これからは謎の魔術師ってことで、ひとつ
長らくお待たせいたしました
結局、スーパー大森には食料ダンジョンの他に日用品ダンジョンも併設され、実際に食料や日用品のトラブルが発生しそうになったら一般開放されることになっている。
今は知人、友人、スーパー関係者が試用している。
スーパーの商品の7割は既にダンジョン産のものだ。
これまでのレジ係のパートに加え、スーパー大森では最近はダンジョン攻略のアルバイトや社員が採用されている。
日用品ダンジョンは食料ダンジョンのほぼコピーで、ドロップ品のみ異なるものとなっている。
次いで有馬を矢面に立たせて母校である市立の中学校をダンジョン化。
有馬の友人たち(カンスト済み)が交代で指導に当たることになった。
でもって俺はと言うと本来の未来の職場、市役所で和田の親父さんと共に市長やら市会議員を前にダンジョンの説明をしている。
「……という訳で、ダンジョンから得た物を余所への支援に回すことは可能ですが、他所の土地にまで際限なくダンジョンを増やすことは出来ません。魔力的に上限があります」
もちろん、上限と言うのは嘘だが、他所にまで作る気が無いのは本当である。
日本各地の動物園、水族館のダンジョン化救済はほぼ完了。
那須どうぶつ王国やら和歌山アドベンチャーワールドなんて「ホントにこの辺まで宇宙人来るのか?」ってトコまで済ませた。
転移で都市部の様子は時々見に行ってるが、日本という国はほぼ無くなったも同然だな。
対異星人トラップダンジョンの中は避難所となってるが、物理的な限界があるから入れない人間との小競り合いが絶えない。略奪するにも物資は都市部では早々に自衛隊と警察で回収&配給となってるから、ヒャッハー勢は暴れるためのエネルギー補給すら出来てない。
交通網と通信網が都市中心に壊滅してるのがなぁ……。
このまま行くと人口が多いエリアから日本人は死滅していくだろう。
シェルター?
高性能であればあるほど宇宙人の資材回収対象になるんじゃね?
市役所の会議室でのダンジョン説明会は和田の親父さんの根回しもあってか、変なことを言い出すおっさんとかもおらず、素直に話が進んだのは幸いだ。イラっとしたら簡単に殺せてしまう、今のスペックとメンタルがヤバイ。
魔王軍の幹部クラスだと上から目線でイラつくこと言う奴多かったからな。
その辺、全部殺してきただけに、似た言動の相手の殺害とかブレーキが存在しないんだ。
「ああ、死にたいんだね」とか思っちゃう。
アホなおっさんが居なかったのは、どっちにとってもラッキーだったね。
「ネットがほぼ死にかけ、自衛隊も燃料・弾薬の関係で行動規模縮小となってこっちには来そうも無い。都会では色々と酷いことになってるそうだし、どれだけ不審に思おうが市民の暴徒化と異星人による直接被害が防げるのであれば、ごちゃごちゃ言ってる余裕も無いってことだな。下手すると暴徒化した大衆の不満の矛先になる立場だってことを理解すれば、協力的にもなるさ。よーく、話して聞かせたからね」
和田の親父さん、俺からすりゃ気のいいおっちゃんだけど、実は凄い人なのか?
色々な意味で頭が上がらないな。
有馬と和田の親父さんに任せれば俺の負担は大分楽になる。
アッコちゃんと遊ぶ時間が無いという最悪の事態は防げそうだ。
「ともあれ、協力に感謝致します。早急に警察、消防とも連携を取って対異星人対策を進めます」
和田の親父さんと並んで市長からの感謝の言葉を受ける。
ちなみに今の俺は認識阻害の効果のある魔法使い用装備のフード付きローブを着て、相手からすると口元しか見えてない不審人物だ。
実はこの近くで隠棲していた古い時代の魔法使いの生き残りで、周辺が騒がしくなってきたんで、平穏を守るために協力しているという筋書きである。
時代が時代なら神扱いされそうだな?
そういや、この世界の神ってのも居るハズなんだが、本当になにしてやがるんだろうな?
もしかして……この「世界」であって、地球の神じゃないのかもしれない。
少なくとも異星人は居る訳だしな。
他所の世界からとかなら出張って来る可能性はあっても、同じ世界の中同士じゃ、地球の戦争に介入が無いのと同じ話なのかも?
神の介入で戦争が止まったなんて話は聞いたこと無いしな(逆は神話ではよくあるけど)。
つまりは神の介入や手助けは期待出来ないってことか……。
介入あるなら最初の一週間とかで介入してるよな。
ということは、俺が好き勝手してもいいってことだな!
外部の文明崩壊レベルが一定に達したら、高層城壁型ダンジョンで外から一切入れない様にしてしまうか?
日本、三分割とかはしないけど……。
◆◆◆
市役所をウチのマンションと同様のノービスダンジョン化で不壊にし、高校野球もやる市の野球場を警察や消防の訓練用初~中級ダンジョン化した。
前者のボスキャラは市のゆるキャラのぬいぐるみゴーレム。
HPはクソ高いが攻撃防御とも一般人以下。
感触も動きもぬいぐるみそのままで、市の上層部除いて誰も中に誰も入ってないなんて思ってない。
後者のボスは警察、消防の皆さまのご要望に応えてドラゴン(見た目だけ凄いが強さは裏山ダンジョンのボスの100分の1)となった。
オッサンたちでもゲームが当たり前になってからの世代なんで、ボスと言えばドラゴンと言う声が大きかったようである。
でもって今俺が来ているのは市に一か所だけある火力発電所。
この手のもんはウチみたいな田舎に押し付けられがちである。
原子力じゃ無かっただけまだマシという話もある。
ここもダンジョン化で異星人に壊されない様にしに来たわけなんだが、ボスを一工夫してみた。
ボスの居場所、ボイラーの中。
ダンジョンボス、メガサラマンダー(通常よりデカくて強いサラマンダー)。
つまり燃料無しで発電可能。
市長、感涙の匠の技である。
ついでに周辺を中~上級ダンジョンに。
FF2のラストダンジョンみたいに、外側と内側が直接は繋がってない形で、中心の火力発電所の建物自体は一部の人間しか入れない構造である。
ボスがサラマンダーだけに炎熱系のモンスターが常駐で、耐熱、炎熱付与系装備がドロップ。
消防関係者も大喜びであろう。
送電線が宇宙人の優先回収対象だからな、各家庭までの電力網維持は厳しいかもしれないが、電力皆無という事態は避けられた。
周辺市町村の目は都市部に向いてるんで、他所の人間がウチの市に向ける目なんて「いざという時の避難先になるかな?」程度、注目は全くされて無い。
県庁所在地は宇宙人の襲撃食らったが、県の第二、第三の都市はまだ壊滅してない。
他所からの目が無い内に着々と市の重要施設のダンジョン化が進む。
大型ショッピングモールもダンジョン化候補。
各地の小中学校は初心者用、高校が中級者用ダンジョンになる。
あれこれ済ませてマンションに戻るとマンション前に疲れ切った顔の有馬が居た。
「初心者用ダンジョン、ガキばっかで疲れる……」
「『俺ツエー』系アホが出たか?」
「出た出た、まあ、あの世代だった頃に今みたいな力を手にしたら似たような事してたろうけどさ」
「僧侶居るんだし低級ポーションでもくっつくんだから、バカガキの腕の一本二本斬り飛ばしてやりゃいんじゃね?」
「いや、それは不味くね?」
「レベル上げてない人間なら簡単に殺せる力が身についちゃうんだぜ? それくらいしないと逆にダメだと思うがな?」
「酷い奴はボコってるんだけどな……」
「流血と部位欠損のインパクトには勝てないよ? 殺し殺されになる前に見せしめないと!」
「そうかなぁ……」
後日の話になるが、有馬の友人たちの中には有馬以上にバカにガチギレしてた奴も居たようで、俺の提案は実行に移され見事に効果を発揮したそうだ。
ビビッて有馬たちが近づいただけで漏らす奴も出てしまったようだが……。
ちょうど市役所の方から他の学校のダンジョン化に先立って、市職員が見学に来ていたのもナイスタイミングだったのだろう。
他の学校でも「そういう事が出来る」人間が指導に回るそうだ。
警察とかから出向かな?
警察は剣道の高段者が多く居るし、趣味で居合とかまで手を出してる人も居るからね、学校教師とかよりは向いてるだろ?
中級ダンジョンも利用出来るし、一般人に対して相対的強者で居続けることも、それほど難しくない。
(まあ、警官の中からもアホは発生するだろうから「謎の魔法使い」による見せしめもその内必要となるかもな?)
平和()な頃ならともかく、宇宙人の襲来で文明崩壊カウントダウンな現在である。
いきなり殺したりしないだけ、まだ温情と言えるだろう。
人権その他の権利なんて、国家が裏書してたから通用してただけで、国家が無くなりゃ誰も保証しちゃくれない。
脳みそが平和な時代のままの人間は頑張るか、生きるのを諦めてもらうしかない。
デモとか抗議とかやってる暇ありゃ、ダンジョン行って食い扶持稼いで来いってこった。
俺や有馬たちがあちこち駆けずり回らなくても済みそうである。
こういう決まったことを実行に移す場合、きちんとした組織は非常に強い。
外からの流入者や近隣の市町村に関しても、市長が切り捨てる気満々だから心強いね。
「余所の土地までダンジョン広げられません」って言った時、ニヤケかけたのを咳で誤魔化してたからな。
県の中央とか、他の市とか見下されて内心腹立たしかったとかありそう。
「……まあ、そんな訳だから、余所に住んでる奴で救済したい相手は、今の内にこっちに呼んどいた方がいいぞ、有馬! その内、物理的に余所との境界閉ざす気だぜ、あの市長。切羽詰まってからじゃ遅いからな?」
「お前は居ないのかよ?」
「大学とかの連中はなぁ、救け求められれば手を貸すくらいはしてもいいけど、わざわざ、こっちから何かする気はしないなぁ……安否確認とかも下手に確認して『既に死んでました』なんてなると流石に寝覚め悪いし……『シュレディンガーの大学時代の友人』確認するまでは死亡確定しないしってことで」
「俺にしても手助け程度だな、相手の親類だの、友人だの、際限無くなっても面倒見切れないし」
「外からの情報が少なくなって来てんのもある意味有難いな、下手に悲惨な光景見せられると日常生活に差しさわりがあるしな」
「元々、宇宙人来る前だって外国の戦争だの、難民だの知らん顔して生きて来たんだから、今更って割り切るか」
「もう、余所の県なんか外国みたいなもんだよな」
「最終的にこの市以外、どのくらい生き残れるんだろうね」
「北海道とか寒い地域は厳しいだろうなぁ」
「凍死の心配無くて農作物作れるトコならワンチャン」
「それも都市近けりゃイナゴの様に食い尽くされるだろ?」
「日本海側は中国や北朝鮮から難民来るかも?」
「それもあったか、佐渡島とか自給可能って聞いてたけど大陸に近いもんなぁ」
「余所に食料ダンジョンとか作ってもヒャッハー加速装置にしかならなそうでなぁ」
「宇宙人が撤退するまでは市の中で手一杯」
「てなわけで、帰ってアッコちゃんと遊ぶわ」
「俺は食料ダンジョン行って肉手に入れてステーキでも食うわ」
「じゃあな」
「おう、また」
一週間後、地元のテレビ局が宇宙人の襲撃にあったらしく、その日からテレビは砂の嵐しか映らなくなった。
なんか、ちゃんと知ってる人に聞くとおっかないことばっかりですねぇ、今の世の中
アメリカや中国やロシアの中に比べるとなんと日本の平和なことか
中国なんか、全然更新されなくなったり、消滅したりしたサイトが多い事