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21話 スフィア

「この壁どうしましょうか?」


 サーシャが腕を組んで唸る。


「定石通り水無効でも試してみるか?」

「海水も無効化出来るんですか?」

「出来るはずだ。海水でも水は水だ」

「ならば試してみましょうか」


 そう言って彼女は近くにあった石に魔法を使った。


「風の螺旋も無効化できる風と出来ないものがありましたよね?」

「そうだな」


 その言葉でサーシャが何をしたいのかを理解する。


「一先ずは実験です。体が木端微塵になれば笑い話にもなりませんからね!いえ!笑い話にする体も残りませんね!」

「そうだな。口あっての会話だ。念には念をだな」

「そうなんですよ。せいっ!」


 彼女は石ころを投げたが。

 パァン!!!!


「はわわわわ!砕けちゃいましたけど?!」

「水の威力が高いみたいだね。どうするカイム?」


 マリーからの質問。


「どうしようか。待っていれば解除というより終わりそうな気もするが………それを待てるほど俺も気が長い訳では無いしな」

「ならどうするの?風の螺旋と同じくここも待っていれば終わりそうだけど」

「いや、待つの最終手段だ。こうする」


 そう言って俺は懐の中から風王の証を取りだした。


「風よ………」


 念じるとただ風の力で目の前の壁が別れることだけを願う。


「わぁあぁぁ………すごいです!すごいです!水が!左右に別れましたよ?!」

「この風王の証は風属性の魔法を使えるようになるみたいだが………成功したみたいだな。さぁ、先に進もう」

「はい!レッツゴーです!」


 サーシャが我先にと言うような感じで分けられた水の向こう側に進んでいく。


「行きましょうカイム様」

「そうだね。ここでのんびりしていたらまたシュライ達がやってくるかもだし」

「そうっすね行きましょうっす」


 3人に背中を押され俺も先に進むことにした。


「それにしてもすごいですね!カイムさんは!水属性無効化でも何とも出来なかった水流を魔法でどうにかしてしまうなんて!」

「そうか?風王の証のお陰もありそうだが」

「いえいえ、魔法を使うのにも知識が必要なのですから、知識は力なりというやつです!また定石を覆しましたね!」


 マリーも口を開く。


「そうだね。普通は無効化で乗り切るギミックなのにそれを強引に他の魔法で切り抜けるなんて私は思いつかなかったな」

「私もですよカイム様。あんな風に乗り切るなんて初めて見ましたよ」


 アナはとても驚いたような顔をしていたしそれはニーナも同じだった。


「そうっすよね。私も驚いてるっすよ。普通は水に対しては風属性を出すなんて相性が悪いって言われてるのに━━━━その相性すら覆すなんて………」

「とにかく、先に進もうか」


 大したことをしていない気がするが、それでもこうまで言われるとほんとに照れくさくなるな。

 先に進もう。



 ━━━━水剣の渦6階層。


「このダンジョンほんとに攻略されてないんすね」

「他の同難易度ダンジョンと呼ばれるものと比べても難易度が遥かに高いからな。普通ならば俺達も【嵐の海域】と呼ばれる突破することすら難しい海域を抜けなきゃ辿り着けない秘境だったしな」

「でも、今回は嵐の海域を無視しての侵入が可能になった。これがやっぱり大きいんすか?」

「そうだな。嵐の海域は下手をすればそれだけでパーティが半壊………いやそれで済めばいいほどの打撃を受けるからな」


 そんな海域を無視できたのは本当に大きいだろう。


「何か落ちてるな」


 しばらく進むと何かが落ちていた。

 ダンジョンによく落ちている鉱石とは違う気がする。


「これ、何なんですか?」


 興味津々に聞いてきたサーシャ。


「ふむ。これはメモリアルスフィアだろうな」

「メモメアルセフィア?」

「メモリアルスフィア。要は記録を残せるものだな」

「????よく分かりませんけどよく分かりました」

「どっちなんだ?」

「分かりません!」


 潔い返事を貰えたので適当に説明する。


「要は俺たちの頭のような役割を持っていると認識してもらえればいい。何かを覚えたりすることができるアイテムだ」

「私たちの頭って何か覚えたりするんですか?」

「え?」

「はい?」


 俺たちの会話を目をまん丸にして見ているアナ達。


「サーシャが何処で何を覚えているかは分からないが普通の人間は頭でものを覚えるんだ」

「そうだったんですか?私は━━━━心で覚えてますよ。心でカイムさんのことを覚えていました」


 すごい真面目そうな顔をしている。

 

「ん、分かった」

「そんなに簡単に流さないでくださいよ!びえぇぇぇ!!!!」


 俺に泣きついてくるサーシャだが軽く流して俺はスフィアに魔力を流してみることにした。


「な、何をしているんですか?」


 今度はそれをマジマジとみて聞いてくるサーシャ。


「見ていれば分かる」


 そう答えて俺は続きを待っていた。

 やがてスフィアの上から光が放たれて空中に映像が表示されたのだった。


「これ、誰ですかね?ここはここ?」

「ここだろうな」


 サーシャの質問に答える。


「動きましたよ」


 アナの声で俺は視線を映像に戻した。

 その中では二人の男が向かい合っているようだった。


『久しいな水剣の』

『下らない前置きはやめろ。その身海に沈めてやろうか?』

「す、水剣?」


 マリーが疑問を持ったような言葉を吐いた。


「す、水剣って私たちのいるこのダンジョンの事ですよね?」

「つ、つまりここに映ってる内の片方はもしかして………」


 ニーナが俺を見てきた。

 頷いて答える。


「この青い方こいつは水剣の渦ここの━━━━ダンジョンマスターかもな」

「「「「え、えぇぇぇぇぇぇぇ?!!!!」」」」


 アナ達の悲鳴にも似たような声がこの階層に響き渡ったのだった。


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