5話 プレイヤー
『【魔法熟練《火》】のレベルが上昇しました』
【気配察知】で1体のみの敵を探すこと2時間、つまり現実換算1時間狩りを続け、グラスラビットを8体とイノシシの魔物『グラスボア』を2体倒すことができた。
もうそろそろお昼時、そしてMPもだいぶ減ってしまったから今回はここが終わりどころだろう。
この2時間の成果としては、まず能力値が魔力、筋力ともに1上昇した。
それからスキルの方も【武器熟練《片手剣》】【防具熟練《盾》】【気配察知】そして今上がった【魔法熟練《火》】が全てレベル2となり、ドロップアイテムもグラスラビットの肉が10個にグラスラビットの皮が6つ、そしてグラスボアの肉が3個手に入った。
また、スキルレベルが上がったことで武技を2つ習得することができた。
まず1つ目が片手剣武技のスラッシュだ。
通常の攻撃だとグラスラビットを倒すのに2回攻撃する必要があるが、スラッシュで攻撃すれば1撃で倒せるのだ。逃げられる恐れもないし、非常にありがたい。ただしスラッシュには若干だが使用後の硬直があるため、複数に同時に襲われている際には使用しないほうがいいだろう。
2つ目が盾武技のシールドガード。
盾で防ぐに使用する武技なのだが、どうやら上手くガードすると衝撃を大幅に減らすことができ、すぐさま次の行動に移れるようなのだ。グラスボア相手に一度使ったのだが、上手く決まったおかげでそのまますぐ攻撃することに成功し、結果的に一度もダメージを受けずに倒すことができた。
スキルレベルは使えば使うほど上がっていくようだし、これからもガンガン上げていきたいところだ。
そういえば【魔法熟練《火》】のレベル2で習得できた魔法は何だろうか。
スッと右指を動かしてコンソールを開き、スキル画面から【魔法熟練《火》】に指を合わせてみると、どうやら新しくファイヤーアローを覚えたらしい。名称的に、一番弱いファイヤーボールより早く飛ばせる魔法なのだろう。
「よし、帰るか。……そういえば誰にも会わなかったなあ」
ほとんどのプレイヤーがすぐにでも街の外に飛び出すんじゃないかなどと思っていたのだが、どうもそんなことは無かったようだ。
狩ってる途中に狩場の奪い合いになるんじゃないかとか、何かしらトラブルが起きるんじゃないかなんて予想していたので、この2時間誰にも遭遇しなかったことにどうも違和感を覚えつつ、来た道を戻っていく。
この後どうしようか考えながら歩いていたが、ふと意識を戻し前を見ると3人組が歩いていた。
まだかなり距離があり見えづらいが、男性2人に女性1人の3人パーティのようだ。
『【遠見】のレベルが上昇しました』
予想外のタイミングでスキルレベルが上昇し、なぜ今? と驚く。
おそらくだが【遠見】のスキルレベルが上昇する条件が『何度も遠くを注意して見ること』なのだろうと勝手に中りをつけ、そのまま歩いて3人組へと近づいて行った。
「ども。狩りっすか?」
お互い視認できる距離辺りで軽く会釈した結果、3人の中で一番背の高い男が話しかけてきた。
何かしら情報が欲しいのだろう。
「ええ。ここからちょっと行ったあたりでさっきまでグラスラビットを狩ってまして。今はちょうど帰るところなんです。そちらはこれからですか?」
「おおっ! ほらダイキ! やっぱりもう狩りに行ってる人いるって!」
「いやぁまさかもういるとはなあ……。ちょっと参考までに聞きたいんですけど、戦ってみてどうでした?」
ダイキと呼ばれたもう片方の男性が苦笑いしながら仲間に相槌を打ちつつ話しかけてくる。
『まさか』と言われ、実は何か街中でイベントでもやっていてそれを見逃しでもしてしまったかと少し不安になるも、流石にそういったイベントがあるならアナウンスが流れていないとおかしい。
何か別の理由だと結論付け、会話の内容に答えることにした。
「うーんそうですね……1人でもうまいこと1対1で戦えば特に苦戦することもなく、って感じでしたね。ただ1体でいる場合、そっと近づかないと逃げ出してしまうのでそこは手こずるかもしれませんが。ああ、あとグラスボアもいるのでそれも気を付けたほうがいいかもしれませんね」
「ああやっぱりそんな感じですか。俺たち、ここ来る前にギルドの資料室寄って来てるんですけど、そっちにもおんなじこと書いてあったんですよ。それで3人で、本当かなあなんて話してて」
ギルドという初耳なワードが飛び出す。他のプレイヤーたちがそこに流れているせいでまだ狩場に誰も人がいなかったようだ。
言われてみれば、確かに情報収集はしっかりしたほうがよかったか。
先ほどまで狩りをしていた場所は確かに序盤に最適な狩場だったが、実は街の反対側に行くととんでもなく強い敵がわんさかいるだとか、そんな可能性だってあったわけだし。
「あー……そうかみんなまだ街中で情報収集とかしてたのか。どうりで狩場に誰も来ないわけだ……。街に戻ったらギルドの資料室いってみようかなあ」
「おっ! てことは誰もいない? 狩りほーだいじゃん! やったー!」
「ヨウ! まずはお礼!」
最初に話しかけてきた男性がはしゃぎ出したところ、2人の後ろで静かにしてた小柄な女性が少し怒り顔でそう言う。どうやらこちらの男はヨウというようだ。
「おっおう。 ありがとっす! あそうだ、俺ヨウって名前なんでよろしく!」
「もー……私はミナです。ご迷惑おかけしました」
「すみませんね。俺たち、3人でパーティ組んでるんですよ。もしよかったらお互い自己紹介しときませんか? 俺はダイキって言います」
残りの2人がミナとダイキというようだ。
恐らくこの3人は現実でも仲のいい3人組なのだろう。普段の関係性が容易に想像できる話しぶりが、なんだか少し羨ましい。
「私はカナタです。よろしくおねがいしますね。今のところソロなのでプレイヤーと話すのこれが初めてなんですよ」
「よろしくお願いします。俺らも、俺ら以外と話すのはこれが初めてですし同じようなもんですよ。たぶんほとんどがまだプレイヤー間では……ああ、そうだ。街出る直前なんですけど、あの最初の噴水広場の近くで『肉持ってくれば買うぞ』って叫んでるプレイヤーがいましたねそういえば。そう言う人ならたくさん話してそうかな?」
生産をメインに据えたプレイヤーなのだろう。初期資金5000ギルで調理道具を買って、余ったお金で材料を確保しようとしていると思われる。
「戻ってもまだいるようだったら売ってみようかな。ああそうそう、この辺りにいるグラスラビットとグラスボアは肉を落とすんですよ。もう資料室で確認してて知ってます?」
「確か肉と皮を落とすって書いてありましたね。さっき言ったプレイヤーも、その情報を仕入れてて噴水広場で叫んでたのかも」
「ですかねえ。……さて、せっかくですけどここらで今回は別れましょうか。ゆっくりしてると次々とプレイヤーが来てしまうかもですし。3人とも気をつけてくださいね。あと、また何かあったら気軽に声かけてください」
「はい! たぶん俺らも昼過ぎには街に帰ってると思いますし、今度はまた街で会いましょう!」
もう完全にパーティの渉外役となってしまったダイキが笑顔でそう言うと、ヨウとミナも「また」と言って先へと進んで行った。
そして俺も、今回いくつか教えてもらった分次の機会に何かお返ししようと頭の中のToDoリストに入れ、街へと帰っていった。
表記ゆれのため修正
誤:【魔法熟練:火】
正:【魔法熟練《火》】
以下ステータス等まとめになります。
【ステータス】
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名前:カナタ
種族:ヒューマン
クラス:ソードマン
称号:なし
リスポーンポイント:ライア
現在値/最大値/自然回復量
HP:13/13/1 → 14/14/1
MP:9/9/1 → 10/10/1
【能力値】
魔力:5→6
筋力:5→6 体力:4
知力:4 精神:4
器用:4 敏捷:4
【装備】
初心者用片手剣
初心者用小盾
初心者用布の服
初心者用皮の靴
現在装備重量:11
装備可能重量:20
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【習得済みスキル】
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武器熟練《片手剣》 Lv1→Lv2
防具熟練《盾》 Lv1→Lv2
魔法熟練《火》 Lv1→Lv2
魔法熟練《空間》 Lv1
遠見 Lv1→Lv2
気配察知 Lv1→Lv2
生産《錬金》 Lv1
採集《植物》 Lv1
暗視 Lv1
第六感 Lv1
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【インベントリ】
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グラスラビットの皮 × 6
グラスラビットの肉 × 12
グラスラビットの魔石 × 1
グラスボアの肉 × 3
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