第2章 holiday(新たな出会い!?)
(わ、もう真っ暗だ !)
芹七が新宿伊勢丹を後にしたのは、6時を過ぎた頃だった。
久しぶりのゆったりとした休日。何をしようか、誰と過ごそうかさんざん迷ったあげく、家を1人で飛び出したのはお昼前だったはずなのに…。
(ショッピングは1日がかりになっちゃうよ☆)
さすがに、ブーツをはいた足が痛い。
この時期の、この時刻の新宿は苦手だ。
ヒヤリと肌寒いはずなのに、やたら人の気配だけがムンムンしていて、見えなくてイイものまで、見えてしまいそう。
キャッチとナンパを不機嫌そうに交わしながら、芹七は改札につながる地下道を真っ直ぐに進んでいた。
バタバタ バタバタ
後ろから、全力疾走するかのような足音が響いてきた。と思うと、突然、誰かに後ろから体当たりされる。
「きゃっ」
両手いっぱいの荷物がバランスを崩し、疲れていた膝は悲鳴をあげ、芹七はそのまま豪快に前に転がった。
「わ、ごめん! 君、大丈夫?」
蛙のように見事にペシャンコになった芹七に合わせて、アスファルトに両膝をついて、顔をのぞき込んできた青年。
その男の子の睫毛の長さと、あくのない可愛らしい顔立ちにドキッとする。
(小池徹平くんみたいな子だ…)
爽やかで笑顔の似合う、正統派な感じのその子は、潰れていた芹七の脇をヨイショと支えて、どうにか立ち上がらせてくれた。
「ケガは…ないみたいだね。良かった」
視線が近い。
紫己や蒼みたいな長身の男の子に囲まれている芹七にとっては、新鮮な距離だ。
(顔、ちっちゃいな…)
小柄なのにバランス良く見えるのは、きっとそのせいだと思う。
今時っぽいカジュアルなファッションに、ラフに巻かれた赤いマフラーが印象的だった。
「あ、でもチュニック、ちょっとひっかけてる…」
芹七のふわりとしたレース素材の袖口を指差して、彼は表情を曇らせた。
「あ……(-"-;)」
「ゴメンナサイ、おれが…」
「ううん、イイです。貰いものだし」
小動物みたいに潤んだ瞳に、怒る気になんてなれなかった。
「…でも、それANNA SUIの新作で日本未発売のだよね…」
「え、そうなの?」
(知らなかった…。しーちゃんが普通にくれたやつだったから…)
「何かお詫び、させて!!」
「大丈夫です、ホント。もう帰るだけだし」
「そっか、じゃあ……」
彼はしゅんとしてそう呟くと、芹七の頬に右手をそっとあてて、優しく軽いkissをした。
その間わずか3秒。
あまりにも一瞬の出来事に、芹七はただ立ち尽くす。
「それじゃあ、またね☆」
彼が爽やかに手を振って姿を消してもなお、頭と体がちぐはぐで動けない。
確かに、ちょっと可愛い男の子だった。
好きな人も、今は特にいない。でも、でも……
(天然……!?)
(*≧m≦*)
あまりにも衝撃的なファーストキスに呆然としながらも、帰り道、誰かの顔が思い浮かんでいた。
〈続く〉
ご覧頂きありがとうございます☆
この作品はリクエストなども頂きまして、ストーリーを作っております。
今回は章と章をつなぐ、番外編みたいなものでした。
次回は2章本編スタートです☆
またぜひ、お付き合い下さいね!