15話 神の失墜1
「あ、あの………カイム様。人手が足りないのですか?」
そこにいたのは普段見慣れない少女達だった。
「君達はたしか………」
「あの時助けて頂いた奴隷です」
1人の少女が前に出てきてそう名乗り出てくれた。
「エドワード様に魔力タンクにされそうになったところ助けていただきました」
「あーあの時のか」
覚えてるな。
「確かに人は足りないが」
「私たちで力になれるかは分かりません。本当に頭数にしかならないかもしれません。でも、それでも良ければ私たちを使ってくれませんか?」
「いいのか?」
そう尋ねてみたが次に前に出たのは別の少女だった。
「はい。勿論です。私たちみんなで相談して決めたことなんです。私たちに何が出来るか分からない。でもあの時に終わっていたはずの命………救ってくれた命をカイム様のために使おうって、決めたんです」
「別に使い捨てるつもりはないが………いいんだな?既にモンスター達がダンジョンから出てきて危険な状態だが」
「はい。構いません」
キッパリと言い切った少女。
「これは私たちの総意ですカイム様。手伝わせてください、私たちを救ってくださったあなたを」
「………命をかけてくれるんだな?」
「もちろんです」
「分かった。ありがとう」
俺はアリスに目を向けた。
「作戦は続行可能だ。俺が以前指示していたことについては問題ないか?」
「もちろんだ。そのために前もって準備をしておいたからな」
「よし。ならば明日に間に合うな」
もう一度少女立ちに目をやった。
「ありがとうよろしく頼むよ」
「「「はい!」」」
元気のいい返事をしてくれたのだった。
※
翌日俺が作戦の立案者ということで実行前に俺が各自に指示を出していた。
「君たちは飛空船に乗ってくれ」
「はい」
奴隷の少女達に指示を出した。
「これで作戦が無事に終われば俺は君たちを解放する」
「本当ですか?」
「あぁ。奴隷を解放しようと思う。もう誰も悲しまなくていいように」
少女の瞳を見つめた。
「だから見せてやってくれ。これは━━━━俺たちの下克上だ」
「はい。任せてください。私もカイム様の力になります」
そう言って彼女達は飛空船に乗り込んでいった。
さて
「俺達も最上階に向かおうか」
「そう言えばどういう作戦か聞いてないんすけど」
ニーナが唇を尖らせて聞いてきたが。
「すまないな。説明しても分からないと思うから省いていたがした方がいいか?」
「うーん。難しそうですしいいっす。私馬鹿っすから」
「別にニーナは馬鹿じゃないよ。カイムは風林火山にいた時から先のこと考えて行動してるくらい頭よかったから。カイムが頭いいだけだよ」
マリーがそうフォローしているがただの無駄な知識を応用しているだけなんだがな。
そう思いながら俺は先陣を切って風の螺旋、その最上階から伸びている階段に足を踏み出した。
「待っていたよカイム」
そこにはフェニックスの姿をしたダンジョンマスターではなく、ウィンドゥの姿をした彼がいた。
「君がここに来たということは決意は決まった、ということかな?」
「そうだ」
「心は鋼の如くということか」
そう言いウィンドゥは俺に背を向けて歩いていく。
そこには風の玉座が置かれていた。
そしてその下には
「これ、君らの世界では魔法剣士とかいうんでしょ?」
「シュライ………」
「大丈夫だよ。死んでない。ただ半殺しにはしているけどね。自分はSランクだ。魔法剣士だ。史上最強だ。そんなことを口にして僕に挑みかかってきたから潰しちゃった」
「まぁ、自業自得だろうな」
「それから君のことは認められないんだろうね。あんな風水士如きに先に行かせるか!ともいっていた」
そう言うと腰掛けてシュライの頭に足を置くウィンドゥ。
「カイム」
「何だ?」
「風は嫌いかい?」
「好きじゃないな」
「そうか。僕はこの世界をここと同じく風で満ちる世界にしたいと思ってる。そうなった時………君には世界の半分を譲ろうと………」
「断る」
そんなものはいらない。
「ほう。あくまで神に歯向かうか?」
頷く。
「僕は君のことを気に入っていたんだがな。かつて君ほどに強く魅力のある人間はいなかったからね。だから接触した。君になら━━━━本気を出せるかもしれない、ってね」
「俺は強くなんてないぞ?」
「いや、君は強い。自覚していないだけかな?今だって君は他の人間より強く感じるよ。どんな誰よりも、それこそここで無様に寝ているSランク魔法剣士の何倍もね。これでもこちら側に付く気は?」
「ない」
そう応えると本気で残念そうな顔をするウィンドゥ。
「残念だが分かった。なら君を、いや君の後ろにいる子達も含めて葬って上げることにしようか。人間のようなゴミがいくら集まったところで神には勝てないことを教えてあげよう」
「いや、今日は神が失墜する日だ」
「お喋りだな。その口削ぎ落としてあげるよ」
ウィンドゥの姿が変わる。
宙に浮かび風に包まれたかと思ったら10メートル程の大きさの鳥になっていた。
羽は7色に輝いている。あの時のものだ。
「さぁ………世界をかけて戦おうか」
ウィンドゥが両翼を開いた。
繰り出される無数のかまいたち。
かまいたちは恐ろしく速いがしかし追尾性能は低い。
「こっちだ」
だからみんなに指示を出して少し動くと直ぐに当たらなくなる。
「やはりだ。君を相手にしていると感覚が狂う。どうしてだろうね?」
「そもそもお前の攻撃は当たらないんだよ」
「いや、違うんだよ。これは」
何やら言っているが知ったことじゃない。
「仕方ないな。ならこれを浴びるがいい」
そう口にした彼は━━━━俺たちの周囲を囲うように幾千のかまいたちを繰り出そうとしていた。
「やばいな」
「これは避けられるかい?大量の重りを捨てれば避けられるかもねぇ?!」
「きゃぁぁぁ!!!!」
かまいたちは風属性最高峰の魔法だ。
それがあんなにも展開される絶望に叫ぶ少女たちの声が聞こえる。
「流石神か………あんなものどうやって避ける………」
「大人しく泣き叫んでよカイム━━━━愚者に裁きを」
今、必殺の一撃が繰り出された。




