出発-1
緑広がる丘に1人残されたオルブライトは、芝生に座り大きなため息を吐いた。
「•••何だったんだ、今のは。」
変なヤツに絡まらた。
それがオルブライトの率直な感想だった。彼女とは面識があるわけでもないのに、いきなり現れては自分を連れて行けと頼み込んできた。正気の沙汰ではない。
実は知らないうちに彼女の怒りを買ってしまっていて、その復讐のために自分に詰め寄ってきたのではないだろうか。そんな考えがポツリと浮かぶ。
案外あり得るかもしれない。
オルブライトは様々な場所を旅している。その間、いろいろな事件もあった。それに彼女が関わっていたという可能性もなくはないだろう。
とりあえず、警戒しておくに越したことはない。
「じゃあなんで連れていくことにしたの?」
突然、オルブライトの目の前に猫耳の少女が現れた。オルブライトの使い魔だ。使い魔と言ってもその性質は精霊に近い。簡単に消えるし、簡単に現れる。
そしてオルブライトの血を使って霊界からこの世界に受肉させているので、オルブライト自身との繋がりが深い。だから互いにある程度の思考を読み取ることができる。
「なぜって、俺らは料理が出来ないだろ?」
「あー。そーゆーことかー。」
少女は大の字に寝転がって、気持ちよさそうに日向ぼっこを始めた。オルブライトはその頭を撫でながら思い耽る。
確かに彼女を連れていくことにした1番の理由は、料理が出来るという点を考慮してだ。
他にもいろいろあるが、やはりこれが1番大きい。
オルブライトはいつも街で買った物か、森で拾った物を食べていた。単純に、料理が出来ないからだ。
しかし、そこに彼女の力が加わればその生活ともおさらば出来る。金を使う必要も、不味い木の実を食べる必要もなくなるのだ。
懸念があるとすれば、やはり彼女の素性が知れない点だ。
まあ、その点に関しては今のところ明確な悪意を持って接されているわけでもないので、今後時間をかけて探ることにした。
「•••しばらくは一緒に旅をしてみるか。」
オルブライトも大の字に寝転がった。