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フィーニス・ウィア ❖終焉の軌跡❖  作者: 朱華のキキョウ
1章 血肉啜る悪魔の元に
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35話 大型アップデート情報、それは波乱を呼ぶかも

 突然ベッドから起き上がるアソビトを見て目をまん丸とするゾルちゃん。そして嬉しそうにを羽ばたかせ、アソビトに突撃した。


「ぐおぇっ!」


 ゾルちゃんの角が腹に激突し、声を荒らげながらベッドに倒れ込む。そしてアソビトのHP(体力)が3減る。


 【キュイキュイィ!キャウゥ!】


 アソビトの腹に頭を押し付け、嬉しそうに鳴くゾルちゃん。その角がアソビトの傷をグリグリと広げ、HPが徐々に減る。


「馬鹿馬鹿待て待て死ぬ死ぬ死ぬって!」


 アソビトはゾルちゃんを腹から離し、HPの減少を防ぎ事なきを得る。

 ふぅと一息付き、ゾルちゃんを持ち上げる。そこには嬉しそうに舌を出して息を荒らげていた。

 それを見てフッと笑い、ため息をついた。


「みんなして突撃してきやがって」


 文句を垂れるアソビトだが、どこか嬉しそうに困り顔をしている。

 そして騒がしかったのか、レモンが声を漏らしながら目を覚まし、体を起こした。


「うぅ……どうしたんですかゾルちゃん、そんなに騒がしくして」


 ムクッと体を起こし、ゾルちゃんに目をやる。だがそこには長い間見ていなかったアソビトの姿があった。とても嬉しそうに翅も尾も動かしているゾルちゃんを持ち上げているアソビトの姿が。

 それにレモンは最初疑うように目を擦り、目を細める。だが遂にはそれが偽物でないということを知り、レモンは笑みと共にため息を吐いた。


「はぁ、長い間留守にしすぎですよ、主様?」


 その言葉にアソビトは申し訳なさそうに苦笑いを浮かべ、それから口を開いた。


「悪い、現実の方がかなり忙しくて」


 レモンはため息をつきながらも嬉しそうに笑みを浮かべた。


「とにかく、戻ってこられて何よりです。エルガ様も心配されていましたから」

「そうか、それはまた後で謝りを入れておかないとかな」


 そう言ってゾルちゃんをベッドへと下ろし、アソビトが地に足をつける。

 そして立ち上がり、体を十分に伸ばしてからレモンに顔を向け、口を開いた。


「早速だけど、俺がログインしてなかった半年間でこのゲームがどれくらい変わったのか、詳細を教えてくれ」


 その言葉にレモンは椅子から立ち上がり、頷いた。


「はい、主様。まず、3ヶ月前に行われた大型アップデートについてです」


 レモンは人差し指を立て、解説を始める。それを見てアソビトは少しだが懐かしさに浸っていた。


「大型アップデートで変わった点は主に4つ。1つ目は新たなエリアと街の解放、2つ目は日本以外の国にもサービスを展開したこと、3つ目はアイテムやエネミーの修正、4つ目はその他細かな調整です」


 アソビトは顎に手を当て、レモンに向かって口を開いた。


「まずはエリアと街の解放について教えてくれ」

「はい」


 レモンは頷き、ネットウィンドウを開いてアソビトに見せる。


「では開放されたエリアから。こちらに書いてあるとおり、〈蛮晶ばんしょう天然大湖てんねんおおこ〉、〈瘴気蔓延しょうきはびこ骸塚むくろづか〉、〈辿望港瓏(てんぼうこうろう)〉の3つのエリアです。どれもアップデート前までは最果ての街だった第10の街〈デケムトゥルフ〉から向かうことが出来、この3つのエリアは全て繋がっています」


 レモンの最後の一文を聞き、アソビトは首を傾げた。


「繋がってる?隣接してるってことか?」


 レモンは頷き返し、口を開く。


「はい。と言っても、エリア同士の間には〈断崖峡穴だんがいきょうけつ〉というエリアを分断している溝が存在しています。そこには橋がかかっていてエリア同士を繋いでいるのですが、橋にはそれぞれ門番が配置されていて、倒さなければ橋を渡れない仕組みになっています」


 アソビトは傾げていた首を元に戻し、ふーんと鼻から息を出す。


 ──追加された3つのエリアは〈断崖峡穴〉という溝で分断されているものの、橋によってそれぞれのエリアは繋がっている。そしてその橋の前には門番、エネミーが配置されてると。結構追加されてるな


 考えにふけっているアソビトを目にしながらレモンは追加された街について話し始めた。


「追加されたエリアの情報は以上です。次は街についてですね。街は4つほど追加されています。それぞれ、第11の街〈ウーンデキム〉、第12の街〈ドゥオデキムス〉、第13の街〈トレデキムロア〉、第14の街〈クァットゥオルデキムクテス〉という名が付けられています。これらの街も先程の3つのエリアと繋がっています」


 追加された街も全てのエリアに繋がっているという。さすがは大型アップデートと言ったところだろうか。かなり追加要素があるようだ。


「エリアと街の追加はわかった。まだその場所には行かなそうだから、細かいことは後にしよう。2つ目の海外展開、も特にこれといってないだろうし、3つ目のアイテムとエネミーの修正について教えてくれ」


 レモンはアソビトの言葉に頷き、また口を開いた。


「まず修正されたエネミーですね。これは行動パターンなどが修正されています。特に夜間行動をメインとするエネミーは〈夜襲ハイドエンド〉による攻撃モーションの増加やダメージ量の増加など、かなり〈夜行性〉エネミーについての修正が多いようです」


 〈夜襲ハイドエンド〉の強化、実質的に〈傲慢ごうまん狂歪きょうわい メレデヴェレデ〉が強化されたということを知り、アソビトは少し嫌な顔をする。


 ──メレデヴェレデの実質的強化……あそこからまた強くなんのか?やばすぎるだろ


 ため息を吐くアソビト。そのアソビトに対し、レモンは更なる嫌な情報を突きつけた。


「アイテムの修正について、ですが、主に経験値に関わるアイテムが大幅な下方修正を受けていますね」

「……は?」


 アソビトは考えを投げ飛ばし、すぐにアイテムを確認する。そして手に取り出し、説明詳細を表示させたアイテムは、半年前にネルガから3本ほど購入した〈エクスペリエンスポイントポーション〉だ。

 そして、アソビトはアイテムの説明詳細を見て絶句した。


「……嘘だろ」


 アソビトが手に取った〈エクスペリエンスポイントポーション〉の説明詳細には〈経験値取得量を5分間の間、1.5倍にする。その代わり、HP数値が減少してしまう〉と書いてあった。

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