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フィーニス・ウィア ❖終焉の軌跡❖  作者: 朱華のキキョウ
1章 血肉啜る悪魔の元に
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22話 獣というより犯罪者

大変長らくお待たせしました

私、マイコプラズマと恐らくの胃腸炎で完全にダウンしておりました

今日から小説再開させていただきます

 エスマの店から退出したアソビトとレモンは完全に忘れていたゾルちゃんを探し始めた。


 ──あいつの気迫から逃れるために必死になりすぎて完全にゾルのこと忘れてた……


 アソビトは頭を掻きながらゾルちゃんを呼ぶ。その近くでレモンも散策しているが、路地裏にはいなさそうだ。

 からあげの脅威があるが、仕方なく路地裏を出て探し出すアソビトとレモン。


「何処だゾルー」

「ゾルちゃーん、どこですかー」


 手を当てて声を出すアソビトとレモンの行動はさぞ周囲から変に見えただろう。明らかに目線を感じる。

 一向に見つからないゾルちゃんにアソビトはレモンに気になったことを問いかけた。


「なぁレモン。ゾルってさ、レモンの使い魔みたいな感じだよな?」

「はい、まぁ言い方を変えれば使い魔ということになりますが」

「使い魔ってさ、主人の元に帰るとかそういう習性ないのか?」

「ありますよ?」


 アソビトの言葉にレモンはすぐに答えた。レモンの答えにアソビトは顎に手を当て、考え始めた。


 ──使い魔は主人の元へ帰ってくるゲーム内プログラムがある。じゃあエスマと会話してる時にレモンの元に帰ってきてもおかしくなかったはず……なのになんでまだ帰ってきてないんだ?それこそ誰かに捕まってでもなければ……


 その瞬間、アソビトは「あ」と声を出した。それと同時にアソビトとレモンの横で地面を勢いよく踏み締める跫音きょうおんが響く。


「はぁ……はぁ……ようやく、見つけたぜ……」


 【キャ、キャウゥ……】


 アソビトは目をひんき、ゆっくりと声がした方向へと顔を向ける。

 そこにはアソビトが思っていた通り、ゾルちゃんを抱えたからあげが立っていた。いつの間にかからあげの周りにいた取り巻きは消えていたが、からあげは全く気迫を落とさぬまま、荒らげる息を整えもせずにアソビトを睨みつける。


「ゾ、ゾル……」


 【キャウウゥゥ!】


 なんとか体を暴れさせ、からあげの腕から脱出しようと試みるが、ガッチリとホールドされ、全く身動きが取れなくなっている。

 アソビトとレモンはまるで知人が人質に取られているかのように冷や汗を流し、固唾を飲んだ。


「ゾルちゃん、そんな……」

「おいからあげ、そいつを返せ!」


 アソビトの言葉にからあげは舌をおもむろに出し、笑みを浮かべた。


「こいつを返して欲しけりゃ、オレの質問に答えることだアソビトォ……イッヒッヒッヒッヒ」

「な、なんて恐ろしい笑みを……」


 からあげの笑みにレモンはたじろぎ、汗を垂らした。


「アソビトォ、今回はオレの勝ちだなぁ、ヒヒヒヒヒ……」


 怪物のように笑みを浮かべるからあげにアソビトはため息をついたあと、笑みを浮かべた。


()()()()()()()()?まだ状況がわかってねぇみてぇだな」

「は?何言って──」


 アソビトの言葉にからあげは首を傾げるばかりだった。からあげはアソビトの言葉を理解出来ず口から疑問が飛び出した。

 それを遮るようにアソビトは口を開き、からあげの後方へ指を差した。


「あれはお前が好きな女優!」

「えっ!?」


 からあげはものすごい勢いでアソビトが指差す方向へと顔を向けた。しかし、そこに女優らしき人物の顔は見えず、こちらを不審に見ているゲームプレイヤーのみだった。

 いないじゃないかと振り返ろうとした瞬間、からあげの顔がアソビトの足に踏まれ、腕に掴んでいたゾルちゃんをスポッと取られてしまった。


「そういうところが負ける原因なんだよガハハハハ!」

「お前ふざけんなこのやろおおぉぉぉ!!!」

「逃げるぞレモン!」

「は、はいっ!」


 アソビトはゾルちゃんを抱え、全力でからあげから遠ざかる。それにレモンもついて行く。その後ろではからあげが背を地面に着け、怒りを顕にしていた。

 アソビト達はそのまま宿へと駆け入り、セーブポイントを更新する。


「ふぅ……何とか逃げ切れたな」

「そうですね……」


 【キャウ……キャウゥ……】


 全員が全員疲れを顕にし、それぞれで休憩する。それからゾルちゃんは本当に疲れたのかベッドでうつ伏せになったのち、 小さく寝息をたて始める。

 それを見てアソビトとレモンは微笑み、レモンは優しくゾルちゃんの頭を撫でた。

 ゾルちゃんは嬉しそうに笑みを浮かべながら口をもごもごさせていた。

 ゾルちゃんの頭を撫でながらレモンはアソビトに顔を向け、ある疑問を呈した。それは少し前、アソビトも抱いた考えだった。


「主様、〈暴喰ぼうしょく誓言せいごん ヲクテルース〉の討伐を受理されましたが、どうするのですか?今のレベルでは〈死屍累々(ししるいるい)の酸化洞〉のエネミーは愚か、〈輝石道明きせきどうめいの渓谷〉のエネミーすら倒せるか怪しいですよ」


 レモンの言葉は正確だった。〈輝石明道の渓谷〉はエスマが言った通り〈死屍累々の酸化洞〉へ行くためのルートと第4の街〈フェッタ・ラ・クァットゥオル〉へ通ずる三連エリアの1つ目を担うエリアだ。エネミーのレベルはそれなりに高く、〈群れ狩りの蟻(ハンティングアント)〉のLevel(レベル)25を大きく上回る。

 レベル差だけで言えばアソビトのレベルでは攻略が困難だろう。だが、アソビトにはコウお墨付きのプレイヤースキルがあった。


「大丈夫だよレモン。俺にもちゃんと考えはある」


 レベルを上げる効率が半減したアソビト。それなのに今のアソビトは少し堂々としていた。

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