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転生したので今度こそモテたい  作者: マグローK


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第48話 服選んでもらい

 楓はサンドイッチで昼食を済ませた。感想は美味しいの一言だった。炭酸やらホラーやらの嫌なことも忘れ、美味を堪能した。

 レタスやきゅうりのシャキッとした歯ごたえ。そして、マヨネーズの和えられた玉子に、柔らかいパン。

 ちょうど空いていた分のお腹を埋め、楓は満足からくる高揚感から、顔をほころばせていた。

 やはり、食事はいいなと思ったのだった。

 茜、桜、椿の三人による、今日のこれまでの感想やらなにやらの会話には全く加わらなかった。

 それらをシャットアウトして浸ってしまうほどの美味しさだった。

 決して、味を理由に感想から漏れ出す恐怖を避けていたわけではない、と楓は自分に言い聞かせていた。

 そして、一行は再び茜に続いて、ショッピングモールの中を歩いていた。

 すっかりイベントを経て仲良くなった茜と桜は、横に並んで歩いていた。

 このままの調子なら、最終的には茜の体力も削ってくれるだろうと楓は考えた。

 時々椿と話しながら二人の後ろを歩いていると、いつの間にか、そこそこ見知ったお店の近くまで来ていることに気づいた。楓が辺りを見回していると、茜は立ち止まった。

「ここよ」

 と茜が手で示したのは、楓が向日葵と来た洋服店のうちの一つだった。

 しかし、楓には茜の意図がわからなかった。

 かわいく怯える何かと、関係があるようには思えなかった。

「何するんですか?」

 楓の特訓の全容を引き出すための言葉に、茜は不敵に笑った。

 ご飯の間も内容を明かさず、やけにもったいぶった雰囲気なのが、楓には鼻についた。

 楓も女性客の多い店内に慣れてはきたが、長居したいかと聞かれるとそれは別だった。

 そのため、早くしてほしいという思いが、湧き出しそうになった。

「今日の最後の特訓は、楓ちゃんに似合う服を選ぶことよ」

 堂々と言う茜を前に、楓は口をポカンと開けた。

 おや、怯える特訓ではと思ったが、すぐにどういうことなのか気づいた。

 なるほど、つまるところ、ファッションもまた女子力なのだろうと楓は理解した。

「わかりました。二人の意見を参考に服を選べばいいんですね?」

「私はそうは言ってないわよ?」

「え?」

「楓ちゃん以外の私たち三人が、楓ちゃんの着る服を見繕って、それぞれに評価する。その結果、一番評価の高い服を着て帰ってもらうという話よ」

「え?」

 楓はなお理解に時間を要した。

 だが、説明は端的だった。

 つまりは、楓は服を渡されたら、着ればいい。そういう簡単なお仕事だ。これまでの比じゃない。

 しかし、問題はそれが楓の自由意志に基づいて選べるわけではないということだ。

 茜と桜と椿が選ぶ。

 となると、見た目が女子の楓のために、女子用の服を選ぶだろう。そのためのお店選びだろう。

 もちろん、楓は女子の服装にも慣れてきていた。というより、持ち合わせがそれしかないため、慣れるのは時間の問題だった。

 最初は一応、男としての精神的な抵抗を感じつつも、肉体の自動操縦で着ていたが、今では自らの意思で着ることもできるようになってきていた。

 そのため、問題はないだろうというのが、楓の今のところの予想だった。

 もしかしたら、希望的観測かとも思ったが、楓はそんな思考を追い出すことができた。

 自分のことよりも、選ぶ方の心配が大きかったからだ。

「ルールはわかったかな? お二人さん」

「はい。楓たんに着せたい服を選んできます!」

 意気込むように両手を握って見せると、桜は早速店内へ入った。

 楓は桜を止めようと手を伸ばしたが、気づく様子もなく、もう止められそうもなかった。

「椿さんは?」

「やるだけやってみます」

 椿も続いて店内へ。

「あの、大丈夫ですよね?」

「もちろん大丈夫よ。不安なら逐次注意するといいんじゃない? じゃ、私も行くね」

「あ、ちょっと……」

 そして茜までもが店内へと入って行き、楓だけがお店の外で一人取り残されてしまった。

 なんだか喧嘩別れした後のようなもの寂しさを感じ、周りの視線も同情的な気がして、楓もとぼとぼと中に入ることにした。

 今日は向日葵もおらず、尾行の予定があるため、いざ走る時も大丈夫なように、パンツスタイルで来ていた。

 だが、茜の言葉を聞く限りだと、一番になった服を着て帰ろうとのことだった。そこまでは問題ない。

 しかし、楓の予想では、三人の中でパンツスタイルを選びそうな人が居なかった。

 別に解散してから着替えればいいのだが、それで尾行に追いつけるかはわからない。

 まさか、感づかれているのか、と考えたが、今日の楓は一度もバレるようなことをした記憶がなかった。ならば、わかるわけはないだろう。

 そのため、大丈夫だろうと気を取り直し、楓は思考を特訓へと戻した。

 今回の特訓では三人が服を選んでくれる。コーディネートのストックを得られることは、ファッションセンスがない、と向日葵に言われた楓としても嬉しかった。

 辺りを見回しながら店内をウロウロしていると、楓の予想では優勝候補筆頭の椿を見つけた。

「椿はどういうのにしようと思ってるの?」

「え!?」

 突然出現した楓に驚いたように椿は跳ね上がった。

 珍しい反応に楓はお桃わず微笑んだ。

「楓さん?」

「そうだよ?」

 椿は楓だと確認すると、何故か目を伏せ、言葉に迷うような素振りを見せた。

 もしかしたら椿も服選びが苦手かもしれないと楓は考えた。

 好きで選んでいるのか、それとも他の色味を避けているのかはわからなかったが、これまで、モノクロと紺くらいの服しか着ているところを見たことがなかった。

 失礼なことを自覚しながら、同類かと期待を寄せ始めていた。

「楓さんに似合うものにしようと」

「僕に似合うのって?」

 再び、椿は目を伏せたものの、今度は早かった。

「スカートかしら」

 向日葵もそんなこと言っていたなと思い出した。

「そんなに似合ってる?」

「私はかわいいと思うわよ」

「が、頑張ってね」

 楓はにやつきかけた顔を隠して、そそくさとその場を後にした。

 そして、椿から十分離れてから深呼吸を繰り返した。

 困ったような表情を浮かべていたが、危うくだらしない表情を浮かべるところだったと思い、楓はホッと胸を撫で下ろした。

 次は、信頼の置けない人物の一人。桜のもとへ。

「桜はどういうのにしようと思ってるの?」

「あたし? あたしはやっぱりこういうのかな」

 そう言って桜が見せつけてきたのは、へそが出そうな丈のシャツ。

「いや、僕そんなの着たことない気がするんだけど?」

「だからいいんじゃん。恥じらいながらも着ている楓たん……」

 言いながらすでに自分の世界に入ってしまっているらしく、桜は頬に手を当て、くねくねと動き出した。

 楓の考える桜の服選びは、他人に着てもらうとなると基準が変わるのだろうということだった。

 これまでの服装から、他人の露出は多く、自分は動きやすく。そんな印象を受けていた。

 楓はここに居ると、もう試着させられそうに感じたため、滞在時間は少なかったが、桜から離れた。

 その後、しばらく店内をウロウロと歩き、やっとのことで見つけた三人目。

 今までロクな服装を選んでこなかったイメージの茜。

 楓としては、またコスプレ衣装でもどこかから持ち寄っているのではないかと危惧したが、しっかりと店内で選んでいる様子だった。

「茜ちゃんはどういうのを選んでるんですか?」

「私はやっぱりバニーガールかなとか思ったんだけど、ないから迷ってるのよね」

「どうしてそういう格好になるんですか」

「他人が着てくれるとなると、自分が着られないものを選びたくなっちゃうのよね」

 楽しそうに笑う茜に、同じように笑顔で返すと、楓はこれ以上刺激してはいけないと考え、そのまますすすと逃げた。

 やはり、自分が着ないとなるとハメが外れるらしい。

 自分は大丈夫だろうと思い、茜から十分離れた後で、楓も個人的に店内を見て回ったが、めぼしいものは見つからなかった。

 元々がケチ臭く、今日一日の出費だけでかなり精神的にダメージを受けていた楓にとって、これ以上の出費をさせるほどの物はなかった。

 以前よりもファッションに理解を示し、新しい服を買う喜びもわかるようになってきたものの、あるもので済ませる。まだやったことのない組み合わせを試す。ということで満足しようとしていた楓にとって、新しい服を買うことのハードルはほとんど変わっていなかった。

 着古した服を着ていることも、ファッションセンスのなさかと思うこともあったが、古着を着る人がいることを考えると、単に実力不足だと思い知らされるのだった。

 そもそも、向日葵は神様なのだから、みんなに褒められるファッションをできて当然だと考え、楓はとりあえず上達を目指そうと決めた。

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