マンションをダンジョンに!
家に籠りっきりなんでそこそこ書けてます
初のダンジョンクリア、残念ながらアッコちゃんはカンストに至っていないため、再チャレンジ確定である。
パーティー組んだ状態なんで確認出来るが、シャレにならないステ値になってるんだけどな。
有馬の方もカンストして無いが、クリアのご褒美で手に入れたローブにご満悦なんで、再チャレンジに誘うのも簡単だろう。
1回ボスクリアしてるから、15階くらいまでは有馬1人でも無双出来るしな。
あのボスと1対1やったから、雑魚ゴーレムどころか空飛ぶ円盤と遭遇してもプレッシャーは感じないだろうし。
無双でいい気になり過ぎてMP枯渇はありそうだけどな?
今の有馬なら、魔法の有効射程に入れば異星人の母艦すら落とせる。
カンストしたら、空飛ぶための魔道具くれてやれば、この町くらいは有馬に任せて平気だな。
アッコちゃんはカンストしたら、おそらくあっちで戦った魔王と結構いい勝負になると思う。
さすが勇者だな。
ただ、ウチの両親、特に母親のダンジョンでの強化の重要性が高まった。
ウチの親たち、俺の在宅、不在に関係なしに俺のマンション来てはアッコちゃんと遊んでくからな。
強化しないとアッコちゃんの軽いネコパンチで死にかねない。
アッコちゃんのクリア報酬は小さなベルが2個付いた赤いリボン。
うん、ダンジョンの奴もなかなか分かってるな。
しっかりとアッコちゃんに似合うものを寄越した。
このリボン、状態異常を完全に防ぐ効果がある上に、小さなベルがそれぞれ、破邪と生命の力を持っており、アッコちゃんの通常攻撃に属性の上乗せがされる。
つまり、アンデッド系はアッコちゃんが近付いただけで浄化されるし、味方にすり寄ったり、ネコパンチしたりするだけで回復させることが出来る。
心だけで無く、体まで癒せるとか、流石、アッコちゃんだな。
早速、装備させると、どことなく得意気な様子。
気に入ってくれたようだ。
まあ、ボスクリアしちゃったから次のチャレンジは最短で8時間後。
あー、ボス部屋到達までの時間考えると、もっと短くて平気かインターバル?
ともあれそれまでは、色々と情報収集かな?
日本に宇宙人が来る前に、1回くらいは直接戦っておきたいとこなんだけどなぁ。
映像とかでもある程度正確に強さは分かるけど、あっちで戦った相手でもこっちより格下でも苦戦させられた相手も居たし、そもそもが初期の俺なんか魔王配下から見て格下だったしな。
実際に戦ってみるまで本当のトコは分からない。
あとなぁ、おっかないのが自爆系。
本来のレベルやステを遥かに超えるダメージ寄越すからな、あれ。
あっちで死にそうな目にあったのの7割方が自爆攻撃だったからな、マジで。
魔王配下の場合、自分の意思と関係なく、上位者の権限で自爆させられたりするしな。
自分の意思での自爆なら、追い詰められてとか、仲間なんかを逃がそうとしてとか、状況からある程度こっちも予測出来るけど、上位者の権限だと普通に戦ってた相手がいきなり爆発したりするからなぁ、予測は直感鍛えるしかない。必死で鍛えたけどさ、直感。
だって、死ぬもんマジで、上級ポーションでミンチ状態から回復ってのも実体験。自爆くらって右半身ミンチ+大火傷のハンバーグ状態からあっさり回復したからな。
痛かったけど痛みにうずくまってたら、他の連中から追い打ちくらいかねないし、やせ我慢がスキル化するくらい頑張った。
魔王も3層構造で倒す度に小さくなったけど、外殻削り切るごとに自爆だからね。
それまでに貯めた上級ポーション8割方使い切っちゃったから、下級や中級に比べるとストックが心許ない。
平和な日本に帰って来るつもりだったから、その辺気にせず、残った分も必要な相手いたらあげちゃってて更に減ったしなぁ……。
ともあれ、お疲れ。
爺ちゃん勝手に入ったりしないと思うけど、気を付けといてくれな、俺はいったん家に帰るわ。
◆◆◆
今、俺が住んでるマンション。
オーナーは中学の同級生の和田の親父さんだ。
なんでか知らないが俺は妙に気に入られてて、和田とは別の高校になってほぼ交流が無くなったにも関わらず、高校時代に出荷のバイトに誘ってくれたり、町で出くわすと喫茶店なんかでコーヒーや飯を奢ってくれたりしてた。
ここ借りた時も、不動産屋通しての契約だったんでオーナーが和田の親父さんって知らなかったんだけど(「あれ? ここ和田ん家の畑あったトコじゃなかったっけ?」とは思ったが、売り払った後に業者とかがマンション建てたのだと思い込んでた)、「水臭いなぁ、言ってくれりゃもっといい部屋融通したのによ」と敷金、礼金返してくれた上に就職祝いまで頂いてしまったのだ。
そんな縁も恩もある相手だ。
この先、宇宙人がこの田舎町にやって来た場合、駅や線路などの鉄道関連、信号機、電柱、電線などと並んで真っ先に狙われるであろうこのマンション。
結界とかで守ることも可能だけど、この際、ダンジョン化することで守ってしまってもいいのではないかと考えているのだ。
ダンジョンはクリアしない限り破壊不能だ。
俺の部屋をボス部屋にしちゃって、移動不能系ボスを設置し、マスター権限で出入り可能な人間を設定して許可した人間にはボスから攻撃させない様にし、ダンジョン自体はノービスレベルにすれば住人への影響も少ない。
最下級ダンジョンの雑魚の場合、一般人の子供でも1対1なら素手でも楽勝。
雑魚ゴーストなんか塩まけば死ぬしな。
たまにアイテムも落とすし、転職無しでもレベル5くらいまではあっさり上がる(レベルの上昇速度はクラス持ちよりクラス無しの方が速い)し、その程度でもレベル1の人間よりは死に辛い。
まあ、電線とか発電所とか余所がやられると、電気に関しては使えなくなるんだが……。
それでもいざという時の避難所とかにはなるし、現時点での俺が交渉して建物のダンジョン化の見込みが多少なりともある場所なのである。
それにアッコちゃんをお留守番させたりする時にも、ダンジョン化済みなら安心出来るしな。
◆◆◆
和田の親父さんからの承諾は得たが住人への告知をマンションの自治会で行ってから実施するとのことで、俺も自動的に自治会に参加の運びとなった。
この時に参加者の中での希望者に転職を行うことにもなっている(女神の承諾も得た)。
事前に親父さんだけ転職させることも可能だったのだが、「その場で俺が転職して見せた方が住人たちもその気になり易いだろうしな、ちょっと興味あるけどお預けだ」と笑っていた。
自分で言うのも何だが荒唐無稽な話だし、有馬の様に実例を見せた訳でも無いのに信じて貰えるのは有難い話ではあるが、その根拠不明の信頼がどこから来るものなのか、こう「買い被られ過ぎてるんじゃ?」といった不安を感じたりもする。
親父さんとの交渉を終えるとその足で実家に顔を出した。
ウチの父はこんな状況でも出勤してて不在。
母には色々なアイテムとかを見せて、なんとか俺が異世界帰りだということは理解してもらったが、ダンジョンに入っての強化は渋られた。
……が、「アッコちゃん強くなっちゃったんで、母さんたち強化しないとこれから遊べなくなるよ」と言ったらあっさり前言を翻した。
流石、アッコちゃん、下手な俺の説得なんか必要無かったぜ!
流石に明日は父も休みということで、2人は明日ダンジョン入りだ。
有馬に電話をすると爺ちゃんはダンジョンに乗り気だそうだ。
爺ちゃん、俺たちがやってたテレビゲーム、こっそりやってたりしたからな。
アニメとかも一緒に見てたことあるし、ウチの親なんかよりそういうものへの理解度は高い。
有馬の両親は有馬の説得には肯かなかったが、爺ちゃんが強権発動して承諾させたそうだ。
こちらは明後日のチャンレンジとなるらしい。
まあ、1回ボスチャレンジ済ませれば、後は適当な階層までの往復で自力でのレベルアップも可能だしな。アッコちゃんはともかく、有馬の補助も期待出来るし、身内、友人レベルまではなんとか手が回りそうだ。
家に帰り、テレビを点けっ放しにしてネットで情報収集。
民放はこんな時までお笑い芸人やらアイドルを出して喧しいのでNHK固定。
政権批判なんかどうでもいいから、正確で即時性のある情報寄越せよ!
ネット中心で集めた情報によれば米軍は海外に駐留、展開している部隊を除き、ほぼ全滅。
海外に居る部隊もEUでは完全に異星人との交戦状態で、このままだと海軍と海兵隊しか残りそうもない。
異星人との戦闘はこちらの攻撃は全く通じず、異星人側が搭乗員を全く考慮せずに兵器を解体するというもので、歩兵は現状では相手にされていない。
時々出る怪我人は跳弾や誘爆、誤射によるもの。
SFなんかで良くある光線兵器みたいなものとか異星人は全く使用していない。
これ地球側の認識は戦闘だけど、あっちは単なる作業だよな。
攻撃とかしない方がまだマシに思えるけど、国家による軍隊の役割を考えると戦わないわけにもいかない。
国民の安全と財産の保全、それを脅かす者の排除。
安全は単純に逃げればその場は確保されるが、財産の基盤となるインフラや産業が壊滅しては現金も有価証券も意味が無い。
そうこうする内に、中国とロシアが自国内の異星人に対し、核を使用したという未確認情報が入って来た。
通常、こうした情報の裏付けとなる米軍の発表は、米軍がほぼ壊滅した現状では無理な話で、もしかすると「あの国ならやりかねない」程度の噂が膨らんだものの可能性も否定できない。
どさくさ紛れの他国への侵攻は起きていないが、北朝鮮やイランはやりかねないとネット界隈ではもっともらしい噂が飛び交っている。
日本国内は都市部を中心に買い占めパニックが加速している。
多くの製品、商品が輸入に依存しているため、今後、不足すると予測される品目などがネットや口コミで拡散、抑制するための情報を流すべきマスコミは逆に視聴者の不安を煽り混乱を加速させている。
なんとか政府は機能しているが、今後、どうなるかの予測は難しく、よしんば予測が立ったとしてもそれに対する対策は予測より遥かに難しい状況だ。
輸入が困難というかいずれゼロになるだろうと予想れる石油や天然ガスの穴埋めとして、現状、停止されている原子力発電所の再稼働が検討されているが、稼働状態の原子力発電所が異星人の攻撃を受けた場合その被害がどうなるかという問題もあって、与党内でも反対派の声が聞かれる。
「これ、みんな踊らされ捲ってるけど、政府は首都機能の移転とか拡散とかすでに動き始めてる気がする。主要都市への被害はもう避けられないだろ? 目端の利く奴は自主的に疎開始めてるし、その内、この町にも来るんじゃないの? 大学の時の奴らが俺頼りに来ても困るぜ?」
などと独り言を言いながら「まあ、俺はなんとかなるけど、アッコちゃんの食事は大事だよな」と隣の市の大型モールへカリカリと猫缶とちゅーるの買い出しに出かける俺であった。
あ、アッコちゃんはお留守番よろしくね!
皆様もお体に気を付けてお過ごしください