27話 ダンジョンマスターとの対面
水剣の渦40階層
『よくきたな人間』
40階層に入ると既にフロアボスが現れていた。
『我が名はリヴァイアサン。このダンジョンの最後の門番を任された存在だ』
こいつは驚いたな自己紹介してくれているらしい。
「そりゃ律儀にどうも。俺も自己紹介した方がいいか?それより、リヴァイアサンと聞くと蛇のようなものを想像していたが違うのだな」
『確かに伝承の多くでは我の姿は海蛇で描かれていることが多いな。しかしそれは大きな間違い。お前たちは既に水龍を撃破しただろう?あれを人間はリヴァイアサンだと勘違いしたことが始まりだ』
「道理で人型な訳か」
『左様。我はダンジョンマスターであるアクア様に生み出されしモンスター』
そう言うと何処からか水の剣を作り出したリヴァイアサン。
『風水士よ。先の質問に答えるが貴様の自己紹介は不要だ。何故ならばここの勝利者は我だからだ。来い全力で相手をしてやろう』
そう言ったリヴァイアサンの背後の壁から無数の水の槍が生えてきた。
そして
『絶望を刻もう。千の水槍』
一斉に射出される水の槍。
視界を埋め尽くすほどの水の槍。
それは数の暴力だった。
『我が槍を避けられることは無い。何をしても、だ』
「この槍が何だって?」
『なっ………馬鹿な。あの槍を凌いだ………だと。しかも………無傷で………あのアクア様すら全ては凌げなかったというのに』
「ならこれを避けた俺ならそのアクア様の首を取れるだろうか」
そう告げて剣を抜いた。
同時に風に乗る。
『図に乗るなよ人間風情が!しかも風水士如きが!』
次々に飛んでくる水の槍。
その数は………既に万を超えるかもしれない。
何故なら
『ふはははは。これで貴様は終わりだろう!風水士!』
「全方位からの槍の同時射出か。確かに全て避けるのは容易いことではない」
そう言っているあいだに全てが射出された。
しかし
「無駄だ」
『なっ………』
全ての槍がフロアの真ん中で交わり炸裂して床を濡らす。
『貴様………どうして!』
そう言いながらも次々と槍を生み出そうとするが、それを辞めて自分の腕に1本の槍を生み出すリヴァイアサン。
「しょせんは海水だから」
海水でも固まってものすごい速さで叩きつけられたら痛いし場合によっては貫かれるだろう。
「答え合わせをしてやるよ」
『おのれ!人間!消しとべ!』
投擲された水の槍。
それを
「パリィ」
『なっ!』
俺はそれを受け流した。
「聞いていないか?俺は今風王の証を手に入れている。最低限の風属性の魔法は使える状態にある。それでいてかつ俺は自然の、例えば風や水の動きは予想できるんだよ。それを組み合わせればお前の槍の飛んでくる先は予想できる。なら事前に風を操り着弾点を━━━━逸らしてやればいいだけだ」
『それが………しょせんは海水だからという意味か』
「そうだ。俺を下したければ俺の予想できない攻撃を振るものだな」
そう言い驚いているリヴァイアサンに接近する。
「これで終わりだ!」
振り下ろした剣には全てを断ち切る風を付与している。
『そちらもな!』
同時に奴は鋼鉄の剣を相打ち狙いで振り始めた。
だがその攻撃は知っていた。
『私はダンジョンマスターが存命する限り復活できるのだ!ここで相打ちになろうが、我の勝利はやはり変わらぬ!』
「自信満々のところ悪いけどな━━━━その攻撃も知ってるから」
俺は剣を躱すと一方的にリヴァイアサンの心臓がありそうな場所を貫いた。
そして傷口から無数の風が全身に行き渡り切り刻む。
『ぐぅおぉぉぉぉぉ!!!!!何故だ!何故だ!』
「答え合わせは必要か?」
剣を引き抜くと支えを失ったリヴァイアサンが膝を着いた。
『………いや、それは我の課題としよう』
そう言うと体から水泡が立ち上がり始めたリヴァイアサン。
そして
『お前………いや貴方ならば………アクア様を止められるやもしれぬな………風水士殿………私は貴方に敬意を表そう………貴方こそが………真の………支………』
そう言い消え失せていったリヴァイアサン。
「何を言いかけたんでしょうか」
ポカーンとしているが口を開けてそう言っているアナ。
「さぁな。分からない」
「カイムさんカイムさん」
「何だ?サーシャ」
「あんな出の早かった斬撃どうやって避けたんですか?私なら切られたことすら気付きませんでしたよ」
サーシャがポカーンと俺を見ている。
それはニーナもそうだった。
「確かに気になるね。今の出の速さでどうやって対応したの?私はこれでもまだ人より目がいい方だけどそんな私でもカイムの力がなければ絶対に避けられなかった不可避の一閃だったよ今のは」
マリーも不思議に思っているらしい。
「たしかにな。出は恐ろしく早かった」
「どうやって避けたの?もしかしてカン?」
「いや、違うよ」
俺はそう言って自分の手で剣を握ろうとしてみた。
「この動きでも空気の流れが微弱だが起きてる。それから未来を見たんだよ。この風が今度どう動くか?それは何によって引き起こされるか?それがリヴァイアサンの一閃によるものだって分かったら簡単だ。既に斬撃は見えたも同然。恐ろしく早かろうが何だろうがそれに合わせて回避行動を行い反撃するだけさ」
そう応えると皆が目を合わせた。
「知ってたっすか?今の話」
「し、知らないですよ………」
「う、うん」
サーシャだけは俺に抱きついてきた。
「そうですよね。よくわかりませんけど流石カイムさんですよね」
「そうか?」
「そうですよ!こんなのカイムさんしか出来ませんよ!今の知識を利用して道場でも開きましょうよ」
「人来ないだろ」
苦笑する。
そうしてから俺は次の階層に続く階段に目をやった。
「さて、行こうか」
※
水剣の渦49階層
『リヴァイアサンはてめぇを止められなかったか………』
そこにはアクアがいた。
『あのゴミが………使えねぇ………』
「奴は必死に戦った。その戦士を愚弄するか」
『勝たなきゃゴミだ。負ければゴミだ。それはお前も理解しているだろう?風水士が。敗北など何の価値もない。虫けら以下のゴミが、お前も直にそれを理解するだろう』
アクアが笑い始めた。
そう言えば一つ気になっていたことがある。
「そう言えば何で俺をこのダンジョンの攻略役に指名したんだ?お前は」
まさか以前に聞いたあのしょうもない理由なのだろうか。
『それについても話してやらなくてはならないかもしれないな』
アクアはそう言って1度瞳を閉じてから口を開こうとした。




