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フィーニス・ウィア ❖終焉の軌跡❖  作者: 朱華のキキョウ
1章 血肉啜る悪魔の元に
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34話 誘惑に負けじとダイブ

 時刻は19時、遊渡はシャワーを浴びて風呂場から出る。洗面所で体をタオルで拭き、服を着て洗面所を出る。

 そして真っ直ぐにリビングへと向かう。そこには遊渡より先にシャワーを浴び終わり、リビングで寛いでいる麗華が居た。新たな遊渡の白Tシャツを着ている。

 さすがに下着を付けているようだが、シャツの裾が動く度に見える黒の下着が逆につけてない時よりも妖艶ようえんに感じる。

 遊渡はなるべく見ないように冷蔵庫の方へと向かい、中から〈ブレッシングライフ〉を取り、プルタブを弾く。

 ゴクゴクと軽快に喉を鳴らして〈ブレッシングライフ〉を飲みながらソファに寛ぐ麗華の隣に座る。

 そして麗華の方を見ると、若干や濡れた髪が美しく揺れる。


「あ、ゆうと、おふろあがったんだ」


 まだふやふやとしている麗華に遊渡はため息をつきながら手を掴んだ。


「冬なんだから髪を乾かさないと風邪引くって言っただろ?ほら、乾かしに行くぞ」

「はーい」


 遊渡に引かれるがまま洗面所へ行き、ドライヤーで遊渡に髪を乾かしてもらう麗華。

 髪がサラサラとなびき、ふわふわとした甘い匂いが溢れる。

 髪を十分に乾かし終え、遊渡は麗華の髪を少し持ち上げて鼻に近づける。だがすぐに髪を離し、遊渡は麗華の頭を撫でた。それに麗華は首を傾げた。


「あれ、もうにおわなくていいの?」

「うん、まぁたまにはね」


 それに麗華は少し複雑そうな顔をした後、笑みを浮かべてニヤリと目を細めて横目に遊渡を見る。


「いいんだよ?もっとにおっても。まんぞくするまでずっと、いいんだよ?」

「うぐっ……」


 麗華の目と言葉に遊渡は目を瞑り、声を漏らす。それから遊渡は首を横に振り、麗華に言葉をかけた。


「姉さん、今日は散々やったんだ、さすがにやめとこう」


 麗華は不機嫌そうに頬を膨らませるが、小さく頷いた。それを確認し、ホッと一息ついてから麗華を連れてリビングに戻った。


「ゆうと、このあとどうするの?」


 麗華にそう問われ、遊渡は即答する。


「久しぶりに〈フィニア〉でもしようかなって」

「ずっとあっちにいたもんね」


 海雫と同棲している半年間、遊渡はゲームに一切触れられていなかった。からあげから情報提供はされていたものの、あまり現状を把握できていない。


 ──この半年間で〈フィニア〉はかなり変化したってあいつ言ってたっけ


 遊渡はからあげからの情報を思い出す。


 3ヶ月がち、大型アップデートをた〈フィーニス・ウィア ❖終焉の軌跡❖〉のゲーム性はかなり判明した。

 まず一つ、メインストーリーについて。ストーリーと言われるストーリーは存在しないが、現在存在する全てのエリアボスを倒すことが実質的ストーリークリアなのだとか。

 そしてその中でたまにNPCなどから引き受けることの出来る〈副属任務〉、いわゆるサブシナリオをクリアすることでエリアボスや作成できる武器や防具などの情報を増やしていく、というのが大まかなゲーム性。

 その中でも更に特別なシナリオとして存在しているのが、遊渡も引き受けたことのある〈特別任務〉というもの。

 〈特別任務〉は現時点で判明しているものが12種類。その全てが特定エリアなどからのお遣いがメインだそうだ。

 遊渡が引き受けた〈特異奇矯種ユニークプライマリア〉が関係している〈特別任務〉は未だ判明していないようだ。

 そのせいもあってか、現在プレイヤー間では〈アソビト〉というプレイヤー名が頻繁に会話で出ているらしく、情報を聞き出そうと躍起やっきになっているプレイヤーが多いのだとか。

 現在存在が確認されている〈特異奇矯種ユニークプライマリア〉は憤怒ふんぬ怠惰たいだに続き、暴喰ぼうしょく色欲しきよくの4体。遊渡が鉢合わせた傲慢ごうまんと合わせると、5体が判明している状態だ。

 しかし、誰も実際に〈特異奇矯種ユニークプライマリア〉と出会ったプレイヤーはおらず、そのどれもがNPCとの会話や書物による発見だ。

 そのせいで遊渡もといアソビトが血眼で探されているというわけだ。


 遊渡は自室へ行き、早速〈フィーニス・ウィア〉へログインをしようとした。

 だが、ヘッドギアをつける前に横を見た。

 そこには遊渡の腕に抱きついている麗華の姿があった。


「……姉さん?えっと、何をしているんでしょうか?」


 その言葉に麗華は遊渡の顔を見てニコッと笑った。


「なにって、ゆうとのうでにだきついてるんだよ?」

「いや、だよ?じゃなくて」


 また自分を離れさせようとする遊渡に麗華は不機嫌に頬を膨らませ、更に強い力で遊渡の腕を掴んだ。


「……だって、だいすきなひとのとなりにいたいんだもん……はなれたくないんだもん」


 まるで幼女のように駄々をねる麗華に遊渡は首を横に振ることができず、ため息をついて麗華の頭を撫でた。


「わかったよ、ここに居ていい」


 そう言われた麗華は嬉しそうに遊渡の腕に頬を擦り、笑みを浮かべていた。


「えへへぇ、ゆうとだいすきぃ」


 それを横目に遊渡はヘッドギアを付け、横になる。そして目を瞑り、合言葉を口にした。


「〈ダイブ〉!」


 視界は一瞬で移り変わり、〈フィーニス・ウィア〉のゲーム内へとログインする。

 目を開き、何の変哲もない天井に目を向ける。体を起こし、伸びをし、そこに目を向けた。

 そこには椅子に座り、ベッドの方に体を倒して眠っているレモンの姿と遊渡もといアソビトの顔を見て驚くゾルちゃんの姿があった。

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