33話 夢
マグルスが去ってから俺はナナに声をかけられた。
「あ、あのカイム様」
「どうした?」
「その飛空船に一緒に乗って欲しいんです」
「飛空船にか?」
「はい。そのちゃんと動くかどうかの確認なども行いたいのです」
「そういうことならいいよ」
そういう事で俺はナナと一緒に飛空船に乗り込むことにした。
「初めて乗る時はカイム様と一緒にって決めてたんです」
「そうだったのか。それは嬉しい話だな」
「はい。だってカイム様は私に全部くれたお方ですから」
そう言って微笑む彼女。
「こうして空の上からだと色んなものが見えますよねー」
「そうだな」
そうしてナナと試しに乗ってみた飛空船だがやがてその時間も終わるものだった。
「今日はそのありがとうございました」
「礼を言われるほどのことでもない」
「それで色々考えたんですけどやっぱりこの1号は売りたくないです」
「そうか」
「私とカイム様とで作り上げたものですから」
そう言って微笑む彼女。
「でも次からのものは売りたいと思っています。乗ってみて確かに思いましたが他の飛空船と比べて揺れも少ないですし、色々なところで既存の飛空船の性能を大きく上回っている、と感じました」
「それはありがたい話だな」
「でも、それだけのものなんですから私達だけで独占するのもなと感じたので、次のものからは売りたいと思っています。そうすれば皆さん幸せになれますよね?」
「そうだと思う。今よりも気軽に移動も楽になるかもしれないしな」
「ですよね。ならば後は作り続けるのみですよね。稼いだお金はカイム様に渡そうと思います」
「別に自分たちの物にしていいんだぞ?」
「いえ、私は頭が良くないので、カイム様に管理などをお願いしたいんです。私じゃ最悪騙されて全部持っていかれそうですし」
そう口にした彼女。
「分かった。俺が預かるよ」
そう言ってナナの頭を撫でてやる。
「もう少し一緒にいてもいいですか?」
「あぁ」
※
マグルスに全て話した俺はアリスと共にギルドで話をしていた。
「カイム。あの子達どうするつもりだ?正直言うとな。私達もそろそろ予算的に厳しくなってきてな」
アリスにナナ達の今後について聞かれた。
「孤児院を作ろうと思うんだ」
「孤児院………?」
「親を亡くした孤児達を引き取る施設だよ。そこにナナ達みたいな子を集めて育つまでは面倒を見るようなそんな施設」
ナナが口を開く。
「私はカイム様について行きますから」
「そうか。なら頑張らないとな」
「はい。頑張ります!」
その言葉を聞いてアリスは口を開いた。
「だが施設を作るとなると維持費もかかるだろう?」
「そこは暫くは造船で賄うつもりだよ。あの飛空船はかなり価値のあるものらしいしな。恐らく売れるはずだ。自分たちで物を作り売って生活費を得る。世の中の仕組みを知るためにも悪くないものだと思うが」
「確かに、悪くはなさそうだ。というよりそんなこと考えてたんだなカイムは。やはり君は………」
「俺は、何?」
「まだ若いのに偉いなと思ってね。ここまで考えている人などそうはいないだろうね」
クスッと笑うアリス。
「私なんかはアイム殿にいいように扱われていただけだし」
俯くアリス。
「そう落ち込むなよ。次は一緒にあいつを崩そう。俺もこのまま使われているつもりはない」
「そうだな。一緒に………なんとかしよう」
そう言ってくれたアリス。
そんなことを話していた時だった。
「カイムさん!カイムさん!」
1人の村人が会話に入ってきた。
「どうしたんだ?」
「シュライの野郎がこんなものを!」
そう言って手紙を渡してきた男。
その名前に嫌な予感を覚えながらも開いた。
『ゴミ野郎が。俺は風の螺旋にて待つ。早く来いよ』
それだけ記されてあった。
「何だこれ」
「シュライは奴隷達を連れていきました。『俺はまだ終われねぇ!真なる底へとたどり着く!』と言っていました。恐らくさらなる深層があると思っているみたいなんです!」
「そんなものあるのか?」
アリスが尋ねてきたが。
「いや、あのダンジョンは僕のいた50階層が最上階。それ以上はないよ」
答えたのは俺ではなくかつてのダンジョンマスターだったウィンドゥだ。
「いつからいたんだって聞くのは野暮か」
「今はそんなことどうだっていいからね。それに早くしないと奴隷達の命が危ない。そうだよね?」
ウィンドゥの言葉に頷く。
「螺旋は攻略したとは言え依然として危険なままだ。早く助けに行かないと」
「今の僕には完全なマスターとしての権利はないけれど魔法くらいなら使える。カイムは仲間に声をかけてきてくれ。後でダンジョン前で落ち合おう」
彼とそう言葉を交わして俺はとりあえずアナ達を呼びに行くことにした。
※
「よし、集まったね」
仲間を呼んで俺はウィンドゥと共にダンジョンの入口まで来ていた。
しかしその時だった。
「何かおかしいね………」
そう呟いたウィンドゥ。
「何がおかしいんだ?」
「風が………呼んでる………」
「どういうことだ?」
「この先は僕の知ってるダンジョンじゃない」
そう言って俺を見るウィンドゥ。
「この先はこれまでの風の螺旋じゃない可能性が高い。それでも行くかい?」
「行くに決まってるだろ」
「そうっすよ。行かなきゃ………あんな悲劇繰り返しちゃいけないんす」
俺の後に力強く答えたニーナ。
そうだ。
もう許しちゃいけない。あんなことは。
「分かった。でも約束して欲しい。危険を感じたら直ぐに離脱しよう。この先は………様子がおかしくなってる」
「どういう風におかしいんだ?」
「はいれば入れば分かるよ。さぁ」
先導してウィンドゥがダンジョンの中に入っていく。
俺たちも顔を見合わせながらもその後に続くことにした。




