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第5話 空の色


 マリと名乗った女は高身長で全身真っ赤な大人の女性だった。

 真っ赤な長髪を纏めずにながしていて、目付きが悪くかなり怖いが、そんなの気にならないくらい綺麗な顔をしている。

 体つきも鍛えているのだろう、肌がほとんど見えない真っ赤な服を着ているが引き締まった身体をしていることが分かる。

 これだけだとただの綺麗な人なのだが、マリがただ者ではないことはすぐに分かった。

 まず、マリは片手で真っ赤な大鎌を持っているがその大鎌は一振りで人体を簡単に切断できそうな程大きく、炎を纏っている。

 更にマリ自身も身体の至るところに炎を纏っていて服の裾にも炎が灯っている。

 しかし、それを気にしている様子はなく服すらも燃えていくことがなかった。

 

 「ふむ…"虚無"と"信仰"と…白髪か。」


 マリはケテル、ジャンヌ、俺の順に目線を向けながらそう言った。

 あの言葉は俺らの事か?

 だがケテルと俺は分かるがジャンヌが"信仰"とはどう言うことだろうか?

 俺が考えているとマリは納得したように頷き、


 「状況は何となく分かった、まずは虚無、お前を片付けるのが先決だな。」


 そう言いマリはケテルを睨み付けた。

 ケテルはその視線に気圧されたように後ずさったが、突然不敵な笑みを浮かべて、


 「うーん、ここは逃げるのが正解かもね。そこの二人!」


 ケテルは俺らに指を指し、


 「命拾いしたね。でも、その顔覚えたから次はないよ?」


 ケテルはそれだけ言って空へと飛び上がった。


 「簡単に逃がすと思っているのか?」


 しかしマリがそれを追ってケテル以上の速度で追いかける。

 あと少し、というところでケテルは突如振り返り笑みを浮かべて俺らにどす黒いオーラを纏った手を伸ばした。


 「全ては虚無へ」

 

 どす黒いオーラが俺らに向かって迫る。

 ダメだ!避けられない!

 俺はせめてジャンヌを守れるようにジャンヌに覆い被さるようにして目をつぶった。

 しかし、いつまで経っても何も起こらない。

 それとも痛みを感じる間もなく死んでしまって、ここは天国なのだろうか?


 「おい、いつまでそうしてるつもりだ?」


 上から不機嫌そうに声をかけられた。

 恐る恐る目を開け顔を上げるとマリが不機嫌そうな表情で見下ろしていた。

 体に纏っていた炎は消えている。


 「あれ?生きてる?」


 俺がそう言うとマリはため息をついて、


 「生きてるよ。あれくらいなら相殺出来るからな。代わりにあいつには逃げられたが…」


どうやらマリが助けてくれたらしい、だが俺らを助けたからケテルを逃がしてしまったようだ。


 「助けてくれてありがとうございます。でもすみません、俺らのせいで。」


 俺が頭を下げると、マリは不思議そうな顔をして、


 「ん?ああ、別に私はお前達のせいで逃がしたとは思っていない。逃がしたのはあくまで私のミスで私以外の誰のせいでもない。」


 マリははっきりとそう言ってのけた。

 だがそう言われてもあの状況で俺らを見捨てていたらマリは確実にケテルを捕らえていただろう。

 マリは俺の顔を見ると再びため息をついて、


 「分かった、白髪、お前は私に悪いと思っているのだろう?だったら少し私のわがままに付き合ってくれ、それで全部チャラだ。」


 正直何をさせられるかかなり怖いが、マリは俺のために言ってくれているのだ。


 「分かりました。いったい何…」


 最後まで言いきる前にマリは突然どこから出したのか分からない何かの粉を俺の髪にかけてきた。


 「げほげほ!いったい何を?」


 マリは髪に粉をかけ終わると俺に向かって、


 「よし、白髪、私が良いと言うまで目をつぶれ。」


 何かは分からないがとりあえず言うことを聞こう。

 俺が目をつぶるとマリは、


 「目をつぶったらお前の好きな色を思い浮かべろ。ただあまり変な色は思い浮かべるなよ。」


 好きな色か…色々あるが一番はやはりあれだろう。

 俺は学校が終わり、ジャンヌと一緒に家に帰る時の暗いがまだ青さを残している空の色が好きだ。

 母さんがいて、父さんがいて、ジャンヌがいて、俺もいる、そんな家に帰る時のあの空が俺は大好きなんだ。


 「思い浮かべたか?そしたら髪に魔力を流せ。」


 魔力か、俺は魔法の適正がなく魔法は一切使えないが魔力を身体の中で動かすくらいは出来る。

 俺は髪に魔力を流してみた。


 「ふむ、瞑色といったところか。かなり黒に近いが、まあいないこともないだろうし大丈夫だろう。もう目を開けても良いぞ。」


 俺が目を開けるとマリはかなり満足そうだ。


 「それにしてもうまく変えれたものだ、お前の魔力量はかなりのものだな。」


 魔力量?俺は魔法の適正が一切ないから魔力量も何もないはずだが?


 「お前も見てみろ。」


 マリはそう言うと空中に炎を出すとその炎に躊躇うことなく手を入れた。

 俺がぎょっとしているとマリは炎の中から鏡を取り出した。

 炎の中にあったのにその鏡は一切傷付いていない。

 もしかしたら先程の粉もこの炎から出したのかもしれない。

 マリは俺に鏡を向ける。

 

 「なっ!?」


 俺は鏡を見てとても驚いた。

 何故なら、鏡の中の俺の髪は白髪ではなく先程思い浮かべた空の色になっていたからだ。

 

 「先程かけた粉は変装用のマジックアイテムでな、髪にかけて魔力を流すとどんな髪色にもなれる。本来こういうアイテムは使い捨てだが城の科学者からパクっ…じゃなくて貰ったものだから一度かければずっと効果がある。」


 今パクったって言おうとしてたような…

 と言うかそんなことよりこの粉ってすごく貴重なものじゃないのか?


 「どうしてそんな貴重なものを俺に?」


 マリはそんなに貴重なのかこれ?という感じの顔をしたがすぐに顔を戻して、


 「白髪が好きじゃない、だから私のわがままで少なくとも私の前ではその髪色でいてくれ。」


 そういうことか。

 しかし、白髪は悪目立ちするから隠す方法ができたのはかなり嬉しい。

 …だがこの世には飴と鞭という言葉がある。

 今の俺は完全に飴を貰っているが、マリは鞭を俺に与えるであろう言葉を発した。


 「さて、では話をしよう。議題はそこに転がっている"信仰"…つまりお前が命を懸けて守ろうとしたそいつについてだ。」


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