表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/28

はじめに・献辞・序章

   はじめに


 登場人物の名前および作中用語については初回のみ(すみ)つき括弧(かっこ)(【】)を用いた。ただし、作中用語のうち登場人物の必殺技にあたるものについては初回か(いな)かにかかわらず二重山括弧(かっこ)(《》)を用いた。




   献辞


 (つつし)んで二つ結び(ツインテール)(ささ)げる。




   序章


 こつこつ。


 歩道橋の階段を一人の人間――名は【オウギ】――がおりている。オウギは在籍している学校へと向かっている最中であった。


 オウギがおりている「その歩道橋」はずいぶんと古びたものであり、ところどころ塗装(とそう)()げていた。手すりを使えば、手のひらに塗装(とそう)の一部が()がれてくっついて来るほどである。一段一段の段差がえらく低い「その階段」をおりながら、オウギは二日前に怪我(けが)をした左目の目じりに手をあてていた。


 その怪我(けが)は妙なものであった。小さな怪我(けが)であったため、瘡蓋(かさぶた)はすでに取れ、傷もすでに(ふさ)がっているのだが、いつまで()ってもオウギからは「治っていないような感覚」と「怪我(けが)をしたところにできた【黒い(あと)】」とが消えないのである。結局、左目の目じりには遠目にもわかるほどにくっきりとした三本の黒い(あと)が残ってしまった。


『嫌なものが残ってしまった』と、そう思いながらオウギが歩道橋の階段をおりていく。おりおえると、学校への道順にそって反転して体の向きを変えた。朝日が背中からあたるようになった。


 暖かく、そして(まぶ)しい朝の日の光を背中に受けながら、オウギは歩道橋をくぐるように「その下」へと入っていく。歩道橋の陰の中に自身の体が完全に()もれると、オウギはそこで立ち止まり、現在時刻を確認するべく携帯(ケータイ)の画面を点灯させた。表示される時刻は午前八時より少し手前――このまま歩いていけばいつもよりも学校に早く着いてしまうことは明らかであった。


 オウギは思う――まだ全然時間がある……。どうしよう、通信網(ネット)記事(ニュース)でも見ようかな。


 手持無沙汰(てもちぶさた)な様子でオウギは通信網(ネット)記事(ニュース)を眺めていく。少しすると、一つの記事が目に()まった。それはオウギが(した)っている遊戯(ゲーム)開発者【イチノ=タカラ】の記事であった。


『イチノ氏、新しい遊戯(ゲーム)を開発!』という見出しからはじまる記事を開く。すぐに、それが記者(インタビュアー)とタカラとの対談形式の記事であることをオウギは理解した。記事の中身については時間のあるときにじっくりと読むことに決めると、オウギは今すぐにでも知りたい遊戯(ゲーム)種類(ジャンル)についての情報を得るべく、記事を斜め読みしていく。



  ……イチノ氏といえば、浪乗車(スケボー)の事故で奇跡的な生還を()たしたことでも有名ですが……。


  ……これは私の持論だが「人生には一度だけ失敗を(くつがえ)すための機会(チャンス)が与えられている」。あのときの奇跡について、私はそのように……。


  ……私にはどうしてもやりたいことがあった……。



 ほどなくして、目当ての情報をオウギは見つけた。


 オウギは思う――な~んだ、種類(ジャンル)は防衛遊戯(ゲーム)か。僕は疑似体験(RPG)が好きなんだよ。敵よりも圧倒的に強化した仲間を使ってする「脳死遊技(プレイ)」とか、すごく気持ちがいいんだけど……。そっか、タカラさんは防衛遊戯(ゲーム)みたいに「頭を使う感じの遊戯(ゲーム)」が好みだったのか。


 自身にとって好ましいものではなかったものの、ひとまず目当ての情報を得られたことに満足すると、オウギは携帯(ケータイ)を消灯させて衣嚢(ポケット)の中へとしまった。そして、オウギが「そろそろ学校に行こう」と歩きだした――ちょうどそのとき、オウギは足元に一輪の花が咲いているのを見とめた。


 黄色い、小さな花である。


 薄暗い影の中に身を(ひそ)めた「その一輪の小さな花」は、石畳の上という花を咲かせるには似つかわしくない場所であることも相まって花を見とめたオウギに奇妙な印象を(いだ)かせた。一瞬、「どこか別の場所から迷いこんだみたいだ」と思ったオウギであったが、すぐに「そんな馬鹿(バカ)なことあるはずがない」と頭を二度三度、左右に振って自身が(いだ)いた考えを否定した。


 ふと、そこでオウギに声がかかった。高く、澄んだ美しい声である。


「久しぶり」


 声には聞き覚えがあり、オウギの胸中には形容しがたい「懐かしさ」が広がった。しかし、オウギには心当たりの人物という肝心なものがまるでない。「あれ? いったい誰だっただろうか」と声の(ぬし)を確認するべく、オウギは足元の花を見るためにをさげていた視線を上にあげた。


 見た。


 おかしなものを見た。


 決してこの世のものではないものを見た――世界である。歩道橋の下にある階段の陰の向こうに白い光に包まれながら別の世界が広がっていたのである。


「……(ウソ)、でしょ?」


 思わず声が()れていた。声の(ぬし)なぞ確認している場合ではなかった。


「いやいやいや! たしかに、さっきは……」別の場所から迷いこんだみたいだ――なんて思ったけれど。


 挙動不審になりながらオウギが後頭部を()きむしる。


「でも、まさか――そんな」


『――ことあるわけがない』と、オウギが心中で慌ただしくそう思っているうちに白い光がオウギの見ている目の前で、少しずつその範囲を広げていった。いたく驚いてオウギは思わず尻もちをつく。だが、それだけである。オウギは何もできなかった。声なき声こそあげたものの、自身へと(せま)って来る白い光に対して(あらが)うことはできず、オウギは尻もちをついた格好のまま別の世界――【キザワシカ】――へと飛ばされた。

21/3/14――いくつかの余白を追加しました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ