8話 新たな仲間
「みんなあんたに命乞いしたんすよね?それでもあんたは全部殺してきたんじゃないんすか?」
「殺した?人聞きの悪いことを言うな」
「誰が喜んで弾丸になるって言うんすか?」
そう言って狩人らしく弓を構えるニーナだった。
「ひっ!」
それを見て涙を流し始めたエドワード。
「あなたはここで死んでください。あなたにできることはそれだけです」
俺が黙って見ているとアナが矢の先に火を灯す。
「や、やめろ!撃つな!」
「弾けろ」
だが彼女は黙って矢を放った。
飛来する矢はやがて粉塵爆発を起こした。
ドカーン!!!!
耳が壊れるのではないかと思うくらいの爆発音がここまで響いてきた。
「煙がすごいですね」
アナの言葉に答える。
「あれだけのバクエンフンを撒いたからな」
「………煙晴れたっすね」
ニーナの言葉でそこを見た。
「すごいな。あれだけの爆発で原型を留めているなんて」
近付きながら声をかけてみる。
風は不思議と止んでいた。
「ぐぅ………くそ………」
「まだ生きてるんすか。しぶとい人っすね」
「………爆発ってこんなに痛かったんだな………」
エドワードが呟いた。
「今更っすか。貴方が爆発させてきた人達も同じ思いしてきたんすよ」
「すまなかった………」
涙を流し始めるエドワード。
「俺は………堕ちる所まで墜ちたらしいな」
「そうみたいだな」
剣を抜くと逆手に持って切っ先を奴の喉に向けた。
「ガキ………風水士の癖にやるな」
「そりゃどうも」
「俺からの最期の頼みだ。風林火山を………シュライを止めてくれ」
「言われなくてもそうするつもりだ」
そう言ってエドワードを倒す。
「さぁ、行こうか」
何も言わなくなった男を見てから俺は2人を連れて奴隷達の方に向かうことにした。
「やぁ、こんにちは」
その時だった。
「誰だあんた」
上の階層から降りてきた人物がいた。
男だ。
緑色の髪に緑の瞳をした男。
「そう身構えないでよ」
「………」
「僕の名前はウィンドゥ。見ての通り風属性使いだよ」
「見ての通りってなんすか」
くすくす笑い始めるニーナ。
どうやら笑ところだったらしい。
「突っ込んでくれてありがとね。見ての通りで納得されたら逆に困っちゃうところだから」
男も小さく笑う。
それから俺を見る。
「君がこのパーティのリーダーかな?」
「リーダーは決めていないがまとめているのは俺だ」
「いや、なに下の階から凄い爆発音が聞こえてね、降りてきてみたら君とそこの男が戦っていたとこだったね」
そう言って俺を真剣な目で見てくる男。
「取引しないか?」
「取引?」
「僕もこの風の螺旋を攻略してるんだけどさ。見ての通り僕は風属性に極振りだ。そのせいもあって雑魚戦すらきついんだよね」
ウィンドゥがそう語った。
確かにこのダンジョンに出る敵に風属性はお世辞にも相性がいいとは言えない。
耐性があるからだ。
「今君ら風の影響受けてないでしょ?それは僕の魔法のお陰なんだけど、でここからが取引。僕は君たちに同行して加護を君たちにかけ続ける。で、君たちは僕の代わりに敵と戦う。そうして上層を目指す。こんな感じだけどどう?報酬は君らが9割、いやむしろ10割でいいよ。僕はただこのダンジョンの上に上がりたいだけだからさ」
先に進む分には確かに俺の能力でも上がれるが、風の無効化はでかいか。
なら
「分かった。その条件で同行してくれるか?」
「分かってくれて助かるよありがとう」
「よ、よろしくお願いします」
緊張しながらそう挨拶するアナ。
3人が話し始めたし俺は奴隷たちのほうに向かうことにした。
「助けに来たよ」
「助けに?」
「あぁ。もう君らを困らせるやつはいない」
そう言って手を差し出す。
「エドワードは倒した。君たちを街に返すよ」
「あ、ありがとうございます」
「ありがとうお兄ちゃん」
口々にそうお礼を言ってくれる。
そんな彼らを引き連れていくことにする。
「よーっしいっくぞー」
子供のように次の階層をめざして階段を駆け上がっていくウィンドゥ。
「ん?」
その彼が何か落とした。
「羽?でも何の?」
※
━━━━風の螺旋20階層セーフエリア
転移結晶と呼ばれる人や物、あらゆるものを転移させられる結晶を使って奴隷達は1度ギルドに預けた。
そしてもう一度螺旋の攻略を再開する。
のだが先に聞いておくことにしよう。
「ウィンドゥは何を求めてこの螺旋に挑んでるんだ?」
「気になるかい?うーんそうだよね。話しておこうか。僕はね【風の魔石】を集めてるんだ」
「風の、魔石ですか?」
アナが聞き返すのに頷くウィンドゥ。
「そう。風の魔石、知ってるよね?」
「ダンジョンの力を受けて育つ魔石とかそんなものだったよな?」
「そうそう。ここの風はここのダンジョンボスが起こしてるものだからその魔力が魔石に溜まるんだよね。で、それがまた上質で風属性使いには堪らないものなんだよね。あっ、知ってたら長々と説明ごめんね」
「いや、別に構わない」
「そう言って貰えると助かるよ」
にっこりと笑うウィンドゥ。
「たしか、上の方に行けば行くほど質が高まるんだったか?」
「そうだね。ダンジョンボスはここに限らず上の方にいるって聞くし登れば登るほどその魔石の質は高まるよ。より直に魔石はボスの影響を受けるからね」
「それが欲しいってわけか。なるほどな。ここのモンスター達は風属性は通りにくいしな」
「そうそう。それで僕ソロじゃ無理だって思って組んでくれる人探してたんだよね。それで見つけたのが君ってわけ」
なるほどな。話は分かった。
「次は君の話を聞かせてもらえるかな?カイム」
「俺達はこの螺旋にかけられた報酬を目当てに潜ってる」
「それだけ?」
「後は風林火山ってパーティの奴らを【事故死】させるためだよ」
「へー。何かあったのかい?」
今までの経緯を説明する。
「なるほどね。それは悪いパーティだな」
「簡単に言えば復讐だ。今まで散々な目に合わせてきたから倍にして返すってだけだな」
「事故死させる、かたしかに着眼点いいよね。それを君も利用するってのは賢いね」
彼は話してくれてありがとうと言って俺を見てきた。
「話は分かったよ。君は復讐、僕は収集ってわけか。何だかシンパシー感じるねよろしくね」
「そうだな」
お互いの話も分かったことだ。
先に進まないとな。