婚約破棄を告げられた私ですが、そもそも貴方と婚約していないらしいので気にしません(プロトタイプ)
私、リーナ・マーク•フォン•ビリーヴは
「リーナ、君との婚約は只今を持って破棄となった!」
その一言で幸せだったはずの日常は崩壊した。
「破....棄?」
「そうだ、君との婚約はなかったことになる。今までありがとう、そしてさようなら。もう会うことはないだろう。」
こんな醜い火傷を負ったあの事件以来冷たい視線にさらされてきた私を真っ先に庇ってくれたのに....辛い時はあんなに熱心に励ましてくれたのも....全部嘘だったの?
ねぇ....答えてよ....オットー...
「単純な話だ、君があまりにも醜かったからだよ。爺!この女を連れていけ!」
はいとそばで控えていた初老の執事が私を取り押さえにかかるが私はそれを振り切り
「何故ですか?何故、婚約破棄したんですか!答えてください!オットー!」
オットーの手を掴んで、問い詰める。
「ちぃ、五月蝿いな。爺!さっさとこいつを連れて行け!目障りだ!」
連れて行こうとしたその時、パーティーに参加していた令嬢の一人が声をかけてきた。
「お待ちください。そもそも貴方たちは婚約していたのですか?」
「あぁそうだ、だが、婚約破棄を告げたからもう婚約者でもなんでも無いがな。」
「おかしいですね。私が受け取ったパーティー資料には婚約破棄どころか、婚約と書かれた文字は一欠片も書かれていなかったのですが...本当にこのパーティーは婚約披露宴だったのですかな?そこの所、詳しく教えていただきたい。」
に向かって
「おい、どう言うことだ、婚約破棄をするのに、そもそも婚約していなかったとはどう言うことだ!」
「知らないわよ!私だって婚約したと思っていたのに!婚約者に婚約破棄を告げられたと思ったら、そもそも婚約していなかったと言われるなんて....想像出来ないわよっ!」
「ちぃ!どうなってやがるんだ!この婚約は!」
苛立ちを隠せないオットーはどんどんと地団駄を踏んで怒りを晴らそうとするが、それは貴族にとってただ醜いだけである。
ましてや、オットーが今いる場所は....貴族の象徴たる宮殿、ルクスブルク城なのだから....
*ルクスブルク城、王国における最高位の披露宴会場で元は王族が住んでいた居城だった。それ故に、此処での醜態は他の会場よりも大きくそして醜く映るとか...ちなみに、この城では昔に貴族同士での婚約破棄があったとか....つまり二回目
「くそ!くそ!」
「シュバイク公、そこまでにしておけ、ただ苛立つだけだと醜いだけだぞ」
「くっ!」
「これにて、このパーティーは終幕とする。皆、お見苦しい所をお見せして誠に申し訳なかった。後で謝礼品を送るのでこの件は不問としてほしい。」
初老の男性貴族の号令によってこの史上最悪となった披露宴は解散となった
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婚約破棄を告げられたあのパーティーから数日後、ビリーヴ家当主である私の父、ビスマルク・フォン・ビリーヴに呼び出された。もしかして、婚約破棄に関して怒っているのでしょうか.....。
「アルベルト子爵家に嫁いでほしい?正気ですの?」
「.......」申し訳そうに沈黙を貫いている。どうやらなにか理由があるようだ。
「なにか理由があるようですわね。お父様」
「あぁ....わかるか...」
驚きつつもその顔は曇ったまま。
「えぇ、これでも伯爵令嬢ですから....」
「やはり、この顔ですか.....」
私の顔は二年前に起きた放火によって醜い火傷を負ってしまった。
犯人は農奴階級に落とされた元貴族だそうだ。噂では指示をしたという貴族がいるようだが....。
「....そうだ。そこ以外で嫁にもらってもらえないとほとんどの家に門前払いされてしまった。本当に済まない」
貴族に生まれたからには必ず子孫を残し、家を存続させることが求められる。
男は家の維持、女は、子を産み、育てることが義務とされる。これは人間としても義務であるが。貴族は一般人よりもそのお耳が違うのだ。
「そんな...お父様がこんなに頑張って探してくれたんだもの...謹んで受けいれますわ。」
もう両家で決まったことでしょうし、今更変えることはできないでしょう。
それに....こんな醜い私をもらってくれるからには尽くさなければなりませんから.....
「それではこれで、失礼しますわ。お父様」
「あぁ....すまないな....」
「いえ、貴族に生まれたからには仕方ないことですから....」
どうせ、こんな顔の私など、嫁にもらってくれる家が他にあるとは思えないもの。
でも....
「あの豚子爵押し付けられるなんて.....不幸だわ....」
あのぶくぶく太ったあの腹はいつ見ても、愚貴族の極みですわ。まぁ本人の前では言いませんが.....。
「令嬢、何が押し付けられたんだ?」
「それは勿論、あの豚子....って...なぁ!?貴方は!!」
そこに居たのは醜悪な豚子爵ではなく、豪華絢爛な衣装に身を包んだ大貴族、その名は。
「ヨーゼフ•フォン・バルトメロイ様!!」
バルトメロイ家、それは王国の設立にも関わったとされる、王国随一の名門貴族。
バルトメロイ家が持つ爵位は王国宰爵、当主は王国宰相に選ばれる事が、王国憲章により保障されている。
噂ではバルトメロイ家に逆らったら、どんな名家であっても一族を滅ぼされるとも言われているとか。
そしてこの方はバルトメロイ家現当主にして歴代最優とされるヨーゼフ•フォン•バルトメロイ宰爵閣下。
勿論、これらは噂に過ぎないが.....でも何故、宰爵閣下が高々この家に....
「何故、この家にいるか...そう思っているかのような顔だな」
「!?」
心が読まれたの!まさか....そんな筈は...でも歴代の宰爵は人の内面を見る目に長けていたというし.....。
視線に気づいたのか。
「よく私たちの事を知っているようだな。感心したぞ。」
腕を組み、頷きながら、私を褒めてくれるバルトメロイ宰爵閣下。
「ありがとうございます。バルトメロイ宰爵閣下」
「.....バルトメロイじゃなくて、ヨーゼフと呼んでくれ。様は要らない。」
「.....え?.....いいのですか?」
「あぁ...」
「なぜそこまで、私を厚遇してくださるのですか?」
私はそんなに美しい女性でもないのに.....。
「そうだな....一目惚れ....というやつかな....でも生まれて初めての経験だから、まだよくわからないけど...これが初恋で一目惚れなんだとは俺でもわかる。」「一目惚れ.....」こんな私でも,,,,一目惚れされる要素があったなんて....
「お気持ちは嬉しいんですが、何故醜い火傷を負ったこの私に一目惚れなされたんでしょうか。その理由をお聞かせいただけないでしょうか。」
「そうだな....強いて言うなら、それは内面だろう。」
「内面...ですか、それは性格でよろしいのでしょうか。」
「あぁ、そうだ、我がバルトメロイ家は代々、嫁を取るときは内面を重視する。次に一目惚れと言うものを重視する。これは長く夫婦を保つために一目惚れを重視している訳だ。」
なるほど、貴族たるもの離婚は許されないようなものですものね。
「ですが....私はもう...」
子爵家に嫁ぐことになるからほかの人を好きになることなんて.....。
「もう...なんだ?何か拒否する理由があるのか?」
「ふむ...つまり、もう別の家に嫁ぐことが決まっていると....しかしいいのか?あの家はもう粛清されたが。」
「ゑ?」
「知らなかったのか....まぁいい、これからもう1つ粛清する予定の家がある。リーナ嬢も来るか。貴様に縁がある家だからな,,,いや、もう縁はないとも言えるか....」
「.......」
「それで、ついてくるのか?リーナ嬢」
「えぇ、まぁはい、ついていきます。」
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シュバイク公爵領、アルハンブラ市。シュバイク公爵の屋敷にて。
「なんだ!お前たち!この屋敷がシュバイク公爵家の屋敷と知ってのことか!」
「王国近衛軍第一近衛隊のアルバーツ•フォン•ロードグントである。貴様らシュバイク公爵家の者は以下の罪状により拘束する!」
そう言うと騎士たちはシュバイク公爵家で働く分家の人たちを捕らえ始める。もちろんこんな大声で騒いでいたら例え夜遅くでも家主が起きてくるのは必然だろう。
「なんだ!何の騒ぎだ!」
「王国近衛軍である!貴様がシュバイク公爵だな。」
「読み上げろ。」
「オットー•フォン•シュバイク公爵は我が妻となる、リーナ・マーク・フォン•ビリーヴを侮辱し、剰えその身に醜い火傷を負わした。これはバルトメロイ家のみならず、王国貴族すべてに対する侮辱である。これは許されざる行いであり、罪である。故にシュバイク公爵家並びにを農奴階級に落とすものとする。以上、王国宰相ヨーゼフ•フォン・バルトメロイ。」
*農奴階級、王国における実質的な奴隷制度の事、この階級に落とされたものは末代まで強制労働を強いられることになる。
「農奴階級だと!?クソ!お前ら!俺を誰だと思っている!シュバイク公爵だぞ!そんな紙切れでこの俺を貶めることは許されないぞ!お前らこそ、農奴階級に落としてやる!覚悟するんだな!」にも関わらず、バルトメロイ家の使者に対して、不敬極まりない言動をするシュバイク公爵に呆れるどころか失望を覚えるバルトメロイ家の使者とその護衛の王国第一近衛隊の騎士たち。
「覚悟するのは御主の方だ.....シュバイク元公爵。」
「だれだ!?」
そこに居たのはバルトメロイ家当主にして王国宰相、ヨーゼフ•フォン•バルトメロイその人であった。
「ヨーゼフ...フォン•バルトメロイ...宰爵閣下....」
「馬鹿な!あの紙切れは本当にバルトメロイ家の物だというのか!?」
「そうだ。そして今、貴様は我がバルトメロイ家の条をあんな紙切れなどと罵った!これは許されざる大罪である!」
「!?あぁ....ああああ!!
「今更後悔しても遅いぞ...連れていけ、もう此奴に貴族としても、人間としても価値は無い。農奴階級に落ちるとはそういう事だ。」
連れていかれるシュバイク公爵家の人たちを尻目にヨーゼフ様は私のもとへ駆け寄ってきた。
「リーナ....よく見ておけ、これが農奴階級に落とされる者の姿だ。」
「嫌ダァ!こんな事で!あんな女を罵ったくらいで!この俺がぁ!」
全力で抵抗して農奴階級に落とされると送られる辺境の地への追放を阻止しようとするシュバイク公爵家の人たちとオットー元公爵。元貴族なら、そんな醜い抵抗をしないで潔く辺境に送られれば良いのに...農奴階級は2年に一度一人だけ市民階級に戻れる制度があるんだからね...1回で戻れるかはさておき。
「あ...ヨーゼフ様....」
「リーナ...言っただろう。ここへ来てはいけないと....」
でも貴方が一緒に行くかと言ったのでは?
「はい....でも!ここへ来なければ、逃げたも同然で、それではヨーゼフ様に申し訳ないと思ったからです。」
「そうか....それで、どうだった。此処に来て、何かが変わったか。」
大いに変わりましたね。
「はい....変わりました。」
「それはよかった。それでは帰るとしようか。リーナ。」
お付きのメイドが朝の呼びに来る。
「リーナお嬢様、お時間でございます、どうぞこちらへ。」
「えぇ、いきましょうか。」
「それでは私はこれで失礼します。行ってらしゃいませ。」
「お待たせいたしました。ヨーゼフ様。」
「いやいいよ。それじゃあ行こうか。リーナ」
そう言いヨーゼフ様が手を差し伸べる。その手を取り、ともに歩き出す。
横に寄り添い、
「はい♡。ヨーゼフ様....いや....旦那様♡」
今、私たちは幸せです。この幸せがいつまでも続きますように.....。
おわり。
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おまけ。
「ここで、ちょっといいだろうか。」
【うん】 【やだ】
【うん】を選びますか?
【はい】
「【うん】ですか....」
「やはり、【うん】を選んだ皆さんも気づいたことがあるようですね、それは何か、」
「それは....この物語の主人公の名前である。マークとビリーヴ、これをつなげて英語表記とするとどうなるだろう?答えは.....」
「偽り....である。これは偶然だろうか....もしかしたら、この騒動自体が........●●●の....」
パァン!
瞬間暗闇に鈍い音が響く.....鈍い音の後カランカランと軽い金属の落ちる音がする。
【いつから、偽りだった?】
どうも見てくださってありがとうございました。
大分切り取って貼って作った短編なので所々変なところになっている所もありますがご容赦ください