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転生したので今度こそモテたい  作者: マグローK


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第59話 肝試し 向日葵ペアの場合

 今は他のペアが終わるのを待つ時間。楓は幽霊に興味を持った向日葵をじっとりと見つめていた。

 そもそも神様が幽霊に興味など持つのだろうか。

 楓にとっては似たような存在な気がしてならなかった。

 見間違えということを考え直し、もしかしたら、一緒になれなかった腹いせに幽霊らしきものを見せたのではないかと疑っていた。

 楓を直接操作はできずとも、マジックショーの時のトランプのように、作り出したものを見せることはできるはずだった。

「向日葵が幽霊を出したんじゃないの?」

 楓は向日葵に聞いた。

「私が? 違うよ。やってないよ」

 向日葵は否定した。

「本当に? でも出来るでしょ?」

「確かに出来るけど、やるとなると集中力が必要だし、椿ちゃんと話してたから出来なかったよ」

「じゃあ向日葵は見たの? 幽霊」

「楓ちゃんがみたのがどれかわからないけど、思い出してみるからそれっぽいのがあったら言って?」

「わかった」

 楓は向日葵が話し出す前に、肝試しの概要を思い出した。

 状況は同じ森。

 ルートが複数あるわけではなく、一本道。

 横道にそれないように獣道と、目印となる標識が定期的に建てられている。

 これによって道に迷うことなく完走できる。

 そのうえ、たとえ立ち止まってしまっても、後続が追いつけばゴールまで辿り着けるようになっていた。

 一応は追いつくことがないように距離を保って出発しているが、それでもゆっくりだと追いついてしまうこともあるらしかった。

 実際、行く前に大丈夫と言っていた歓太郎は、泣きながら二人のクラスメイトの背中を掴み、引きずられ出てきたばかりだった。

 ペアに置いていかれたのか理由は不明だが、楓も驚きのホラーの耐性のなさだった。

 こんなところかと楓が頷くと、向日葵は話し出した。

 向日葵達は楓達とほぼ同条件でスタートした。

 四番手。

 楓達より早くスタートした。

「実は、椿ちゃんが楓ちゃんと番号交換してくれるって言ってたんだけど、桜ちゃんがなかなか楓ちゃんから離れなくて様子を見てたら私達の番が来ちゃったんだよね」

 向日葵は残念そうに言った。

「そうだったんだ」

 楓も眉尻を下げながら言った。

「それでもしょげかえってるわけにはいかないから、良好な視界を頼りに椿ちゃんを先導してあげたの」

「暗かったし、そんなに視界は良好じゃなかったよ?」

「私は夜目がきくし、どこに誰がいるかもわかるから。ね、良好でしょ?」

 楓はハッとし、向日葵はそんな様子に首をかしげた。

「だから、お化け屋敷の時も、にわにわさんのお面をつけてても大丈夫だったんだね」

「まあね。私の場合、たとえ視界が覆われてても特に影響はないからね。なんならずっとつけてようか?」

「やめて!」

 楓の言葉で、近くにいた桜と椿が振り返った。

「どうかしたの?」

 と椿は言った。

「ううん。なんでもないよ」

 と楓は否定した。

「あれでしょ? 外でエッチなことしようとしたんでしょ?」

 とニヤニヤしながら桜は言った。

「そこまでワイルドじゃないよ」

「じゃあ何? 何しようとしてたの?」

「本当になんでもないよ」

 と向日葵が言っても桜は少しの間納得いかないようにしていたが、椿との会話に戻った。

「あんまり大きな声出さないでよ」

「ごめん。でも、本当に苦手だからやめてね」

「わかったわかった」

 向日葵は一つ咳払いをして話に戻った。

「それで、椿ちゃんと歩いてて、世間話でもしてたの」


 向日葵は椿と歩いていた。

 足が取られそうな地面でも関係なく進んでいける向日葵だったが、椿はそうではない。

 サポートとして、足元をわからないように舗装することもできたが、急に歩きやすくなれば、それはそれで違和感を与えてしまう。

 そのため、向日葵は椿のペースに合わせて歩くことを選んだ。

「命だけは!」

 と言って一人目のお化け役が現れた。

 こめかみを矢で貫かれ、髪はおでこから頭頂部までがはげていて、身体中にも矢が刺さった鎧武者。

 手に持っている剣は刃こぼれがひどかった。

 見た目から、落武者の霊という設定であることが向日葵でもわかった。

 見た目の雰囲気で怯えた様子はなかったが、椿は咄嗟に向日葵の背後に隠れた。

「あれ? 椿ちゃんこういうの苦手?」

「ううん。違うの。私、虫がダメなの」

「虫?」

 よく見ると、隠れていたせいなのか落武者役の頭上には、ハエがたかっていた。

 向日葵と歩いている間も、羽音がするたびに椿はビクビクしていた。

 なるほどと思い、椿を落武者役から遠ざけながら通り過ぎると、向日葵は見えない蚊帳を作り出した。

 これで虫だけは入ってこない。

「もう大丈夫だよ」

「ありがとう」

「虫苦手なんだね」

「ええ、向日葵さんは大丈夫なの?」

「私は大丈夫だよ」

「頼りにしてるわ」

 そうして向日葵は一人目の説明を終えた。


「落武者? そんなの見なかったけどなぁ」

 楓の言葉に、向日葵はもう一度思い返すように空を見上げたが、再び頷いた。

「でも、そんな見た目だったよ。余裕の出てきた椿ちゃんが言うには、よく出来たメイクだったって」

「うーん」

 楓はアゴに手を当てたが、一切見覚えがなかった。

 見たのは一体のみ。

「二人目は?」

 楓の言葉に向日葵は続きを話し出した。


 そのまま、向日葵は椿とともに歩いていた。

 椿も道に慣れたのか、だんだんといつもと同じ歩調になり、向日葵も歩きやすくなっていた。

 視界に見える影によると、そろそろ二人目が接近してくることが向日葵にはわかっていた。

 虫が苦手とわかった以上、草むらに隠れて楓を待つと言いだすことはできなかった。

 蚊帳を作ったとはいえ、椿には見えず、説明もできない。そのため、向日葵はずんずん進んでいた。

 二人目も隠れて待っているのかと思ったが、向こうが接近してくると言うより、向日葵が接近しているというようだった。

 それは動かず、宙に浮いていた。

「助けて、助けて」

 とささやきながら、文字通り宙に浮いていた。

 暗さもあり、普通の人ならば気づかなかっただろうが、向日葵の目にはお見通しだった。

 目の前の人物は透明な紐で吊られ、足を曲げ、白装束で幽霊を装っていた。

「これは大丈夫なの?」

「大丈夫よ」

「やっぱり虫がダメなんだね」

「そうね。ホラーは怖いけど、反応に出るほどじゃないの。怯えたようがよかった? かわいく怯える練習は向日葵さんのお姉さん達としたのだけど」

「いいと思うよ。私も怯えてないしね」

 そうして、笑いながら二人は宙吊りの人物を通り過ぎた。


「それ、追ってきた?」

 楓は向日葵に聞いた。

「追ってこないよ? だって宙吊りだよ? 紐で固定されてるんだよ? 私だったらそれでも移動できるけど、普通の人には無理だよ」

「じゃあ、茜ちゃんとか?」

「お姉ちゃんは来てないし、どのお化けも人間だったよ。それに、お姉ちゃんだったら、きっと椿ちゃんも気づいたと思うよ」

「そっか。見た目は一番似てると思ったんだけどな。あれは? 光ってた?」

「ううん。一応、手持ちの明かりで見える程度で、明かりは設置されてなかったよ」

「ってことは、その人自体も光ってないか」

「人間は光らないでしょ?」

「うーん」

 楓は腕を組み、再度向日葵の話に戻った。


 そこからも特に、向日葵にとって事件はなかった。

 二度あることは三度あるということか、お化け役は全部で三人。

 最後の一人も隠れて驚かすのではなく、道に出ているタイプらしいことが遠目からもわかった。

 能力を制限して楽しもうとしたが、安全を目指すタイプの能力はオートで発動するもので、向日葵の意思で制御できないため、仕方なく受け入れていた。

 パートナーが楓なら、お化けを引き立てるのだが、椿だとそこまでしたらかわいそうと思ってしまい向日葵にはできなかった。

「YO」

 あくまでお化け役のはずだが、現れたのはマイクを持った普通の人。

 Tシャツにジーパンの男性。

 手に持つマイクも何にも繋がれておらず、ただ持っているだけだった。

「よお?」

「NONO! YO!」

 日本人ではないのかと思い、向日葵は椿を引き連れ、その場を去ろうとした。

 テンションがナンパの時の男達と似ていて不快だったからだ。

 だが、男は道の真ん中に仁王立ちで立ちふさがった。

「ノリ悪いな。後続はまだまだ来ないぞ。ここでは一応俺とラップ勝負をすることになってるんだ」

 男が言った。

「ラップ? これって肝試しじゃないんですか?」

 椿が聞いた。

「そうだ。俺はラッパーになれなかった男の幽霊。だから、肝試しに来た人々がラップ勝負をしてくれると、道をあけるのさ」

「ラップって何?」

 今度は向日葵が聞いた。

「ラップを知らない? OK! ラップは簡単に言うと韻を踏んで話すのさ」

「韻って?」

「同じ母音で終わる言葉ってことじゃなかった? 漢文とかの」

 今度は椿が答えた。

 向日葵は目を閉じて頷いた。

 色々と人間の文化に触れてきたつもりになっていたが、まだまだ知らないことは多いと気づかされた。

「つまり、そこのけそこのけってこと?」

「一応そうじゃないかしら?」

「まあそんなところでいいさ」

「でも、勝負にならなくないですか?」

「大丈夫だ。みんな最初は初心者だからな。作文みたいに話してくれれば通っていい」

 ラップ勝負をしたらどくという話はどこへ行ったのだろうと思いながら、向日葵は頷いた。

「椿ちゃんはラップ得意?」

「聞いたことがあるだけで得意じゃないわ」

「私は初めて聞いたから、任せるね」

「私がやるの?」

「お願い」

 きゃるーんとして向日葵は頼み込んだ。

 見た目のせいか、初めて聞いたと言ったからか椿は頷いた。

「お題は肝試しだ」

「お題があるんですか?」

「ここは俺の場。貴様はイレギュラー。通りたければ。ルールを守りな」

「あで終わるのね」

「しりとりじゃねぇ。何故わからねぇ。これはそういうルールじゃねぇ。前の韻には縛られねぇ。テメェのビートをその胸に刻め」

「そうなのね?」

 椿は咳払いをした。

「虫の多い森の中。お化けよりも虫こわか。拍子抜けもいいところでは? もっと雰囲気作ってみせな」

「HEY! 次はそっちの嬢ちゃん」

「結局私もやるの?」

 向日葵は息を吸った。

「くじ引き、意図するもの引けない。いつもの運気、発動しない。それなら大事な友とともに、思い出づくり、君とともに」

「どうぞ」

 向日葵が言い終えると、男が道を開けた。

「やったー」

「なんだか恥をかいた気がするわ。それに、これでよかったのかしら」

「いいんだよ。通してくれたんだし」

 そうして向日葵達は森を抜けた。


 楓は歩いてきた通りを思い返したが、結局どのもいなかったことを思い返すだけだった。

「本当に一本道なのかな?」

「一本道みたいだよ?」

「でも、最後のラップの人とか絶対いなかったよ」

「道の真ん中にいたから遭遇すればラップバトルだったと思うけど、どうしてだろう」

 向日葵は首をかしげた。

 楓もアゴに手を当て、再び考えてみたがラップの男など記憶にはなかった。

「それに、話しながらだと幽霊動かせなかったでしょ?」

「確かに」

 向日葵の肩にはミニ幽霊が乗っていた。

 話している間は足をぶらぶらさせることもなかった。

 今では話し終えたからか、ニコニコと楓を見つめ、足をぶらぶらさせていた。

 もう一度森を見てみたが、もう影は見えなかった。

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