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転生したので今度こそモテたい  作者: マグローK


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第91話 文化祭開始

 教室には時間ギリギリ間に合った。

 桜は予想通り、実行委員にも関わらずギリギリになったことで、歓太郎から小言を言われたようだが、楓は一般人で時間に間に合ったのでなんともなかった。

 道中チラッとだが、椿のクラス用のポスターにも目を通し、やはり椿の絵は素敵だと思った楓だった。

 桜をしかり終えると、教室の前に立った歓太郎が一つ咳払いをした。

「さて、準備に力を入れ、俺、いや俺達はできることはやったと言う自負がある。あとは、その準備で蓄えた力を出し切り、お客さんに思いっきり楽しんでもらうだけだ」

 歓太郎は目を閉じた。クラスがしんとした。皆が期待を込め、次の言葉を待っていた。

 歓太郎がカッと目を見開くと、

「ここはシンプルに言う。お前ら、やるぞ!」

「おー!」

 気合を入れ、楓も拳を掲げた。


 楓のクラスでは役割分担がされており、役割ごとの立ち位置が決まっている。全員が散り散りになり持ち場へと移動した。楓も役割を果たすため席についた。

 キレイに中程度の実力を出せる楓は、中級の門番として待ち構えていた。別に下級から登っていくシステムではないが、時間に余裕があればそういう遊び方もできる。

 時間が経つにつれ、教室のドアから少しずつだが人が入ってくる。

 案内係の説明を受けながら様子をうかがうようにしていた。その後、向日葵への挑戦の間に度肝を抜かれたように目を見開いき二度見してから、楓より一つ下の下級に着席したのが見えた。

 まだ時間にも人の混み具合にも余裕があるため、ステップアップしていくのだろうかと楓は考えた。その辺のお客さんの取り扱いは、歓太郎から詳しく説明を受けたスタッフ係に任せてあった。だが、人が来ないと暇である。

 目を引くだけあり、向日葵ばかりに人が流れるが、聞こえてくるのは悲鳴ばかり。そして、楓のもとにはなかなか人が来なかった。

 やはり見た目のアドバンテージは向日葵にあるんじゃないか。と心の中で楓はぼやいた。

 いかんいかんと考えを改め、意識して頬を上げた。

「お願いしまーす!」

 と意気揚々と声をかけられ、付け焼き刃で身につけた営業スマイル目の前に向けながら、

「よろしくお願いします」

 と楓は返した。だが、見知った顔にいつもの顔へと戻した。

「何しに来たのさ」

「いやぁ、なんだかんだ楓たんと真剣勝負ってしたことなかった気がして」

「そう」

 やって来たのは桜だった。

 やはり知り合いにしかかわいいと思われていないのではないかと疑いながら、楓はゲームをいくつか取り出した。

 何か特筆してうまければ違ったのかもしれないが、楓は今あるどのゲームでもクラスで真ん中ぐらいの実力だったため、基準点のように中級に置かれているのだった。

 ルールを知ってる人はここ。と掲げてあるが、楓もその通りだと思い今さら異論はなかった。

「何にするの? オーソドックスにババ抜きもあるけど」

「あたしはスピードっていうゲームが好きなのさ。外に椿たんを待たせてるから、あんまり時間もかけてられないしね」

「え、椿待たせてるの?」

「うん。向日葵たんに挑戦したらって言ったんだけど、私はいいってさ」

「なるほどね。椿らしい気もするけど、桜に巻き込まれたなら遊べばいいのに」

「ね。ってあたしに巻き込まれたって何さ」

「冗談だよ。で、ゲームはスピードと」

 楓はトランプだけ残して他のゲームを机からどけた。

 名前の通りスピードはカードを素早く出すゲーム。というのが楓の印象だった。

 家族の中では得意な方だったが、家での実力はどうあれクラスの中ではやはり実力は中級。桜の実力を直接は知らなかったが、いまいち得意そうなイメージが掴めず、楓は大丈夫かと思っていた。

 考えながらも、楓はカードを赤と黒の色ごとにわけた。

「色はどっちがいいとかある?」

 右手に黒の束、左手に赤の束を持って楓は聞いた。

「じゃあ、あたしが赤で」

 楓は左手の束を差し出し、カードを四枚手元に並べた。

「同時にスピードって言うと同時に始めて、先に手持ちのカードなくなった方が勝ち。どちらも出せなくなったら、再度スピードのかけ声でカードを出して再開。それでいいよね?」

「もちろんOKだよ」

「じゃあいくよ?」

 楓は桜に確認を取ると息を吐きだした。

 息つく暇もないほどのスピードでカードを出していく、直球的なネーミングのゲーム。

 肩を落とし、体から無駄な力を抜く。ゲームをしてもらうという出し物だが、相手が誰であろうと楓に手を抜くつもりはさらさらない。

 それにこれは初戦である。負ければずるずるいくかもしれない。

「スピード!」

 二人同時のかけ声でゲームは始まった。

 お互いが順番になるカードを見つけ、すぐさまカードを重ねていく。

 しばらく手が止まることはなく、無我夢中で進めていく。中級の実力に定められているが、楓は気にせずに全力で取り組んだ。

 五、六。桜の七を見て八、九。そして、ギリギリ桜より早く十を重ね、お互い出せる札がなくなった。

「やるね楓たん。これで中級の実力なのね。真ん中でこれってことは、椿たんが担当する予定の一つ上の上級はかなり強いのかな?」

「知らないの? まあ、僕も詳しくは知らないけど、向日葵が言うには、僕だと多分時々勝てればいい方じゃないかってことだったよ?」

「今も連勝記録を伸ばしてる向日葵たんが言うんだから、きっとそうなんだろうね」

「そんなことないよっていう言葉を少しだけ期待してたけど、向日葵の実力は事実だから悔しくても何も言えない」

 苦笑いを浮かべつつ、楓はカードを四枚並べた。

 ほんの少しの雑談だったが、桜としては楓の勢いを止める意図があったのかもしれない。それなら、なかなか侮れない相手だ。だが、この程度のことで止まる楓ではなかった。

「いくよ?」

「いいよ」

「スピード!」

 ラストスパートとばかりに、出せるカードを見つけ次第、場に出していく。

 手に持つカードの束が目に見えて薄くなり、力を入れれば折ってしまいそうになっている。

 ぱっぱと並べ、ほとんど互角のまま勝負は続いた。静かにだが、確かに終わりが近づいている。

 楓の手札が二、三、四。桜の手札が十、九、八。場にはKとQが出されていた。

「どうやら先にカードを出した方が勝ちみたいだね」

「まあこういうこともあるか」

「トントン行こう」

「そうだね。じゃあ、いくよ? スピード!」

 かけ声とともに楓はできる限り早くカードを出した。

 両者ともにたった三枚。楓と桜はほぼ同時に出し終えた。

「あたしの勝ち!」

 ずいっと身を乗り出して桜が言った。

「ね。いいでしょ? あたしの勝ちでいいでしょ?」

 甘えた声まで出してねだるように続けた。

 楓は身を引いて頭をかいた。

「じゃあ、桜の勝ちってことで」

「やったー景品景品」

「勝ちは勝ちだからね。はい。一応景品ってことで、何がいい?」

 楓はトランプを片してから、景品の入ったカゴを机の上に置いた。

「あたしは楓たんがいい」

「はいはい。そういうのないから」

「え? あたしの仕込んでおいた楓たん人形は? もう取られちゃったの?」

「は? そんなの入れてたの?」

 楓は焦って景品の中身を探った。クラスメイト達が持ち寄ったガラクタ、もといお宝の中に人形が見つかった。桜の言ったものだけでなく、いくつかあったが、その中に一つだけ手作り感満載の人形があった。

 手に取って確認すると、似ていると言われれば似ているような気もしたが、よくわからないというのが楓の正直な感想だった。

「もしかしてこれ?」

「そうそれ!」

「桜って意外と器用だったんだね」

「違うよ。楓たんが向日葵たんに釘刺したのを見て、器用なんだろうなって思って頼んでおいたんだよ」

「えー何それ。いつの間にそんなことしてたの?」

「内緒」

 悪戯っぽい笑みを浮かべる桜に楓は渋々楓人形を手渡した。

 楓から人形を受け取ると、桜は意気揚々とそれを掲げ、絶賛対戦中の向日葵に向けて振った。

 向日葵がハッとしたように目を開けたのを楓も見た。

 何やら手元をぱっぱと動かし、早送りにでもしたようにことが進み、目の前の対戦相手がうなだれ、すぐに連勝数が一つプラスされた。

 そうすると、役割も投げ出して、向日葵は楓達がいるところまで歩いてきた。

「それ私が取ろうと思ってたのに」

 少し息を切らしながら向日葵が言った。

「え? 向日葵がわざわざ作っておいて?」

「その方がいいじゃん。囚われの楓を取り戻すっていう。あれ? そんなこと最近あったような」

「なになに? なんのこと?」

「それはいいから。はい。終わったんだから桜は帰った帰った。椿待たせてるんでしょ? それに向日葵も持ち場に戻る。次の人待ってるよ」

「はーい」

 二人のやる気ない返事を聞いて、楓は景品をどかした。

 早期決着したのかどうかは、結局集中していてわからなかったが、ゲーム分の時間はしっかり経過している。

 その間、廊下に立たされていたかと思うと、楓は椿が不憫に思えた。そのため、しっかり廊下に出て行く桜の背中を見送ってから、楓は前を向いた。

「よければこちらも空いてますよー」

 前世ならばうまいこと立ち回れなかっただろうということをやっている自分に、営業スマイルとは別の意味で笑いながら、楓は入り口に向けて手を挙げた。

 交代になるまでこれを繰り返すのだ。一つ一つを楽しまなければ損である。

 おどおどした様子で人混みから抜けて出てきたのは一人の少女。楓の方へ向かってきたのは少女ともう一人の女性だけで、みな向日葵に挑戦したいのか向日葵の方ばかりに行列ができていた。

 これならそこまで人と接することなく終われるだろうか。

「よろしくお願いします」

 邪なことを考えながら、楓は努めて笑顔を作り頭を下げた。

「あの。私だよ。お姉ちゃん」

 楓はすぐさま顔を上げた。

 そして顔から順に、目に見える範囲で上から下まで往復するように見た。

 目の前に座り、困ったように笑顔を作りながら小さく手を振っているのは楓の妹の紅葉だった。

「え? 紅葉? ど、どうして? どうしたの?」

 楓は予想外の来客に目を白黒させ、スッと言葉が出せなくなっていた。

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