22話 ここであったこと
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『風王が敗れ去った』
冷たい声が告げる。
風王というのはウィンドゥの事だろう。
『そうだな。それだけ言いに来たのか?』
『いや、お前があの風水士に宣戦布告を出すのは理解しているから警告しにきてやっただけだ』
『警告?それを出すのは俺にではなく、あの風水士にだろ?』
『いや、お前にだ』
冷たい声がそう水剣に告げた。
『その俺を侮辱する言葉、海の藻屑になりたいか?お前、いいぜ?いいんだぜ?あの風水士のガキ諸共お前をこの奥深く絶海の底に沈めてやっても』
『その前に私がお前の時を止めるだろう。永久にな』
『やるか?』
『お前が死ぬのは目に見えているが』
『ちっ………だが風王は我らと並ぶには弱すぎた。あの雑魚が引きずり下ろされたのは仕方の無いこと。俺と一緒にするな』
『その慢心をやめろと言ったのだ。事実として風王も己の手のひらで負けたのだ。あの風水士は━━━━』
雑音が入り上手く聞き取れなかった。何と言ったのだろう。
そしてザーザーザー。
「え?ここで終わりなんですか?」
「いいとこだったんすけどねぇ」
サーシャとニーナが肩を落とした。
確かにいいところだった。
「ま、いい。とりあえず先に進もうか」
そう言いながらスフィアを懐の中にしまうと俺は次の階層に向かうために歩き始めた。
※
━━━━水剣の渦10階層
「カイムさん」
「ん?」
「私分かっちゃいましたよ。ついに分かっちゃいましたよ。分かっちゃったんですよ。分かりました」
1人ではしゃぐサーシャ。
「どうした?サーシャには何が分かったんだ?」
「ふっふっふー聞いて驚かないでくださいね」
そう言ってビシッと指を指すサーシャ。
その先には
「あれは………水剣かな」
マリーの呟きに首を縦に振るサーシャ。
「イエスイエスです。あれこそがこのダンジョンが水剣の渦と呼ばれる理由でしょう」
胸を張ってそう言っている。
水剣、水で作られた剣が渦のように上に伸びていた。
「だが動いていないな」
「だってあんなもの動かされたら面倒くさいじゃないですか。止まってて正解ですよ。さ、行きましょう」
そう言って先々進もうとする彼女。
その時だった。
ビュッ!
水剣が1本サーシャに向かって飛ぶ。
「きゃっ!」
「危ないな」
風の力で無理やり動きを逸らす。
するとサーシャを外して剣は地に落ちた。
「危なかったな」
「ガイムざぁぁん」
泣きそうになりながら俺のとこに戻ってきたサーシャ。
「危ないしとりあえず固まって動こう」
何よりも大事なことはこれだろう。
固まって動く。
「フォローできる位置にいてくれ。俺たちは1人で冒険してるわけじゃないんだしな」
「イエッサー!」
元気よく返事してくれていた。
と、その時だった。
「カイム様!カイム様!」
「どうした?」
「あれですよあれ!大変です!」
アナの指さした方を見ると水剣の竜巻がこっちに向かってきていた。
「やばいな」
「やばいですよ!逃げましょう!」
「ぎゃー!!やばいっすよ!剣の渦潮なんですけどぉぉぉ!!!」
「とにかく逃げるぞ」
俺が後ろについてアナ達を先に進める。
※
水剣の渦15階層。
「はぁ………はぁ………死ぬかと思った」
「そうだね。まさかね………あの渦潮もしかしてデフォルトで出るようになるのかなぁ」
ここまであの渦潮が発生し続けたのだった。
動きが遅いのがまだ救いだ。
だが
「巻き込まれたらやばいだろうなあれ」
「やばいっすよ!超ヤバイっすよ!巻き込まれたら死んじゃうっす!」
慌てているニーナ。
確かにやばいなあれは。
「ここは何なんでしょうか?あの渦潮もなければ敵もいないようですけど」
「セーフエリアを作れそうだね」
アナとマリーの会話を聞いて頷く。
「そうだな。ここはセーフエリアの候補になるだろうな」
特に問題なさそうな場所を選ぶとそこに簡単な小屋を作り始めるニーナ。
「これでどうっすか?」
「流石狩人だな」
「えへへっこんなものちょろいっすよ」
満更でもなさそうな表情のニーナ。
とにかく助かったな。
そう思いながら中に入ると転移結晶を設置した。
これでここからいつでも村に戻れるようになる。
そうして外に出たところ。
「ん?あれは」
「どうしたんすか?」
「いや、またメモリアルスフィアがあってな」
そう言って近付く。
「ほんとです。またあの丸い球体ですね」
その言葉を聞いて俺はもう一度魔力を流すとまたあの時のように映像が映り出した。
場所は変わらずこのダンジョン内のようだ。
『また来たのか』
『水剣の………お前、やってくれたな』
『ははは、何をだ?』
『人の村に手を出すな………お前は禁忌を破ったな?』
『何を言い出すかと思えばそんなことか』
『そんな事?貴様は手を汚した。タダでいられるとは思うなよ?』
『丁度いい。俺が最強であることを他のダンジョンマスター共にも知らしめることのできるチャンスだ。いいぜ。ぶちのめしてやるよ。こい!━━━━』
ザーザー。
この先は表示できないのか砂嵐のような音が聞こえて終わってしまった。
「………何やら大変なことになっている気がします」
「そうだな」
「それにあの、風水士ってやっぱりカイムさんの事ですよね?」
「普通に考えてそうだと思う」
話の流れからして風のと言っていたし恐らく俺のことだろう。
「やばくないですか?」
「やばいと思います」
「どうして口調変わったんですか?」
「連られて」
そんな馬鹿な会話をしていた時だった。
「そう言えば………ここのダンジョンマスター、何か言ってませんでしたか?来い!とか、何を呼んだんでしょうか?」
「さぁ………フロアボスじゃないのか?」
そう話していた時だった。
ゴポォ。
空気が水の中で上に上がっていく時に聞こえる音が聞こえた。
「い、今のは何の音ですか?!」
アナが叫び声を上げた。
そうして振り向いていたが
「何もいないよ?確かに音は聞こえたがここは四方を海に囲まれたダンジョンだし、海に住む巨大生物か何かが通ったんじゃないかな」
マリーがそう答えていた。
「うーん。そうなんですかねぇ」
腑に落ちなさそうな感じなアナだが。
「俺も何かの巨大生物だと思うぞ」
悪いが俺もそう思う。
すぐ近くに海があるのだからそうとしか思えないが。
さぁ、先に進もう。




