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30話 二回目の踏破

『ふはははは!ゴミが!風水師が!貴様の力はその程度か!』

「ちっ………」


 あれから何の進展もしないまま時間だけが過ぎていた。


『そら!そこだ!』


 鋭い水の槍の一撃。

 それが何度も放たれていた。


『あーくそ………イライラするな』


 しかし、だからこそ動かない戦況にイラつきを感じ始めたらしいアクア。


『いいぜ。そこまで避けるのなら全て━━━━終わらせてやるよ』


 アクアがそう言うと体を開いた。


『こいよ。全てをのみ込めよ』


 そう告げた次の瞬間壁が無くなったかのように水がフロア内を浸しにくる。


「くるぞ!シャクネツセキ隊用意」

「「「「はい!」」」」


 ナナを始めとした奴隷達がそう返事をしてくれる。


『あぁ?シャクネツセキ?そんな火のゴミで何が出来るって言うんだよ!』


 奴がそう言っているあいだも水位は上がる。

 そして


「今だ!石を投げろ」

「「「「はい!」」」」


 皆がシャクネツセキを投げてくれた。

 そしてそこに


「いっけぇ!」


 ニーナが火矢を放った。


『はははは!!!無駄無駄!!ゴミがどれだけやってもこの神である俺には届かない!とち狂ったか?風水師!例えどれだけの炎だろうが海水は全てを消す!海の藻屑となるがいい!!!』

「ふっ」

『何がおかしい!やはり勝負を捨てたか?』

「いや、俺たちの勝ちだ。風王結界」


 全てを阻む風属性の障壁を貼った。

 その後にドカーーーーーン!!!!!!

 凄まじい爆発が起きた。


『な、なんだこりゃぁぁぁぁぁ!!!!』


 それはこのダンジョンを揺るがす程の大爆発。


『ぐぅぉぉおおおおおおお!!!!!熱い!体が焼ける!!!!』


 その爆発の中断末魔のような声が響いたのだった。

 そして凄まじい爆発で俺たちの視界は遮られた。



『はぁ………はぁ………』


 壁も元に戻り海水も引き爆煙もどこかへ消えた後そこに残ったのは無傷の俺たちと色々な部位を失っているアクアだった。


『死ぬかと思った………』

「よく生きてたな」


 俺は風に乗り近づくとそう声をかけた。


「あの爆発で生きてるとはな」

『あの爆発は一体なんだ………火は海水で消せるだろうが』

「水蒸気爆発だよ。極端に温度の高いものに海水が触れて気化することで起きる爆発だ」


 俺は風の剣を生み出してアクアの胸に突きつける。


『………なら俺があの時にやった事はお前の思うつぼだったってことか?』

「そうだ。あの瞬間を待っていた。お前が焦れて俺を強引に仕留めに来るのをずっと待っていた。お前の性格を考えれば強引に来るだろうことも分かっていたからな」

『初めから風水師………いやカイムお前の手のひらの上で踊ってたわけか。人間のくせに………大した奴だよ』


 ゴロンと顔を天に向けて寝転ぶアクア。

 それを見て俺も剣を収めることにした。


『………やらないのか?』

「別に。伝承通りならお前がいなければここのダンジョンマスターになるのは俺だ。そんなことはしたくないからな」


 そう言うとアクアの目を見た。


「これからもこのダンジョンにいることだな」

『………いいのか?俺はまたお前たちを滅ぼしにかかるかもしないんだぞ?』

「その時はまた沈めてやる」

『くくく、ふははは。面白いやつだな』


 そう言って笑うアクア。


『気に入ったカイムとやら。このダンジョンの宝である水神の証を持っていくがいい』


 そう言うと顎で奥を示すアクア。


『悪いな。指が消し飛んでこんなことしか出来ない』

「気にすんなよ」


 そう言ってあの時と同じように俺は証を手に入れた。


『はぁ………はぁ………』

「痛むか?」

『当然だ。だが頭は冷えた。これ程清々しい気分は初めてだ。礼を言うぞカイム。お前は人間界で1番偉大な存在だろう』


 そうだろうか?それは言い過ぎではないかと思うが。


『俺を倒したお前なら次のダンジョンも踏破できることだろう。先へ進めカイム。俺はお前の活躍を楽しみにしている』



「凄かったですよねぇあの時のカイム様」

「そうですよ。カイムさんは凄いんですから」


 ナナとサーシャが俺の話をしていた。


「流石はカイム様ですよね」

「そうっすよ。あそこまでの作戦を思いつくなんてカイムじゃないとできなかったっすよね」


 アナとニーナはそう言いながら俺に抱きついてきた。


「変わらないよねカイムは。ずっと頭を回して誰よりも確実な勝ち筋を見つけてくる」


 そう言っているマリー。


「そうか?俺はただやれる事をやっているだけだしな」

「それが凄いんだよ」


 アリスは少し呆れたような顔をしていた。


「君は自分がどれだけすごいことをしているのか実感してないのか?」

「別に凄くないだろ」

「いや、凄いことだよ。だって、あんな作戦で何かを倒したなんて記録ないからね。それを考えるとカイムが初めて行った作戦というのもやっぱり多い。本当に凄いことだ」


 そう言われてもやはり実感が湧かないな。

 そんなことを話しながら街を歩いていた時だった。


「すまなかったな風水師………いやカイムさん」

「俺も悪かったカイムさん。あんたは俺たちの村を救ってくれたんだな」


 いつか出会った村人たちが俺にそう言ってきた。


「風水師だからって酷いこと言ってすまなかったよ。本当にありがとうカイムさん」

「あなたは英雄だよカイムさん。できればこの村にいて欲しいくらいだ」

「それは無理だろうな」


 答える。

 だって俺にはまだまだやる事は残ってるだろうし。

 それこそ


「おい、ゴミ共!俺の帰還だ!」

「は、はい!」


 大声で叫ぶシュライの周りに集まる奴隷達。

 俺は彼らを解放しなくてはならない。


「おせぇんだよ奴隷の分際で」

「す、すみません!」


 奴隷をぶん殴ったシュライだが俺の方に近寄って来た。


「今回も俺様の栄光を掠めとってくれたらしいな?クソゴミが」


 ちっと舌打ちして去っていくシュライ。

 とにかく


「王国に戻るか」

「そうだな。だがその前に今日は疲れを癒すべきだな」


 とアリスが口にしたのに頷く。


「とにかく色々あって疲れたな。みんなもご苦労さまだ」


 今日はみんなもゆっくり休ませてやろう。

 そう思った。


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