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5話 再びダンジョンへ

「できたっすよー。カイムカイムカイムー」


 俺が宿に戻ったところニーナがバクエンフンを包み紙に包んで持ってきてくれていた。

 その数


「えーっとこれで何個くらいなんすかね?ってか足りるっすかね?」


 俺は逆に聞いてみることにした。


「いくつあると思う?」

「えーっと48くらい?」


 俺は紙包みを一先ず10個縦に並べた。

 そしてそれを10回繰り返した。


「これで100ある」

「え?100もあるんすか?!」

「それにプラスで6だな。合わせて106」

「これでそんなにあるんすか?」


 そう言って数え始めた彼女。


「本当に106だったっす………あんな一瞬でどうやって数えたんすか?カイム。私ならぐちゃぐちゃで絶対何回も数え直してたっす」

「私も聞きたいです。私も1,2,3,4って数えてる内に絶対間違えちゃうのにカイム様は直ぐに数えていました。どうやったのですか?」


 ニーナとアナが聞いてくる。

 ふむ。いい機会だし話しておこうか。


「九九ってものがあるんだ」

「カイムそんな笑い方するんすねー」

「でも今どうして笑ったのですか?」


 俺の言っている九九と彼女たちの考えてるものは違うらしい。


「九九だ。九九。笑ったわけじゃない」

「なんすかそれ」

「何なのですか?」

「かけ算ってやつだよ。例えば10個で1セットのものが2セットあれば20個。その計算を簡単にするためのものだよ」

「かけ算?」

「かけ算………ですか?」


 2人が顔を見合わせる。


「聞いたことあるっすか?」

「ないです」


 ふむ。かけ算というのはたしかその手の計算を必要にするやつしか使えないという話は聞いたことはあるな。

 俺は紙に九九を書き出すと2人にそれを渡した。


「それは暗記してくれ。それを暗記してくれたらかけ算は何とかなるから」

「えー無理っすよーこんなの」

「そうですね。多いです。私には暗記なんて無理ですよ………」 


 そう言われてしまえば何も返す言葉もないな。


「それにしても凄いっすねこんなことも知ってるなんてカイムは」

「そうです。カイム様って凄いですね!憧れちゃいますよ!」


 まさか趣味でかじっていた本で学んだことでこんなに褒められるなんて思わなかったな。


「とにかく、今日はカイムが頑張ってくれたので私が背中洗いますよー」

「背中を洗うのか?」

「嫌っすか?洗いにくくないっすか?背中」

「いや、別に嫌ではないが」

「それなら行くっすよ。ほらアナもアナも」

「わ、私もですか?!」


 何故か3人でシャワールームに行くとになってしまったらしい。



 シャワーを浴びた後俺はベッドの上に横になった。

 だがその横でモゾモゾと動く影があった。


「その………昨日はありがとう」


 ニーナが俺の横で寝ていた。


「何だ急に」

「………私狩人としてダメでいつも煙たがられたんすけどでもカイムは迎え入れてくれたから」

「そんなことか。俺もそんなもんだったよ」

「風水士だともっと酷そうっすよね」


 軽くはははと笑う彼女。


「私は何をくよくよしてたんすかね。カイムはもっと大変だって言うのに」

「別に苦労ってのは誰かと比べるもんじゃないだろ?自分が苦労してると思えばしてるし、辛いと思えば辛い。そこに大小なんてない。誰かと比べて自分の問題なんて大したことないからくよくよしてちゃダメだって話にはならない」


 そう言うと彼女は瞳をうるうるとさせ始めた。


「カ、カイム………なんて優しいんすか………」


 そう言って胸に飛び込んできたニーナ。


「辛かったんだな」

「はい………私カイムに一生付いていくから………」


 涙を流しながらそう言ってくれる彼女だった。


「俺は構わないから好きにしてくれ」

「ありがとう」



 次の日俺たちは早速風の螺旋、そのダンジョンの前まで来ていた。

 一応明らかな自殺志願者を止めるためにギルドの警備がいる時間もあるが今はいない。

 早朝だから、だ。


「別に不法侵入という訳では無いが。少し緊張するな」


 2人の前で呟いてみた。


「それはそうだと思います。風の螺旋は最高難易度を誇るダンジョン何ともない人なんて存在しませんよ」


 そう言ってくれるアナ。

 そうか。


「私も緊張するっすけどでもカイムがいてくれたら何処まででも行けるっすよー」

「そりゃありがたい話だな」

「でも、3人で突破出来るでしょうか?風属性使い、いませんよね」

「そうだな。この風の螺旋の攻略はセオリー通りなら風属性使いが必要だな」


 このダンジョンでは激しい風が吹き荒れている。

 その影響を人間はもろに受けてしまう。

 そのため暴風から守ってくれる結界を使える魔法使いを編成しなくてはならないのだが。


「まぁ無理だな。底辺パーティに入るメリットがないし俺で我慢してくれ」


 この村ではまずフリーの風属性使いは見つからない。

 理由はこのセオリーを知った高ランクパーティが勧誘するからだ。

 だが他の街に行けば誘えるというものでもない。

 このダンジョンが人気だから高位の魔法使いは常に何処かしらのパーティに所属している。


「さて、行こうか」

「そうっすね。ちょっと不安すけど………頼みましたからねカイム」


 俺の手を取ってくるニーナ。


「俺が守ってやるから」

「カイム………」

「何いい感じになってるんですか?!そこ!私もです!」


 何故か反対側の手を繋いでくるアナだった。

 だが拒む理由もない。

 そうしながら俺達は誰にも見つからないように風の螺旋、その内部へと侵入していく。


「今日も今日で凄いな」


 相変わらず暴風が吹き荒れていた。

 ビュオオオオオオ!!!!!

 ゴオオオオオオオオオ!!!!!!

 そんな音がこの1階層まで聞こえてくるほどの風だ。

 

「凄い音ですね………」

「これを聞けば嫌でも風属性魔法使いの加護が必要なのが分かるな」


 この1階層では風は吹き荒れていない。

 2階層以上で吹き荒れているのだがそこの音が聞こえるほどの風だ。

 今からそんなところを登るのだ。嫌になってくるな。

 しかし


「さ、行こうか」


 2人が頷いたのを確認して俺はフロアの移動を始めた。

 俺のリベンジが今始まろうとしていた。


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