28話 また作戦を立てる
『お前が俺の海に手を出したからだ』
「それは本当なのか」
『あぁ!俺はなぁ!お前のような風水士のゴミクソが俺の海に無断で触れたことについて怒っているのだ。これは万死に値する』
本当にそれだけの理由で怒っていたのかこいつは。
「許可を取れば良かったのか?」
『いいわけが無いだろ?お前が俺に接触した段階で海の藻屑にしているところだ』
どのみちダメらしいな。
『だが俺はお前を藻屑にすることを楽しみにしている故にこれから時間をくれてやろう』
「時間?」
『今のままではお前は俺に勝てない。風のを殺った時も作戦を考えたのだろう?そのための時間をくれてやろうと言っているのだ』
アナが俺の裾を引っ張る。
「ここは従っていた方が良いかと」
「そうだな」
『雑魚をいくらひねり潰した所で楽しくはない。せいぜいあがけよ。期待している』
そう言ってアクアは50階層に戻っていく。
それを見送ってから俺達も一旦戻ることにした。
とにかく対策を考えなくてはならないな。
※
「久しぶりだな」
アリスの言葉に頷いた。
「次が最後のダンジョンマスター戦となる」
「もうそこまでいったのか?」
驚いているアリス。
「………どんなダンジョンでも踏破直前まで年単位でかかることが多いというのに」
「今どれ位なんだ?」
「君たちが出て行ってから殆ど時間は経ってないよ」
「これは快挙ですよ!快挙!ダンジョン………しかも最高難易度と呼ばれているダンジョンのうち1つを数日で攻略しちゃうなんてすごいことですよ!」
サーシャもそう言ってくる。
「そう言えば君らの他にも何人かあのダンジョンに向かったらしいがどうなったのかは分かる?」
「死んでたよ」
「………そうか。暫くは近付かせない方が無難だったな」
そう言うと改めて俺を見るアリス。
「改めて私からお願いしたいことがあるカイム」
真面目そうな顔をするアリスを見て俺も態度を改めた。
「水剣の渦………そのダンジョンマスターであるアクアを討伐して貰えないか?」
「するつもりだ」
元々俺が撒いた種だ。
「どうするつもりなんだ?討伐の方は」
「螺旋と同じように外から攻めるつもりだが………今回は水中だ。どうしようかというのが正直なところ」
「何か決まったら教えて貰えるだろうか?」
「それも構わないが………」
そう答えた時だった。
「クソ風水師お前こんなところで何してんだ?」
「ゴミの風水師が。こんなところでサボってていい身分じゃねぇだろ」
冒険者が声をかけてきた。
「作戦を立てているところだ」
アリスがそう言ってくれたが
「シュライ様はこのゴミの尻拭いのために今日もダンジョンに行ってくださっている。こいつだけが怠けているのはダメだ」
「そうだ。ギルドマスターも甘やかさずにこのゴミを海に突き落とすべきだ」
そう言って1人の冒険者が俺の髪をつかむ。
「おい、腐れ風水師。お前王国とギルドにどれだけ迷惑をかけているのか分かっているのか?」
「………」
何も答えないのが正解だろう。
「お前の立てた作戦のせいで螺旋の攻略は失敗。ギルドマスターが手を加えて成功させてくれたというのは聞いた。お前いつまで迷惑かけ続けるつもりだ」
「そ、それは違う」
アリスが否定してくれているが
「何が違う?こいつはゴミだ」
そう言って俺を突飛ばす冒険者。
「ちゃんと死んでおけよ風水師。お前は要らないんだよ。いつまでシュライさんに迷惑をかけるつもりだ?」
そう言って立ち去っていった。
「最悪ですね。何も知らずに」
サーシャが呟いた。
「仕方ない。俺の功績は一つもないからな」
そう答えてアリスに目をやった。
「今度はこの作戦で行こうと思う」
俺は作戦内容をアリスに伝えてみた。
「………可能か?」
「加護を使える人間が必要だな。最悪ダンジョンの最奥が崩壊するかもしれないが確実にアクアを倒せる方法だと思う。あのステージだからこそ使える技と言ってもいいだろうな」
「君には毎回驚かされるよ。しかしそんな知識を一体どこで?」
「昔に本で読んでな。ずっと魔法の知識以外は要らないと言われていたがここで役に立つとは俺も思わなかった」
「確かに私もそう言われて育ったからよく分かるよ。でも本当にこんなところで役に立つなんてね」
「雑学も塵も積もれば何とやらって奴なのかもな」
そう答えて小さく笑うと俺はもう一度アリスの目を見て頼むことにした。
「俺の言ったものを用意してもらえるか?それから人手。こんな俺なんかに協力してくれる人間がいるかは分からないが頼むよ」
「分かった。こちらでも人を探してみる。見つかったら連絡する」
俺は懐から皮袋を取り出すとそれをアリスに渡した。
「これは俺の金だ」
「宣言されなくても分かってるよ」
「断じて借りたものでは無い。それで俺の言ったものを揃えてくれ」
俺に残った財産の全てだ。
「アナ達すまないな。みんなには給料を払えない」
「いつも払ってなくないですか?」
「別になくてもいいっすよ。私はカイムについて行きたくてついて行ってるし」
「そうだね。私もカイムのそばが良くてついて行ってるだけだからそんなのいらないよ」
「そうですよ。カイムさん。誰も給料が欲しくてカイムさんの仲間やってるんじゃないですよ。気にしないでください」
みんながそう言ってくれた。
「ありがとな」
そう言ってアリスに目をやった。
「よろしく頼む。用意出来なければ俺達の負けだろう」
「分かった。精一杯頑張らせてもらう。それにこの国は腐ってる。カイムのような有能な人が評価されずに無能ばかりがのし上がる現状ももう見ていられない」
そう言ってくれるアリス。
「カイム、この国をどうにかしよう」
「そのための第1歩ってわけだな」
俺とアリスは手を重ねた。
これはそう。第1歩に過ぎないのだろう。




