち、ゆっくりと地面へと降下する。

 その粒はキラキラと小さく音を放ちながら降下し、地面へと触れる。その瞬間、世界は白く包まれた。

ヲクテルースによる粒の攻撃、伝わる方には伝わると思いますがこちらの攻撃、モンハンのムフェトの〈王の雫〉からインスピレーションを受けた技となっています

パクリじゃありません、インスピレーションを受けたやつですリスペクトですパクリ言うのやめてください

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