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3話 新たな仲間が増えた

 階下に降りた俺達の目に入ったのは少女と男の言い合う姿だった。


「ニーナそれは違う」

「何が違うんすか?明らかに不当じゃないっすか」


 今にも掴みかかりそうな少女の手をとりあえず掴むことにした。


「何が起きてるのかは知らない」

「なら黙ってて欲しいっす」


 俺の手の拘束を離れる彼女。


「言わせて欲しい。手を出せばお前が不利になるぞ?」

「ぐぬぬ………」

 

 それで手を下ろす少女。

 

「兄ちゃん分かってんじゃねぇか。いやぁ利口だな。まるで奴隷のように」


 男の言葉を否定はしない。


「でも、私はこの男を殴らないと気が済まないんすけどー」


 また手を振りあげようとしていたがやめさせる。


「頭を使ってくれ、ここで手を出せば終わりだぞ?」

「………」


 黙って手をおろしてくれる。


「報酬払って欲しい。私が頑張って働いた分だけきちんと払って欲しい」


 話を聞くにどうやら報酬が払われていないらしいな。


「払ってやってくれ」


 俺も男に言ってみたが。


「払ったよ」

「これのどこが報酬なんすか?一食程度じゃないっすか!私があんた達に協力したのは1週間!これだけで足りるわけない!少なくともこの10倍の報酬は約束してたよね?」

「契約した時に書いたはずだが?満額支払われない場合がある、と。ニーナ。君の場合がそれだった」

「そんな………めちゃくちゃっすよ!」

「そもそも君みたいな底辺冒険者をパーティに入れて飯を食わせてやった………これだけでも感謝して欲しいんだがな。Eランク冒険者?」

「ぐ………」


 言い返せないのか黙り込むニーナ。


「じゃあね。良い夢を」


 そう言い宿を出ていった男。


「………」


 黙って少女も出ていこうとしたから手を掴んだ。


「何すか?私を笑いたいんすか?」

「逆だ。俺と手を組まないか?」


 俺は都合のいい場面を見てしまったのかもしれない。


「はい?」



 俺の部屋にニーナを招いた。


「私は弱ジョブの【狩人】っす」

「ふむ」


 ニーナから話を聞いていた。

 俺は全部事情を知っている訳では無いが彼女も恐らく追放された俺の同類ということだろう。


「他にパーティには加入しているのか?」

「いないっすよ。私はフリーっす。雇われたらそのパーティに行くみたいな」


 顔を俯けるニーナ。


「………私は弱いし何も出来ないから誰も正式なメンバーとしてパーティに入れてくれないんすよ」


 悲しげにそう口にした彼女。


「良ければでいいんだが俺のパーティに入ってくれないか?」

「え?」


 呆然と口を開く彼女。


「先に話しておくが俺は風水士。そんなやつがリーダーのパーティには誰も来てくれなくてな」

「いいんすか?入れてくれるんですか?」


 俺の両手を掴んでもう目と鼻の先くらいまで顔を近付けて聞いてくるニーナ。


「え、あ、あぁ」


 少し驚きながら返事を返す。


「ほんとにほんとなんすね?」

「勿論ニーナが良ければ、だが」

「入りますよ!」


 そう言ってくれた彼女。


「でも私なんも出来ないっすよ?所詮私は低ランクの狩人、魔法も使えないしすごい矢も使えないっす」

「いや、それでいいよ。人手が増えてくれるだけありがたいし」


 そう答えると口を開く


「俺は風の螺旋に挑みたいと思ってる。正直命の保証なんて出来ないけど協力してくれるか?」

「するっす!勿論っす!」

「分かった。ありがとう」


 そう答えて立ち上がると隅にいたアナも呼び付ける。


「俺はカイム、こっちの子はアナ。よろしくな」

「私はニーナっす。よろしくっす2人とも」

「は、はい。よろしくお願いします」


 そう返すアナの言葉を聞いてからニーナはアナに話しかける。


「アナちゃん髪の毛ボサボサっすね」

「わ、私奴隷でしたので」

「一緒にシャワーでもどうっすか?」

「え、えぇぇぇ?!!!!」


 何故か俺を置いて進む話。


「なら、入ってくるか?アナ?俺は待ってるぞ」

「ほら、カイムもこう言ってくれてるし行こ」

「で、でも私奴隷ですから………」

「そんなの気にしなくていいっすよ、さ行きましょう」


 ルンルンと言いたげな表情でアナの背中を押してシャワールームに向かう彼女だが直前で俺の顔を見た。


「覗かないでくださいっすね?」

「覗かないよ」

「何すか?その言い方私に魅力ないみたいじゃないっすか」

「分かった。覗きに行くから」

「やめてくださいよね?」


 理不尽な話だ。


「さ、行きましょう〜」


 パタリ。

 閉じられた扉。

 2人は出ていったようだし俺は立ち上がった。

 見たいものがあった。

 この部屋に入った瞬間ニーナがゴミ箱に捨てたものだ。


「契約書………ね」


 中に目を通す。

 ニーナとさっきの男の間で交わされた契約だ。


「名前はエドワードね」


 報酬の明細書も一緒に捨てられていたのでそっちも見ると。


「………違法だな」


 少なくとも普通のパーティがやることじゃない。

 そんな報酬内容だった。

 しかしこの王国は底辺には厳しくできている。


 彼女のような低ランクの狩人が騒いだところでどうしようもない。

 だが野放しにするつもりもない。


「………やるならダンジョン内か。そういえばシュライが言っていたな。ダンジョン内で不慮の事故に見せ掛けた殺人が横行してるって」


 呟いて苦笑する。

 正に俺がそうされようとしていたところだったから。


 あそこで俺の風水士としてのスキルが覚醒しなくては事実風王狼の餌になっていただろうしな。

 それに実は今も風の流れだけは何となく分かるようになっていた。

 このスキルがあれば………

 

「そしてあのダンジョン内であれば………なるほどな。不慮の事故………ね」


 あの時のように俺だけ地の利を得ることが出来たならば戦いを優位に運ぶことが出来るだろう。

 冒険者にとって、ダンジョン内の環境というのはバカにできない。

 ならば俺だけ使わせてもらおうか。それは大きなアドバンテージになるはずだ。


「エドワードのパーティはランクとしてはBランクか。実験には丁度いいかもしれないな」


 俺の顔はいつの間にか歪に歪んでいたようだった。

 これでうまくいけば俺の復讐も果たせるかもしれない。


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