園遊会 4
クリスタは園遊会に招待された下級貴族との会話を楽しんでいた。
「我等の様な者にも王家の皆様は心を砕いて下さる。ありがたい事です」
「左様、次の代も我が国は安泰ですなクリスタ様」
「えぇ、皆様あっての王家ですわ。これからも支えとなって下さい」
下級貴族とはいえ数を揃えれば力となる。
クリスタは自らの派閥を手に入れる為、彼等の取り込みを考えていた。
この園遊会に参加している者の大部分が文官である。役職がらアーダンの魔導師集団と近しい。武官で招かれた者達は皆狩場へ馬を進めている。
ふと、クリスタの視線がエレクトラの方に向いた。
(何を話しているのかしら?)
エレクトラはルチルを招き、テーブルの一つを独占している。
ぼんやりと座るルチルに対し、エレクトラの口が動いているのが見えた。
ルチルに真っ当な受け答えが出来るとは思えない。なら、エレクトラは勝手に話しているのだろうか。
(まぁいいわ、エレクトラが動かないならそれで)
この園遊会はエレクトラの仕切りであるから、彼女に注目が集まるかと思っていた。
しかしエレクトラはこの集まりを利用する気が無いらしい。
ならば、この機会を逃す手は無い。
「クリスタ様もじきに成人を迎えられますな」
「おぉ!そうそう、新たな王位継承権をお持ちになる方が生まれる訳で、喜ばしいかぎり」
「ありがとうございますわ……エレクトラ姉様は他国へ輿入れなさいますし、聡明だったルチル姉様はあんな事になってしまって……私、王家をもり立てていかなければ、と」
クリスタは暗に王位への野心を臭わせた。
「なんと心強いお言葉!」
「レイザー様が……ああですからな、大きな声では云えませんが。クリスタ様が王家を背負う覚悟がお有りと云うのであれば」
「左様、我等一同クリスタ様へ細やかながら尽力致す所存」
最近クリスタがルチルの面倒をみている事が伝わっているのだろう。ルチルの祖父アーダンは謂わば自分達の上司、今クリスタと親しくなればアーダンからの覚えもめでたくなる。
クリスタが王位に立つ気があるならば、それに乗らない手は無い。
また、国政に関心が無いレイザー、隣国へ嫁ぐエレクトラ、軍事しか知らないブラスタ、毒に冒されたルチルと、他の継承権保持者にはそれぞれ問題がある。
下級貴族達にとってクリスタこそ王位を担うにふさわしい者はなかった。
(簡単じゃないの)
にこやかにクリスタは下級貴族達の間を渡る。
その笑顔は作られたものではなく、助力を申し出た者の数だけ明るさを増していった。
(エレクトラは……まだルチルの相手をしているのね)
勝てる。とクリスタは思った。
十五歳の成人となるまであとわずか、成人すれば正式に王位継承権の順位が決まる。
その時までに自分の有能さを示すのだ。そうすれば本来より高い順位が得られるはず。そうしてレイザーや他の兄弟姉妹より自分が王位にふさわしいと認めさせるのだ。
クリスタの笑顔はより一層明るく輝いた。