19話 新たなダンジョンへ
翌日。俺たちは早速ダンジョンに向かおうとしていたのだが。
「さっさといけよクソ風水士が」
「もう二度と帰ってくんなよ」
散々な言われ方をされていた。
そしてそんな俺とは対照的に。
「シュライさん頑張ってくださいね!風林火山の名を天下にしらしめましょう!」
「任せろ。さぁ行くぞ!ゴミ共!」
何故かシュライが俺の隣にいた。
どうやらこいつもダンジョンに向かうらしいが。
「腐れ風水士………てめぇはここでSランクの俺様が帰ってくるのを無様に指をくわえて見ているだけでいいんだぜぇ?なぁお前ら」
「そうだ!風水士てめぇの出番なんて1ミリもねぇんだよ!大人しくここで無様に泣き叫んでろよ!」
「死ねぇ!!!!風水士!!!!」
シュライの言葉に釣られるように村人がそんな言葉を吐き始めた。
まさかここまで嫌われているとはな。
逆に清々しくなるほどだ。
「ここで無様に這いつくばってろカス風水士がよ」
「そうでちゅよー風水士のぼっちゃんはここで寝てな」
「がははははそうだぞゴミが。このダンジョンは俺たちが攻略する。お前はここで寝てるのが役目だ」
何処で集めてきたのか分からないがまた新しい仲間とそんなことを言っているシュライ。
「魔法剣士ならクズでも人に困らないか?」
「あたりめぇだろ。お前みたいなカスの風水士には分からないかもしれないがSランクの魔法剣士にもなると引く手数多なんだよ雑魚。おら、行くぞ」
そう言ってシュライは先にダンジョンに向かっていった。
一緒に行くのは嫌だったため少し待ってから俺達も進むことにした。
「初めてのダンジョンなんすけどどういうところなんすかね」
ニーナも始めてくるのか少し緊張していそうだった。
と言ったところで今回のダンジョンは俺も初めて目にするところだ。
それ故に少し緊張しているところもある。
「一応定石通りに水属性使いを連れてきた方が良かっただろうか」
そうも思う。
「うーん。どうなんですかねー」
「それは入ってみないと分からなくないっすか?」
「まぁ、入ってみなくてはたしかに分からないが、初見で分かる方がおかしいと言えばたしかにおかしいが」
皆と話してみるが結局入った方が早いという答えが出そうだ。
※
そうして俺たちはあれこれ考えるのを辞めてとりあえず入口からダンジョンに入ってみることにした。
「わぁぁあぁぁ綺麗っすねー」
中に入ると流石水のダンジョンと言いたくなるような光景が広がっていた。
「たしかに綺麗だな」
「見てっす!あれ魚泳いでないっすか?」
ニーナの指さした方向を見ると確かに魚が泳いでいた。
「あれ?というかここ海の中じゃないですか?何で呼吸が出来るんでしょうか」
単純に疑問に思ったらしいアナの質問。
「そういうダンジョンなんじゃないか?もしくは海の神が水中に対応出来ていない、とか」
「海の神なのにそれはそれでお茶目っすね」
ニーナがそう言って笑う。
「ま、とにかく俺たちに損は無いわけだし先に行こうか」
「でも、不思議な感じだね。このダンジョン風の螺旋みたいに風が吹き荒れてるみたいな感じに波があったりするのかも思ったけど今のところ何も無いし」
「ここは一階層だから、じゃないか?どのダンジョンも一階層は大したことがないと聞くし」
「確かにそうだね。風の螺旋も1階層はビュービュー言ってなかったもんね」
「とりあえず先に進もう。水属性が必要かどうかの確認も必要だしな」
そうして俺たちはこのよく分からないダンジョンを先に進むことにした。
「このダンジョンって未開のダンジョンなんでしたっけ?」
「そうだな。発見自体はされていたがこのダンジョンのマスターによる妨害が激しく長らく調査も進んでいなかったダンジョンのはずだ」
「それが今回こうやって橋が出来たお陰ですんなりと来れたんですね」
アナの言葉に頷く。
「そうだな。あれがなければ今回も入ることすら厳しかったかもしれないな」
「聞くところによると海を渡ろうとした船が嵐に巻き込まれたりしたそうですね」
「怖い話だ」
そんなことを話しながら俺たちは下に下っていく。
今回のダンジョンは螺旋と違って上に進む形式ではなくより下に奥に潜っていく形式のダンジョンらしい。
と、そうしようとしたところだった。
「退いて退いて退いて退いてぇぇぇ退いてください!!!!!!!!!」
階段の下から誰かが駆け上がってきていたのだ。
「きゃっ!」
突然の事で反応できなかった俺は少女と衝突してしまった。
「来てます来てます来てますぅぅぅぅぅぅ!!!!!」
背後を振り返りながらそう言うと俺たちの横を通っていこうとする少女。
俺もそちらに目をやったら
「げっ………海賊亡霊かよ………」
何も言わぬ亡霊達が階段を駆け上がってきていた。
「狭いな。1度上に戻るぞ」
海賊亡霊達も上がってきたら即座に攻め込んできた。
キンキンキンキン!!!
剣と剣が交差する。
そして
「ふぅ………」
「す、すごいですよカイム様!やっぱり剣の腕は相当なんですね!」
ピョンと飛び跳ねて俺に抱きついてきたアナ。
「ぼ、亡霊がこんな簡単に………」
驚いたのかぺたりと倒れ込んでいる少女。
「大丈夫か?」
「はっ………だ、大丈夫なのです!」
何かに気付いたように立ち上がって胸を貼る少女。
「あれに追われていたんだな?」
「そ、そうなのです!でもあなた達は?」
「俺の名はカイム。ここで会ったのも何かの縁だろう。宜しく頼むよ」
手を差し出す。
「カ、カイムさんってあの風の螺旋を踏破した伝説の風水士さんですか?!」
俺の手を両手で取ってきた少女。
「ん?伝説かどうかは分からないけど俺はカイムだ」
「私大ファンなんですよ!カイムさんの!」
「そ、そうなのか?」
「はい!あ、この手は絶対洗いません!お風呂にも入りません!」
手をブンブン振ってそう宣言する彼女。
「いや、手くらいは洗ってくれ」
苦笑いする。
「で、でもそれだとカイムさんのエキスが………」
「よく分からんが頼むから手は洗ってもいい」
「そ、それではカイムさんパワーが………」
もしかして洗うつもりはないのだろうか。
「大変らしいな」
「そうなんです。これは深刻な問題なのです」
「それはどうしたら解決できるだろうか?」
待ってました、と言わんばかりに彼女は両手を腰に当てて答えてくれた。
「私をお供にしてください!」




