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フィーニス・ウィア ❖終焉の軌跡❖  作者: 朱華のキキョウ
1章 血肉啜る悪魔の元に
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42話 向かいます洞窟

 陽の光が窓から差し込み、朝を告げる。いや、昼前を告げるように陽は空高く上がっていた。

 その陽に照らされる遊渡の頭にはヘッドギアが装着されており、電源がついていた。

 〈フィーニス・ウィア〉内、アソビトはレモン達と共に〈死屍累々(ししるいるい)の酸化洞〉へと向かっていた。


「簡潔にではありますが、第3の街〈メリア・トリア〉から〈死屍累々の酸化洞〉へと向かうためのルートを説明します」


 レモンは歩くアソビトの後ろをつきながら口を開く。


「あぁ、頼む」

「では、第3の街〈メリア・トリア〉の出ますと〈輝石道明きせきどうめい渓谷けいこく〉と呼ばれるエリアに出ることが出来ます。そこのエリアボスを倒すことで〈死屍累々の酸化洞〉のエリアに入ることが出来ます。入口はかなりの大穴ですので、間違えるということは無いでしょう」


 レモンの解説が終わる。それと同時にアソビト達は第3の街〈メリア・トリア〉を脱する。

 ここで皆が思ったであろうことを解説しよう。なぜアソビトが現在では向かってもモブですら倒すことが出来ないと考えていた〈死屍累々の酸化洞〉に向かったのか。

 それは鍛錬を経てあることに気づいたからだ。それは〈プレイヤーレベルに武器や防具のレベルが加算されることによってレベル差によるダメージ補正を補える〉ということ。

 プレイヤーレベルが1でもエネミーレベルより劣っていればレベル差によるダメージ補正が入り、プレイヤーが与えるダメージが減少されてしまう。

 だが、ここで重要になってくるのが武器や防具である。本来、鍛錬で戦うことになったエネミーですらアソビトには倒すことなど不可能なレベル差だった。

 それなのに鍛錬で戦うことになったエネミーをアソビトは10体目を除いて全て倒すことが出来ている。

 これはアソビトの装備している武器のレベルによる加算補正によるもの。

 武器にはそれぞれプレイヤーと同じようにレベルが設定されている。そのレベルはプレイヤーと同じようにエネミーと戦うことで上がり、50がカンストとなっている。

 武器のレベルはプレイヤーのレベルに加算される。どのように加算されるのか、アソビトは把握していないが、現在のアソビトが装備している大剣、〈黒淵こくえん赤紫狼剣しゃくしろうけん〉と〈ローデリア〉。この2つの武器のレベルはそれぞれ〈Lv(レベル)34〉と〈Lv22〉となっている。

 〈ローデリア〉よりも〈黒淵の赤紫狼剣〉の方がレベルが高い理由は〈傲慢ごうまん狂歪きょうわい メレデヴェレデ〉との戦闘で長いこと使用されたからだろう。

 この2つを同時に手に持つことは出来ないが、装備欄に装備しておくことが出来る。瞬時に装備を入れ替えられるように枠は3枠あり、武器耐久値が万が一ゼロになっても予備をすぐに取り出せるようにするための救済処置が装備欄なのだろう。

 正常なシステムなのかバグなのかは分かっていないが、装備欄に装備している武器のレベル全てがプレイヤーレベルに加算されるようで、3枠埋めるだけでもかなり補正を緩和できる。それどころかプレイヤーレベルによっては補正を貫通することができる。

 これにプレイヤー達は歓喜し、ネットは一時期お祭り騒ぎだったという。その時期、アソビトは海雫と同棲生活を送っていた。スマホはほとんど麗華とのやり取りにしか使っていなかったため、お祭り騒ぎになっていたなどと知るわけもなかった。

 この仕様 (もしかしたらバグ)によってアソビトは〈死屍累々の酸化洞〉へ行っても存分に戦うことが出来ることがわかった。そのため、アソビトは〈死屍累々の酸化洞〉へと向かっているという訳だ。

 そんなこんなでアソビト達は気がつけば〈メリア・トリア〉の前の森林を抜け、エリア〈輝石道明の渓谷〉へと足を踏み入れた。

 その瞬間、アソビトとレモンは目の前に広がる圧巻の景色に足を止め、ゾルちゃんは嬉しそうに尻尾をブンブン振っていた。


「これはまた、すげぇな……」

山紫水明さんしすいめいですね……」


 【ガルゥ!】


 左右に巨大な岩壁があり、道は狭く人が4人横並びになれる程度しかない。

 だがそんな狭い道には青や黄色と言った輝石が渓谷によって暗がりになってしまった道を美しく照らしている。更に岩壁にも輝石が埋まっており、岩壁には紫や緑といった少し濃い色の輝石が埋まっている。

 事前に〈輝石道明の渓谷〉を調べてきたアソビトはピッケルを取り出し、岩壁から飛び出た輝石を掘り出す。

 ボロボロと崩れる壁から輝石を取り出すアソビト、その目の前にウィンドウが表示される。


緑颯りょくそうの輝石〉

〈輝石の中でも一際緑色に染まった輝石。なぜ緑色に変色したのかは不明だが、その美しい色から装飾品を作る上で重宝される。頑丈さはそこまで無く、1mの高さから落とすと簡単に割れてしまう〉


「これは綺麗だな」


 輝石を持ち上げ、空に掲げてみる。より暗い渓谷の上部に輝石を向けると、輝きがより一層強く見える。

 輝石はピッケルによって採掘が可能である。色によって様々な性質があり、武器に出来るものも当然存在する。そのため、採掘を行うプレイヤーが多いのだとか。


「一応からあげからプレイヤーには見つかるなって言われてるけど、ここじゃ普通に目に触れるだろうな」

「〈メリア・トリア〉でも多少見られてはいましたよ」

「え、マジか」


 そんなことをだべりながらアソビト達は渓谷を進んでいく。そして次々に見える輝石に見蕩れていた。

 そう、それはもう背後から迫る人にすら気づかないほど。

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