表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死んでも安い世界で生きる僕らは  作者: 海老之巣
第2章 新人冒険者のあれやこれや
22/61

22話 初めての依頼

 背の高い椅子(おそらく子供用)に座ったナディアは、ロディの話を聞いて目を輝かせていた。


「じゃあ、キミは別の世界から来たのか! すごいなぁ」


 ロディはナディアに自身の大まかな来歴を話した。

 元居た場所で騎士をしていたこと、魔法でこの世界に飛ばされたこと、この街に来てからの話、といった程度だが、


「あっさり信じるんだな。もっと疑われるものだと思ってたよ」


 アラン曰く、別世界から来た人――迷い人は稀な存在であり、自分を迷い人だと宣う者の大半は、ホラ吹きや狂人らしい。

 故に、疑われて当然だと思っていた。


 だが、問われた彼女は首を振り、


「やれやれ、何を言い出すんだい。それは信じるとも! だって、友達だろう?」


「ああ、そうか。うん、ありがとう?」


 恥ずかしげもなく言い放つ彼女に、ロディは若干気圧(けお)される。

 ――会ってまだ一日なんですけど。


 アランといいナディアといい、ほぼ初対面のうちから距離感が近い人が多い気がする。


「それだけじゃあ納得できないなら……ほら、キミ、この世界の言葉を話せないって言ってたろう? 目の前で座って話していて、何か違和感があったんだ。口の動きと声があってないからさ」


「ああ、なるほど」


 この世界の人と対話ができるのは、首に着けた魔道具の力だ。

 そして、ナディアが語る違和感はロディにも覚えがあった。しかし、魔道具の力の影響だと気づいてから、早々に意識の外に追いやっていたのだ。


「じゃあさじゃあさ、その魔道具を外してみておくれよ! どんな言葉を話してるか、聞いてみたいんだ」


「いいよ。ちょっと待ってな……」


 チョーカーのような魔道具の留め具を外し、机の上に置く。

 その瞬間、世界の時が止まったかのように感じるほどの静寂が訪れる。

 だが、その時間は長く続かず、再び世界に音が戻った。


「こんな感じだが、俺が何を言っているか分かるか?」


 目の前に座るナディアの様子からして、言葉は通じていないだろう。

 そもそもロディの方も、店の中の客が話す言葉が、理解できない音の羅列に代わっていた。


「縺ク繝シ、 蜈ィ辟カ繧上°繧峨↑縺…… 繧ゅ@繧ゅ?縺」


「やっぱり、何言ってるか全然わからんな」


 なんとなく意味のある言葉だとは分かるが、それだけだ。


「繝懊け縺御ス戊ィ?縺」縺ヲ繧九°縲√o縺九i縺ェ縺?h縺ュ。 繝舌?繧ォ繝舌?繧ォ、 謔斐@縺九▲縺溘i險?縺」縺ヲ縺ソ繧阪?」


「ふむ」


 ロディはチョーカーのような魔道具を手に取り、首に装着した。

 一瞬周囲の音が聞こえなくなるが、再び他者の話す言語が理解できるようになる。


「お、もう終わり――」


 手を伸ばし、ナディアの額に弱くデコピンを打った。

 ナディアは額を手で押さえ、小さく唸る。


「うー、なにをするんだい、ロディくん」


「聞こえないからって好き放題言ってたろ。分かるぞ」


 先ほどの彼女の顔は、まるでイタズラをする子供のようだった。

 ロディの見立ては正解だったようだ。ナディアは少し眼をそらしながら、

 

「まさか! ボクがキミを侮辱するだなんて、そんなそんな」


「じゃあ、なんて言ってたんだ?」


「えーっと、騎士様ーカッコいいよーって……」


「やめんか」


 ロディは再度デコピンを放つ。

 いつまでそれでイジる気なのか。人目もあるので勘弁願いたかった。


「うぅ、ヒドイ……すぐ暴力に訴えるなんて、騎士失格じゃないかね!」


「今は騎士じゃなくて中級戦士だからな。そんなの知らん」


 ナディアはぐぬぬと唸り、顔をテーブルの下に沈める。


「このような非道、あってはならないぃ……ボクの友達が、か弱い女の子に暴力を振るう外道だったなんてぇ……」


「ハイハイ、ごめんなー、サンド一個分けるから許してなー」


 ジューシーサンドのことだ。揚げた肉をパンに挟んだもので、ロディとナディアが注文した料理だ。

 さすがに肉の味では、昨夜食べたステーキに軍配が上がるが、ドラゴンの肉と比べるのは酷だろう。これが何の肉か知らないが。


「わーい、さすがはボクの見込んだ友達だ! 先ほどのことは不問にするとしよう」


 ナディアはその小柄な見た目に反して大食らいだった。そこそこボリュームのあるジューシーサンドを既に三つ平らげている。

 そしてロディの渡したサンドもまた、見る見るうちに無くなっていった。


「まったく……君の言う友達は、メシを奢ってくれる都合のいい相手か何かなのか?」


「そうともいうね」


「いうなよ」


 ジューシーサンドを食べ切ったナディアは満足したのか、椅子から飛んで地面に降り立ち、


「いやぁ、美味しかったよ。キミの友達にもお礼を言っておいてくれ。――さてさて、ロディくん、この後の予定はあるかな?」


 今日一日は好きにしていいと言われているし、問題はあるまい。


「ないよ。なにをするんだ?」


 ナディアはにやりと笑い、首に下げた銅のプレートを持ち上げる。


「ふっふっふ、ボクたちは冒険者だよ? もちろん、依頼を受けに行くのさ。一緒にどうだい?」


◇◇◇◇◇◇◇◇


「「読めない……」」


 ロディとナディアは依頼を受けるため、共にギルドを訪れていた。

 依頼の内容は紙に記され、掲示板のような場所に張り出されるらしく、二人はそこに来ていた。しかし、


「そもそも俺、字が読めないんだった」


「ぐぬぬ、低い場所の依頼書しか見えないぃ……。もう少し、ボク達ハーフリングにも配慮したらどうかね!」


 そうして二人が立ち往生しているうちに、他の冒険者が横から依頼書を()(さら)っていく。


(らち)が明かないな……」


 ロディはギルドの職員に手を貸してもらおうと辺りを見ますが、動く前にナディアに手を引かれる。


「ナディア?」


「まあ待ちたまえ、ボクに名案があるんだ」


◇◇◇◇◇◇◇◇


「まだか?」


「もう少し……ボクが依頼を決めてもいいのかな?」


「なんでもいいから早くしてくれ……」


 ナディアの名案とは単純明快、肩車だった。ロディがナディアを背負い、ナディアが上から依頼書を読む作戦だ。

 ただ、一つ問題があった。


「どうかしたのかい? ロディくん。もしかしてボク、重いかな?」


「軽いよ。なんてことないさ。けど、そうじゃない」


 ナディアが依頼書を上から下へ読み進めるのに従って、腰を落とさねばならないのは少し辛いが、そのことでもない。


「恥ずかしいから早くしてくれ!」


 周囲からの好奇の視線を感じる。しかも、まだ朝なので人の数は昨夜よりも多い。

 はたから見ればロディの姿は、女の子を肩車する鎧の男なのだ。


(変な噂でも立ちそうだな……)


「じゃあ、これにしようかな」


 ナディアは依頼書のうち一枚をつかみ取り、「とうっ」という掛け声とともにロディの背から飛び降りる。


「ホラ、これだよ」


 ナディアが差し出す紙には植物と思しき絵が描かれていた。


「それは? どんな依頼なんだ?」


「ボクたち新人冒険者の定番中の定番、薬草採取さ!」

 ちなみにナディアは、


「繝懊け縺御ス戊ィ?縺」縺ヲ繧九°縲√o縺九i縺ェ縺?h縺ュ。 繝舌?繧ォ繝舌?繧ォ、 謔斐@縺九▲縺溘i險?縺」縺ヲ縺ソ繧阪?」

「ボクが何言ってるか分からないだろ。バーカバーカ、悔しかったら言い返してみろー」


 みたいなこと言ってます。


 文字化けを変換すれば読めるようにしたかったんですけど、編集完了をすると半角カタカナが全角にされるので変換出来ないみたいです。残念。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ