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フィーニス・ウィア ❖終焉の軌跡❖  作者: 朱華のキキョウ
1章 血肉啜る悪魔の元に
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2話 戦闘チュートリアルをクリアする

シャンフロのユニークモンスターを意識して〈特異奇矯種〉を作ったんだけど同じ7体……

正直変えようと思ったんですよ、でも7つの罪を題材にしたかったから7にするしかなかった!

まだ何か言われた訳じゃないけど先に

硬梨菜さんすみません!苦し紛れの言い訳ですがリスペクトです!

 PVをあらかた閲覧し終えたアソビトとレモン、あとゾルちゃん。

 製作者のコメントもしっかりと閲覧し終え、レモンが開いていたスクリーンを閉じた。


「……情報量が多いな」

「そうですね、合計6ものPVがございましたから」


 【キュ、キュゥ……】


 情報量の多さにゾルちゃんも気が滅入っている。

 アソビトは顎に手を置きながらレモンに提案をした。


「レモン、情報を整理したい。PVの中の話以外のことも教えてくれ」


 アソビトの言葉にレモンは小さく頷き、口を開いた。


「かしこまりました、少し長くなりますが、ご了承ください」


 人差し指を立て、まずはPVの内容を整理する。


「PVの内容から整理しましょう。まずこのゲームの大まかな設定について。完全なオープンワールドゲームで、固定されたシナリオなどがあまり存在しないと言われています。敵エネミーの数もかなり多く、チュートリアル以外の進行縛りなどがなく自由度が高いです。パートナーNPCによりチュートリアルが進行でき、十数分ほどで完遂することが可能です。ジョブの数も多く、自分に合ったスタイルを選ぶことが出来ます。しかし、途中からジョブを変更することは出来ず、どうしても変更したい場合には新たなセーブデータが必要になります」

「随分と細かいところまで説明してくれたんだな、ありがとう。PVの内容はあらかた理解した。じゃあ、PV以外の情報を出してくれ」

「はい、承知しました」


 レモンは改まって説明を口にする。そして次にレモンの口から出た言葉にアソビトは眉をピクリと動かした。


「まず、大事な話としてあるのが、シナリオは存在します」

「……どういうことだ?」


 PVによる情報ではシナリオはほぼなし。あるとしてもNPCのお遣い程度だと製作者が話していた。それを真っ向から否定したレモンの言葉にアソビトはただただ疑問しか浮かばなかった。


「PVでは少し触れた程度の話でしたが、このゲームには敵エネミーの中でも得意な種族、〈特異奇矯種ユニークプライマリア〉というものが存在します。私にインプットされた〈特異奇矯種〉の数は7体。そして、ゲームがリリースされてから14時間28分51秒経過している現在時点で発見された〈特異奇矯種〉は2体。私に()()()()()()()()7()()()()()()()()()()

「……その2体の名前は?」


 アソビトは固唾を飲み込む。緊張がレモンとゾルちゃんにも伝わる。

 そんな緊張が走る中、レモンは存在が認知された〈特異奇矯種〉の名前を口にした。


「〈憤怒ふんぬ残響ざんきょう ゴルネアス〉と〈怠惰たいだ凡骨ぼんこつ フェネフュエル〉です」

「……名前からして7つの罪が題材になってるのか。そして今判明してるのは憤怒と怠惰か」


 レモンの口から発せられた〈特異奇矯種〉7体。その内の2体〈憤怒の残響 ゴルネアス〉、〈怠惰の凡骨 フェネフュエル〉という名前。

 その名前は不思議とアソビトの心を踊らせていた。

 アソビトは笑みを浮かべ、ベッドから立ち上がった。


「要は、そいつらを倒せばシナリオが進むって訳だな」

「はい、〈特異奇矯種〉を倒すことが実質的なシナリオです」


 頷き返事をするレモンに笑顔を見せ、アソビトは手を握りしめた。


「よし、そうと決まればまずはレベル上げだな!」

「承知しました。では、戦闘チュートリアルに移りましょう」


 アソビトとレモン、そしてゾルちゃんは〈ウーナ・レイデア〉を出て〈高原平野〉に向かう。

 低レベルエネミーが多く生息する、〈ウーナ・レイデア〉に1番近いエリア。

 ゲームを始めた最初のエネミーと鉢合わせする場所だ。他のゲームで言うなれば〈始まりの森〉というところだろう。

 アソビトは初期配布されている大剣、〈ローデリア〉を構える。

 アソビトのジョブは〈破剣士ブレイダー〉。初期ステータスとしては〈HP(体力):52 MP(魔力):38 STM(スタミナ):45 STR(筋力):89 DEF(防御力):61 HIT/DEX(命中/器用):46 AGI(スピード):28 RES(抵抗力):42 LUK(神秘):30〉と、かなり筋力寄りになっている。防御力は〈守護戦士ガーディアン〉の次に高く、スピードが無くても大丈夫なようなステータスをしている。


「このゲームでは回避と攻撃の両立が必須事項となっています。そのためPS(プレイヤースキル)がとても重要となります」


 そう言いながらレモンはあるエネミーを指差す。そこにはゴブリンが棍棒を持ってこちらを見ていた。


「まずはゴブリンと戦闘を行い、回避の感覚に慣れましょう。主様のジョブである〈破剣士〉はスピードが遅く、防御力が高いため、ある程度の被弾は視野に入れても問題ありません」

「初戦の相手はスライムかと思ったが、ゴブリンなんだな。よし、じゃあ戦うか」


 アソビトは大剣を肩に乗せ、ゴブリンに近づく。ゴブリンは牙を剥き出し涎を垂らしながらアソビトに威嚇する。


「行くぜチビ助!」


 【ガルァァァ!】


 〈ローデリア〉を両手で構え、走り出すアソビトに合わせてゴブリンは大きく跳躍し、飛びかかってくる。

 大きく振りかぶった棍棒を大剣でいなし、大剣の振った勢いを利用し体を回転させ、反対側から大剣を振り上げた。


「おらぁ!」


 【ギュアン!?】


 大剣の刃がゴブリンの胴体を切り付ける。大剣が切り付けた部分が赤色のポリゴンで光り、チリチリと散る。

 切り付けられたゴブリンは後方へ大きく飛ばされ、地面に激突する。


「さすがに一撃じゃ倒れないか」


 ゴブリンは棍棒を地面につき、立ち上がる。大ダメージが入ったことは確実にわかっているが、エネミーのHPバーは閲覧不可。残りHPはわからないが、瀕死ではあるだろう。


「素晴らしい一撃です、さすがは主様です。では次のステップへ行きましょう」


 そう言い、レモンは武器を構えた。


「このゲームでは〈スキル〉が重要になります。そしてジョブや武器によってスキルが異なったり、相性が変わったりします。私がゴブリンを怯ませますので、〈スキル〉を発動してください」


 この〈高原平原〉に向かっている最中、アソビトは自身のステータスなどを確認していた。そこで初期設定されている〈スキル〉も事前に確認していたのだ。

 そしてアソビトの〈破剣士〉に初期から設定されているスキルは〈剛鎧不動ごうがいふどう〉、〈エンプレス・ブレイク〉、〈アンガード・ベリアル〉の3つだ。

 その内、自己強化スキルは〈剛鎧不動〉の1つ、攻撃スキルは〈エンプレス・ブレイク〉と〈アンガード・ベリアル〉の2つ。

 アソビトは自己強化スキルを使用せず、〈エンプレス・ブレイク〉か〈アンガード・ベリアル〉の2つのどちらかを使おうと考えた。


「参ります」


 レモンが取り出した武器は長柄ながえ武器、つまり槍だ。〈へスケア〉という名がついている。

 槍を構え、近づいてくるレモンにゴブリンは警戒の色MAX。HPがごっそり削られた今、ゴブリンは攻撃性を高める他無く、明らかな凶暴さを露わにした。


 【キャグルアアア!】


 先程同様、飛びかかるゴブリン。振りかぶった棍棒は確実に相手を殺すべく脳天を狙う。

 レモンは全く物怖じする様子もなく、槍を振った。

 バキャッ!と音を立て、ゴブリンの棍棒が槍によって真っ二つにへし折れる。

 武器を失い、ただ勢いのまま落ちてくるゴブリンを透かさず石突きでアソビトの方へ殴り飛ばす。


「今です主様!」

「あぁ、分かってるよ!」


 アソビトは両手で大剣の柄を握り、こちらへ飛んでくるゴブリンに大剣を振り上げた。


「〈エンプレス・ブレイク〉!」


 大剣は美しい軌道を描き、ゴブリンの腰から肩にかけて斬りつけた。

 ゴブリンの体は大剣の斬り跡から2つに分裂し、地面に激突した。

 傷口から赤色のポリゴンを散らす。そして時期にゴブリンの体が薄白のポリゴンに発光し、完全な白のポリゴンとなって散っていった。


「よし、どんなもんよ!」


 その声と同時にアソビトの目の前にウィンドウが開いた。そこには強調された文字で〈Level Up!〉と書かれ、〈Lv1→Lv2〉と文字が跳ねている。

 文字を眺めるアソビトに武器を仕舞ったレモンが拍手をしながら近づいてくる。


「おめでとうございます。かなり動きが洗練されていますね」


 レモンの言葉と同時にウィンドウが自動的に閉じる。アソビトは自慢げに口を開いた。


「ふふん、そりゃあ何本ものゲームを遊んできたんだ。これぐらい出来なきゃな」

「素晴らしいプレイヤースキルでございます」


 レモンに褒められ、鼻高くするアソビト。

 完全に戦闘に参加していなかったゾルちゃんは戦闘の終わりを察知し、立ち上がり、レモンの元へと歩み寄った。


「では次のチュートリアルを開始しましょう」


 ゾルちゃんを撫でながらレモンがそう言う。その言葉にアソビトは右手を強く握りしめ、嬉々として宣言した。


「よし!この調子でチュートリアルをじゃんじゃんクリアするぞ!」

「はい」


 【グルゥ!】


 アソビトの突き上げられた右拳にレモンは笑みを浮かべて返事をし、ゾルちゃんは喉を鳴らして返事をした。

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