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僕と君との迷宮攻略――序  作者: 御咲花 すゆ花
第一章――三つ子村
16/28

三日目――迷宮(4)

「一日目――転移」におけるオウギの異能(ギフト)の説明を変更しています。

×:人に直接声をかけられる

〇:離れている人に直接声をかけられる

 休憩中のダヨトに代わって物資を安全地帯(セーフティー=エリア)へと運んでいたイリオが(やぐら)へと戻って来た。(ねぎら)いの言葉もそこそこにバシハが再びダヨトに向かって口を開いた。

「中央に伝言。『まもなく、第三(ウェーブ)が開始。適宜(てきぎ)、東西に合流せよ』。ついでにミカズミに『西側の治療はしなくていい』って伝えてくれ」

 第三(ウェーブ)では中央の経路(ルート)魔物(まもの)が一切出現(しゅつげん)しない。したがって、東西それぞれの経路(ルート)における戦力を増加させることが肝となる。言わずもがな、後半の指示は治療者(ヒーラー)に対するものだ。挑戦(ちょうせん)における治療者(ヒーラー)の定位置は(やぐら)よりも少しだけ前で、戦線とはわずかに離れている。ここであればどの経路(ルート)に対しても比較的距離が短いため、救援の合図があった場合にはどこであっても素早く対応できるのだ。無論、これは伝令役のイリオにはあてはまらない。伝令役となった以上は今回の挑戦(ちょうせん)におけるイリオの役目はあくまでも指揮官の指示を戦線に伝えることにある。

 バシハの声に耳を傾けていたオウギがそれとなく中央の経路(ルート)に目を向けてみると、ちょうどミスヒが複数の(うろこ)たちを倒したところであった。長い手足と(やり)とを活かし、一切の魔物(まもの)を近づけさせない戦いぶりは遠目に見ても鮮やかであった。

 指示を受けたダヨトが「了解」と返事をして()けていく。それを横目に見ながらオウギは「治療はイリオがするんじゃ?」という疑問を(いだ)いた。しかし、オウギが尋ねるよりも一足早くバシハがイリオに対して別の指示を出したためにオウギは口を閉じざるを得なくなる。

「イリオは念のために西の後方で待機しといて」

「わかりました」

 話が一段落(いちだんらく)したのを見計らって今度こそオウギが尋ね、バシハが少しだけ言葉を選ぶように(あご)をなでながら答えた。

「ああっと、治療者(ヒーラー)の話な? イリオもたしかに治療者(ヒーラー)なんだが、言葉としては治療の異能(ギフト)を持っている下人(ムルイ)が『治療者(ヒーラー)』って呼ばれるんだ。――んで、今回の挑戦(ちょうせん)に参加している治療者(ヒーラー)はイリオのほかにも『ミカズミ』っていうノネがいるんだが、今日は基本的にミカズミが怪我人(けがにん)を治療する方針なんだよ。……まあ、()ってもミカズミの異能(ギフト)は根っからの治療って感じじゃねえからイリオとかに比べちまうと、どうしたって一枚落ちるんだけどな。いかんせん治療者(ヒーラー)そのものの数が三つ子村(みつごむら)には三人しかいねえ。明らかに貴重な存在なんだよ。――んでだ、仕方なくミカズミが治療者(ヒーラー)としての練習を重ねてるってわけだ」

「なるほどね……理解したよ。その『根っからの治療』っていうのは?」

「イリオとか、もう一人の治療者(ヒーラー)であるタヤとかの異能(ギフト)は完全に治療を行うための異能(ギフト)なんだ。ああ――ちなみに中心(メイン)治療者(ヒーラー)はタヤのほうな。(ひるがえ)って、ミカズミの異能(ギフト)は……説明が難し(ムズ)いな……。ざっくり言えば(やあ)魔物(まもの)を攻撃したぶんだけ『治療』か『追い打ち』ができるって感じだ」

 つかの()、返答に困ったオウギが黙りこむ。

「……なんていうか、便利だけど使い勝手が悪い感じだね」

 言い得て妙な表現にバシハが思わず「くすり」と笑い、適切な言葉を補うようにしてオウギに言い返す。

「そうな。便利だが、治療者(ヒーラー)としては使い勝手が悪い」

 つづけて、バシハは地面に引かれた線に足先で新たなものを加えると、オウギに向きなおって(いろ)(ただ)した。口を開けてもすぐには言葉を発さず、自分の表情から「少しだけ大事なことを話そうとしているのだ」ということをオウギが()み取るまで待ってからバシハは言った。

「オウギ、次の(ウェーブ)は東側に注目してみろ。第三(ウェーブ)は東から(はね)が現れる」

 (はね)についてはオウギも理解していた。ボクノヤミに言われたことを思い出すようにオウギが「ふつうの武器だと(はね)には攻撃できないんじゃなかった?」と口を開けば、うなずいたバシハが「だから、さっきトモマヤとか(ゆみ)を使う下人(ムルイ)を東側に送ったろ?」と応える。「なるほど」と言わんばかりにオウギがうなずくと、バシハが手に持った笛を鳴らして音を出した。笛といっても、それは吹いて鳴らすものではない。呼子(ホイッスル)のようなものの先端についている(ひも)を指にかけ、回して音を出すのである。

 短く三回、次いで三回、念押しに再度三回。笛の合図に合わせて中央の経路(ルート)にいた下人(ムルイ)たちが一斉に左右の経路(ルート)を目掛けて移動していった。攻撃役の下人(ムルイ)たちが()けたことにより、必然的に回収役が目立つ形となったためにオウギもようやくそこでネミガナの存在に気がついた。手に持った袋から物資を運んでいることが見て取れる。オウギが「いくら挑戦(ちょうせん)とはいえ楽な作業じゃないんだな」と思いながら眺めていると、再びバシハが笛を鳴らした。(はね)出現(しゅつげん)した合図である。

 東側の(やや)後方に巨大な怪鳥(かいちょう)が姿を現す。全長はウノカの約二倍であり、骨ばった小さな胴体とは()り合わないほどに巨大な翼と(くちばし)とが取ってつけたようにある姿は、どことなくオウギに翼竜(プテラノドン)を思わせる。

 (はね)は五種類の魔物(まもの)の中で移動速度が一番速い。おまけに下人(ムルイ)が通れない場所も平気で飛行してしまうため、非常に厄介な魔物(まもの)だ。(はね)安全地帯(セーフティー=エリア)へ向けて移動してしまう前に逸早(いちはや)くトモマヤが引きしぼった(ゆみ)(はね)に向けた。

 ぴょー。

 聞こえるはずのない弦を離れる矢の音が響いて来るかのようだった。矢は見事に命中し、(はね)が顔の向きを変える。トモマヤに対して口を大きく開いたかと思うと、(やぐら)まで届くほどの尋常ではない大きさで【ぎしゃあ】と威嚇(いかく)をした。思わず、オウギは現場にいないにもかかわらず、足を(すく)ませた。

 (はね)の攻撃。地際(じぎわ)を滑空する(はね)が付近の下人(ムルイ)たちを全部まとめて(なぎ)ぎ払うようにして広げた翼と開いた(くちばし)とでトモマヤを害さんとする。すかさず下人(ムルイ)たちが低空を飛行している(はね)に向かって各々の武器で攻撃をはじめた。

 だが、(はね)は気にしない。トモマヤを目掛けて一直線に向かっていく。地面を転がるようにしてトモマヤは(かろ)うじて(はね)の攻撃を()けると、急いで立ちあがって身構えた。(やや)遅れて態勢を整えた(はね)が反転して再びトモマヤを襲う。

 周りを見回し、自分と下人(ムルイ)たちとの距離を確認したトモマヤが矢を放ちながら再度地面を転がった。その間にも続々と魔物(まもの)出現(しゅつげん)していく。二体目の(はね)毛玉(けだま)(うろこ)たち、三体目の(はね)。その(たび)にバシハが笛を鳴らしていく。鎖鎌(くさりがま)を扱う下人(ムルイ)が二体目の(はね)に攻撃したことを契機にトモマヤの前方でも下人(ムルイ)たちと(はね)との交戦がはじまった。

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