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第1話 日常


 十七年後


 「…………ん!……ちゃん!」


 何か聞こえる…何だろうか?

 聞こえてくる声に俺-カシル=サルフェは目を薄く開けて辺りを見渡す。

 

 「あっ!やっと起きた。ほーらベッドから降りて。」

 「うーん、あと五分だけ」

 「だーめ、今日は町に行くんだよ?早く行かないと日が暮れるまでに帰れないよ」

 

 そういえばそうだったな、まずいすっかり忘れてた。

 俺は体を起こして軽く伸びをする。そしてベッドの横にいる3歳下の妹-ジャンヌ=サルフェに挨拶をする。


 「おはよう、ジャンヌ」

 「おはよ!お兄ちゃん。もうご飯の準備できてるよ。待ってるから早く来てね。」

  

 ジャンヌはそれだけ言い残しリビングへ走り去った。

 今日も元気な奴だ、さてと俺も準備をしよう。

 俺は洗面所で顔を洗い、歯を磨く。あとあまり意味はないが気になるため寝癖を直しておく。

 部屋に戻り服を着替え、リビングに向かう。

 ジャンヌはもう席に着いている。


 「早かったね!ほら座って座って」

 「ああ、今日は…パンとスープか」


 俺らの両親はパン屋を営んでいて朝はもう店に行っている、だが店は家のすぐ隣だから焼きたてのパンを持ってきてくれる。

 俺もジャンヌも両親のパンが大好物で毎朝楽しみにしてる。

  

 「「いただきます」」


 やっぱり今日もうまい。

 ゆっくりと味わって食べてるつもりだが気付くとなくなっていて少し悲しくなり皿を見つめてしまう。

 気を取り直して顔をあげるとジャンヌも同じ事をしていて思わず笑ってしまった。


 「!?ちょっと!笑わないでよ!」


 ジャンヌは顔を赤くしてそっぽを向く。

 我が妹ながら可愛い奴だ。

 俺はジャンヌの頭を撫で外出の準備を始める、ジャンヌも少し不服そうだが俺に続く。

 俺の髪は本来あり得ないはずの白髪だ、この髪色はこの星国、神聖星国サンクリアではかなりまずい。

 星団リオジナルの星国は自らを象徴する何かを名の前に置く必要がある、例えばサンクリアなら神聖がそれになる。

 サンクリアは宗教国家で王家というものがなく教皇が国を治めているのだ、そして星国すべてで唯一神フアを信仰している、だから神聖星国を名乗っている。

 だから本来神しか持たないはずの白髪は唯一神を信仰しているこの星国では迫害の対象になりかねない。

 俺は外に出る時は必ずフードをかぶってて髪が見えないようにしている。

 真夏の暑い時もフードをかぶる必要があるのが嫌だから八つ当たりではあるが俺の唯一神フアに対する信仰心はほとんどない。

 俺がフードをかぶるとジャンヌもフードをかぶる。

 ジャンヌの髪は薄い緑で珍しくはあるが隠す必要はない、だが俺の真似をしているうちに気に入ったらしい。

 俺はジャンヌにフードをかぶる必要がないならかぶらなくても良いと言ったこともある、だが


 「お兄ちゃんとお揃いだからこれで良いの。」


 と満面の笑みで返されたのだ、妹に甘い俺は簡単に折れてしまった。

 両親や一部からはシスコンと言われるが兄が妹に甘いのは仕方がないだろう…だから俺はシスコンではない。

 俺らは家を出て隣の店にいる両親に一声かける。

 店はまだ開店していなくて客は居ないが裏で生地を練ったりパンを焼いたりしている両親がいた。


 「ん?そろそろ行くのか?」


 父さんが声をかけてきた。


 「うん!行って来るね。」


 ジャンヌが返事をする。


 「あまり遅くなってはダメよ。カシルもしっかりジャンヌを守ってあげるのよ?」


 母さんは少し心配そうに言った。


 「もちろん守るよ、それに暗くなるまでには帰るから。」

 「そうよね、二人とも気を付けてね。」


 母さんは何度も行っているのに毎回こうやって心配してくれる、だがそれに面倒臭さはなく毎回嬉しくなる。


 「「(それ)じゃあ行ってきます(くるね)」」


 俺らは店を出て村を歩いていく。


 「おや?二人ともお出かけかい?気をつけてね。」

 「今日も二人は仲が良いな。」

 「今日もジャンヌちゃんは可愛いなー、今度告白してみようかな?」

 「止めとけ、この前ジャンヌちゃんに手を出そうとした奴がカシルにボコられたらしいぞ。」


 この村は小さいので村人全員と顔見知りなのである。

 あと最後の二人は近所の村いくつかの子供の教育をする学校の生徒でジャンヌのファンクラブの会員らしい。

 ジャンヌは頭も良く顔も良いので学校でも人気者なのだという。まあ納得だが…

 しかし俺はジャンヌに近づく奴は皆殺し、みたいなことはしていない。

 この前はあまりにしつこくて目に余ったから少しボコっ、ゴホゴホ、"お話"しただけだ。

 まあ、それでも懲りない奴は居るわけだが…


 「おや?そこに居るのはカシルじゃないか。」

 「ちっ」

 

 噂をすればだ、前からあからさまに高そうな服を着て後ろに二人も護衛を連れた小太りの同級生が歩いてくる。

 俺はこいつ等と仲良くする気はないので聞こえよがしに舌打ちをした。

 

 「おいおい村長の息子の俺に対して舌打ちはないだろう?まあ今日は聞かなかった事にしておこう。お前だって未来の兄上なんだからなあ。」


 こいつはジャンヌの婚約者を自称していてよくちょっかいをかけてくる面倒な奴だ。

 

 「そうそう、お前確かこの前の試験で筆記も剣技も首席になったらしいじゃないか、まぐれも重なるんだな、幸運なことだ、誉めてやろう。」

 「はあ…」


 筆記も剣技もまぐれで満点がとれると本気で思っているのだろうか、もしそうなら呆れてため息が出たとしても仕方がないだろう。


 「貴様!せっかく誉めて頂いたのにその態度は何だ!?この場で切り捨てても良いのだぞ!」


 何だか後ろの護衛が怒り出した…そろそろ離れた方が良いかもしれないな。


 「話は終わりか?なら急いでるから俺らは行くぞ。」


 俺らが進もうとすると護衛の一人が道を塞ぐ。


 「待て!貴様、先程の質問に答えろ!」


 …さすがに面倒だな、早くこの場を離れないと。


 「まあ落ち着け、俺はお前と仲良くしたいんだよ。みすぼらしいお前も運だけは良いんだからな、いや待てよ、すまんすまんパン屋なんて貧乏な暮らしをしているのだから運も良くなかったな。」

 

 そんなことを言って嗤うそいつを睨み付けながら俺はジャンヌの手を引いて村を後にした。

 少し歩いていくとジャンヌが声をかけてきた。


 「お兄ちゃんどうしてあいつに何もしなかったの?お兄ちゃんならどうとでも出来たのに。」


 ジャンヌはそれが疑問みたいだが俺からすると…

 

「あのままあそこに居たら俺より先にジャンヌが手を出してただろ?」 


 そう、あの時俺は前の奴等より後ろで魔力を練っていたジャンヌの方に気が気でなかったのだ。

 ジャンヌは風の魔法にとても長けていて大人でもほぼ使えないとされる上級魔法まで自在に扱える。

 更に威力も凄まじく本来切り傷しかつけれないはずの風下級魔法"ウィンドカッター"でさえ人体を容易く真っ二つに出来る。

 真昼の、しかも子どもの見てる前でそんなスプラッター見せれる訳がない。

 

 「うっ、でもなにもしないのは違うでしょ。あいつはお兄ちゃんもお母さんもお父さんも馬鹿にしたんだから。」

 

 ジャンヌの言うことはもっともだと思う、だから…


 「まあ待て、誰も何もしなかったとは言ってないぞ。」

 

 ジャンヌは良く分からないという顔をしている。

 

 「"こいつ"であの高そうなズボンを斬ってやった。尻の部分だから本人は気付かないだろうし、護衛にも気付かれなかったからな。あいつ今頃笑い者になってるだろうよ。」

 

 正直これでも全然足りないが今日はこのくらいにしてやろう。

 あと"こいつ"とは誕生日に両親から貰った木剣だ、かなり頑丈で長いこと大切にしている俺の宝物だ。

 木剣だが俺の身体能力があれば岩でも細切れに出来るから使い勝手も気にならない。

 俺の身体能力が素で普通の大人に身体強化の魔法をフルに掛けたものより遥かに高いので出来ることだが。

 さすがに俺もジャンヌも自分の異常さは自分で良く分かっている、だから俺の身体能力もジャンヌの魔法の才能も秘密にしている。

 ジャンヌは少し考えていたが


 「なら今日は許してあげる。」


 と笑って言った。

 かなり歩いたので町にももう少しで着くだろう。

 ジャンヌはいたずらっぽい笑みで俺を見ると、


 「町まで競争しよう?はいよーい、ドン!」


 ジャンヌは風魔法の応用で地面に足をつけずサーフィンでもしているように高速で滑っていく。

 何でもなく行っているがあれもかなり高等テクニックのはずだ。

 

 「おーい!人に見られるなよ!」


 俺も町へ向けて全力で走っていった。

 


 

 

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