13話 ボスとの邂逅
風の螺旋45階層。
「それにしてもカイム様といると知らなかったこと沢山知れますね」
ピョンと跳ねて俺の腕に抱きついてくるとそう口にしたアナ。
「そうっすよね。私も酸素だっけ?そんなの知らなかったし」
ニーナも逆側で同じようなことをしていた。
「そうか。2人とも知らないのか。みんな知っていることだと思っていたが」
「みんな知ってたらシュピーネもあそこであんなことしなかったすよー。本当に凄いっすよねカイムは」
「そうかな?」
「そうですよ!私のカイム様は世界一の冒険者なのですー!」
そう言ってくれると嬉しいが俺はFランクだったな。
そんなことを思いながら同じふうに階段を登り続けたら49階層まで上がってきていた。
そこには
「シュライか」
「ちっ。ゴミの風水士が………」
傷だらけのシュライとマリーがそこには立っていた。
50階層へ続くと思われる階段………いや、
「趣向が違うな。何だこの門、今まではなかった」
「やめとけ。開かないぞ………」
下を向いてそう口にするシュライ。
「ちっ………ザスティンもシュピーネも使えねぇな………てめぇがここまで上がってくるってことは………あいつらもゴミだったって訳か………」
「あいつらを捨ててたどり着いたここには何かあったか?」
「何かあるわけねぇだろ!はははは!!!」
笑いながら手を伸ばしてきたが。
「風が全部教えてくれる」
「っ!!!」
シュライの右手を掴んだ。
「ここであいつらみたいに殺してやろうか?」
「黙れよ風水士が………」
「落ち着け2人とも!」
俺達が武器に手を伸ばそうとしていたその時だった。
階段を上がってきた奴らがいた。
ギルドマスターだった。
それを見て立ち去ろうとするシュライ。
「ちっ!行くぞ、マリー………」
「嫌」
そう言われるシュライ。
「あ?誰に向かってそんなこと言ってるんだおめぇ」
マリーが俺の横に移動してきた。
「もう我慢の限界。これ以上同行を迫るなら私はギルドマスターに全て話す」
「………あ?俺はSランクだぞ?お前みたいな奴隷ゴミの言い分なんて誰が聞くんだよ?え?ギルドも俺の味方だぞ?」
「なら言っていいんだね」
「………ちっ………好きにしろ」
そう言って去ろうとするシュライだが最後に俺に振り向いた。
「ゴミ風水士………てめぇはいずれ殺す」
「その前に俺がお前を殺す。良かったな命拾いして」
「何言ってやがんだかな」
今度こそ階段を降りていったシュライ。
「来てくれたんだね。待ってたよカイム」
俺の胸に飛び込んでくるマリー。
「すまない。話は分からないがとにかくこちらの話を先にしていいだろうか?」
その時ギルドマスターが声をかけてきたのだった。
「そうだな。話は後でに、しようかマリー」
「うん」
そう言ってくれたのでとにかくギルドマスターと話を進めることにした。
「すごいな………君たちがここまで単独で登ってこられるとは正直思ってもいなかった」
「なるほどな。侮られたわけか」
「すまないが、そういうことになる。しかしこれは実にすごいことだと思う。今までこんな所までこられたパーティはいないからな」
満足気にそう話すギルドマスターは俺に手を差し出してきた。
「私の名はアリス。君とは対等な関係を結びたいと思う。もちろん君が良ければ、だが」
手を取っておくことにした。
「よろしくな、アリス。俺はカイムだ」
「早速話を進めたいのだが、この扉はなんなのだろう?」
「さぁ、分からない。俺も今来たところだしな。だが風林火山のシュライは開かないとそう言っていた」
「信じられるのか?」
「嘘をつく理由も特には思い浮かばないからな」
「とりあえずこの扉は私が調査しよう」
そう言ってアリスはギルドやパーティ達を使って扉を調べ始めた。
開かないように思うがな。
※
「開かなかった。シュライの言ったことは嘘ではなかったようだ」
そう口にするアリス。
その後に口を開いたのは予想していなかった人物だった。
「その扉を開けたいのかい?」
ウィンドゥだった。
「君は………誰だ?」
アリスが首を捻る。
「僕はウィンドゥ。ただの風属性使いだ」
そう言って手を差し出す彼だが。
アリスは怪訝な顔をした。
「ウィンドゥ?聞いたことがない名前だが」
「そりゃ貴方だってみんなの名前を知ってるんじゃないでしょうにギルドマスターさん」
そうにっこりと笑うウィンドゥだが。
「いや、このグリゼイア王国にウィンドゥなんて名前の風属性使いは存在しない」
キッパリと言い切るアリス。
「私は今回の作戦を進めるに当たりこのグリゼイアに所属する風属性使いについて調べたから知っている。その上で口にさせてもらう━━━━ウィンドゥなんて人間はいない、と」
アナやニーナ、それからマリーの手を引いてウィンドゥから離れる。
俺はアリスの横に立った。
「何、その反応?ちょっと悲しいんだけどなぁ」
ははっと乾いた笑い声を出すウィンドゥ。
「ギルドマスターさん?僕が他所の国から来たことについては可能性として考えないわけ?」
「何処の国から来ようとこのダンジョンに入る人間はギルドに所属しているなら皆チェックされている。そこにも君の名前はない」
「なるほどね。で、何が言いたいわけ?」
ウィンドゥの顔には今でも歪な笑顔が張り付いていた。
「単刀直入に聞こう。君がこのダンジョンのボス━━━━ダンジョンマスターなのではないのか?」
周囲が騒然とする。
「こ、このガキがダンジョンマスター………だと」
「こんなガキが………ボスなのか?」
そんな言葉を受けて否定し始めるウィンドゥ。
「面白い冗談だ。僕がダンジョンマスターだなんてな。なぁ、否定してやってよカイム」
「そうだな。全く面白い話だ」
「そうだろ?カイム。いやぁ面白い事を言………」
「面白いことを言っているのはお前だウィンドゥ。騙せると思ったのか?」
俺はかつて拾ったあの羽根を出した。
「お前が落としたアイテムだ。これ、お前の羽なんじゃないのか?」
そう言ってやるとふふふと笑い始めるウィンドゥ。
「なるほどな。最初から僕はやらかしてたってわけか。もしかして初めから僕がダンジョンマスターだってのは気付いてた?」
「薄々、な。」
「で、何で僕をパーティに入れたわけ?」
「利用させてもらっただけだ」
「くくく、1本取られたってわけか」
ウィンドゥが扉に向けて後ずさり始めた。
「カイム」
「何だ」
「僕と戦う気はあるかい?勿論本気になった僕なら君などぺちゃんくちゃんのけちょんけちょんだけどね」
そう言って背面の扉を開けたウィンドゥ。
そこから
「な、なんだこの風は!」
「帰りは送ってあげるよ。また挑みに来てくれカイム。僕はこの頂きで待つことにしよう」
ギルドマスターの叫んだとおり凄まじい風が俺たちの体を運ぶ。
「カ、カイム!」
「カイム様!」
「死ぬ死ぬ死ぬー死んじゃうーー!!!」
マリー、アナ、ニーナの3人がそれぞれ俺に抱きついてきたが。
「この風ゆっくりだぞ?」
ゆったりと外の世界に返される俺たちだった。




