3-10.強襲
前回あらすじ:公爵やる気です、ヨガは逃げれません。
リーシェさんが震えている、笑いをこらえているのだ。
キューさんに至っては、腹を抱えて地面に転がっている、笑うのを堪える気はない。
俺が上半身裸で、仮面をつけているせいだろう。
むき出しの肌にはびっしりと模様がある。
『竜騎士長』に渡した剣の補充が間に合わなかったのと、自分の正体を隠すため武道家に扮している。
それが2人に受けた。
「に・似合って・・るよ」
リーシェさん、笑いながらの言葉を信じるのは無理。
よっぽど可笑しいのか。
計画は俺が単身乗り込んで、2名の『竜騎士』を沈める。
それまでリーシェさんたちは、荷馬車とともに待機している。
彼女たちの他にも30台ほどの馬車と御者が用意されている。
卵を盗み出し、各地に運搬する予定だ。
全員仮面をつけているのに、何故俺だけが笑われるのだろう。
俺は軍馬に乗って山の麓まで来ている。
山の下側は『竜騎士』に焼かれ隠れるところがない、近寄るものを見張るためだろう。
それに『竜騎士』が山を周り巡回している。
『竜騎士』が見えなくなった瞬間に、一気に横切って向こう側に隠れる。
その後は何の問題もなく洞窟の入り口までこれた。
『竜騎士』をどうするかだが。
ドラゴン同士では念話ができるそうだ、ドラゴンを残せば他の『竜騎士』に連絡がいく、それは避けたい。
同時に2体のドラゴンを仕留めたい。
なので俺は同時にやれる時を狙っていた。
巡回している『竜騎士』は時間が来れば、洞窟の入口に戻り別の『竜騎士』と交代する。
この時2人と2体がこの場所に集まる。
「何者だ、ここは『竜騎士』以外立ち入り禁止だ」
俺が飛び込むと2人の『竜騎士』が剣を抜く。
「俺にも殺らせろ」
1人が空に上がって待機する様子はないし、仲間に連絡してもいない。
俺を簡単に殺れると思っているのだろう、慢心しすぎだ。
気合を入れて、全身にマナを行き渡らす。
本物の『マナまとい』ではないが、それっぽくは見える。
これで十分ピノの最速に耐えれるようになった。
「『竜騎士』の剣が『マナまとい』で防げるものか」
俺を挟んで構えて一斉に襲ってきた、ドラゴンにやらせる気もない。
正面から来た『竜騎士』の手首を抑える。
同時に後ろから斬りかかられるが、ピノで強化している、剣は表面で止まっている。
「ばかな!」
なるほど、ドラゴンのマナを使ってマナを吹き飛ばしているようだ、これでは普通の『マナまとい』では防げない。
残念ながら、俺の身体強化にマナは使っていない。
そしてそいつの手も掴む。
これでは近すぎてドラゴンは火炎を吐けない、普段から連携なんて考えていないのだろう。
『竜騎士』のマナを変えた、同時に2人と2体から悲鳴が上がる。
思っていた通り繋がっているドラゴンにも影響が出た。
そのまま4つは崩れ落ちる。
俺は奥に入って行く。
奥の部屋には大きな塊がある、これがドラゴンの卵なのだろう、100以上はある。
卵は模様の書かれたものに巻かれている、これが封印か。
公爵もこの模様のすべてを知ることはできなかった。
1つの可能性として、この手の封印には移動も禁止した物がある。
その模様は事前に教えてもらっていた、なければ封印の解除は後にして卵を運ぶ
封印が有れば、封印を解かなければ移動はできない。
ただし封印の中に移動を抑えるこの文様が含まれていた場合は、こちらに都合がいい目印になるからだ。
目印を探すと、あった。
そしてこの封印の解き方も教えてもらっていた、魔力のある墨で一部の模様を消すように線を引く。
引いた線で封印が切れ地面に落ちる、これで封印が解けた。
(ピノ、リーシェさん達へ準備が出来たと伝えて)
しばらくして仮面を付けた者達が来た。
封印が解除された卵を運びだし、まだのものは封印を解除してゆく。
誰も口を効かない、静かな中で淡々と作業を行っていた。
リーシェさんとキューさんは馬車の場所で待機、悪いが俺と一緒に最後にここを離れてもらう。
誰も口を開かず静かに作業を続ける。
静かだったせいだろう、入り口での騒ぎに気がついた。
「しまった」
ドラゴンが目を覚ました、予定より早い。
入り口にゆくと、2体のドラゴンが飛び立ち、目の前にいる。
外に来た者たちが攻撃をしているが効果がない。
俺が『竜騎士』を対処する計画だったので、彼らが戦力として期待できないのは仕方がない
「引け!
俺がやる」
空に浮いているドラゴンに素手はきつい、攻撃が届かない。
計画は失敗か、先に運び出していた卵を載せていた馬車は出発している。
1つでも運び出すためだ、これで全部の卵を運び出すことはできなくなった。
仕方がない。
倒すことは無理かもしれないが、足止めはできるだろう。
前に出て構える、適当だ本物の型など知らない。
"感謝、開放、歓喜”
突然、頭の中に大音響で声が響く。
<高出力で思念が流れ込んできました。
頭が壊れる危険があります、強制的に感度を落としました>
声を聞けば、その主を知ることができる、目の前のドラゴンだ。
俺に嬉しいと謝意を送ってきたのだ、お礼されて死ぬところだった。
”相棒、汚い、怒り、不潔”
そうか『竜騎士』のマナを変えたので、ドラゴンとの絆が切れたんだ。
これなら、他の『竜騎士』からもドラゴンを開放できる。
頭に響く声は人の念話ではない、直接的な感情が流れてくる、それを俺が言語として理解している感じだ。
驚いたがドラゴンも『竜騎士』に怒りを持っていた。
「大丈夫だ、このドラゴンは敵じゃない」
周りにいた者へ声をかけ、攻撃を止めされる。
しばらくドラゴンを見ていたが、安全とわかると作業に戻った。
プロだね。
「なかに有ったドラゴンの卵を運び出している。
各地で正規の『竜騎士』を生んでもらうつもりだ、手を貸してくれないか」
俺はドラゴンに対し言葉で伝えてみる、長年人と暮らしていたんだ言葉くらい覚えただろう。
”承知”
運び出せなかった分を彼らに運んでもらおう。
[こちらに向かって、何か飛んできています。
来た方向と形状から黒竜かと、数は24]
黒竜だって、なんでこんな時に魔王軍が。
文句を言っても仕方がない。
「黒竜が、来る。
お前たちは中に戻って作業を続けてくれ。
ドラゴン俺を頂上まで乗せてってくれないか」
この洞窟から注意をそらしたい、上に行って囮になるつもりだ。
”拒絶、非相棒”
なんだ『竜騎士』以外、乗せてくれないのかよ。
”運ぶ”
と言うと俺を掴んで飛び上る。
"敵、倒す、卵、守る”
俺を頂上に運んだ後、ドラゴンの怒りが流れ込んでくる。
黒竜がここに来たのは、卵が目的だと思っている。
『竜騎士』の敵は魔王軍だ、それを狙うのは分かるが、なぜ今夜なんだ。
2体のドラゴンは、上空に上がって敵を迎えようとしている。
黒竜は彼らの3〜5倍の大きさがある、抑えきれない。
俺もできるだけ卵を運び出す時間を作るつもりだ。
身構えている俺の後ろで爆音が鳴る。
鳴き声だ、けたたましい叫びを上げて『銀鱗翼竜』が火口から飛び上がる。
銀色の羽根が全身を覆い、鳥の翼を持つ姿、大きく何より神々しい。
高く舞い上がると、一直線の炎を吐き出した。
[黒竜に命中。
奴らは散らばりました]
続けざまに、まだ見えない敵に炎を吐き出している。
黒竜も応戦してきた、炎の塊が飛んでくる。
『銀鱗翼竜』と2体のドラゴンが突っ込んでゆく。
『銀鱗翼竜』の炎は一撃で黒竜を撃破している。
黒竜の炎も『銀鱗翼竜』に当たってはいるが無傷だ。
『竜騎士』のドラゴンでは黒竜には効いていない、黒竜の火炎は早く動くドラゴンには当たらない。
黒竜が1匹火口に下りてきた、上空には手が出ないが地上でなら相手にできる。
急いで駆け下りて黒竜に向かう。
下りた黒竜は何かを探している、卵を狙うなら洞窟に行くと思ったが違った。
後ろから卑怯かと思うが、サンダースピアを叩きつける。
雷の槍はぶつかった瞬間に消えた、魔法防御か。
切り替えて、思いっきり殴る。
こちらも魔法で守られていたが、ただ完全には保護出来ていない表面の鱗を砕いた。
それほど効いてはいないだろうが、狙いはこの次。
黒竜のマナを変えようと、マナを探したがない。
ばかな!
マナは生き物ならどんな小さいものにでもあった。
それに魔法はマナがなければ使えない、黒竜の飛行や炎は魔法の力を使っている、ならマナがあるはずだ。
戸惑っている俺に尾が当たる、吹き飛ばされた。
続けて黒竜の火炎の直撃、身につけていた物は灰になった。
俺は無事だ。
<今の攻撃100回程度なら問題ありません>
だけど攻撃の決め手がない。
どうして黒竜のマナを掴めなかった、対峙している今でも奴からはマナを感じているのに。
<頭部にマナが集中しています。
魔石と推測できます>
黒竜の攻撃をかわしながら、反撃を試みようと考えていると、ピノが助言をくれた。
魔石?
<残念ながら魔石の解析はまだできていませんが、マナを集め貯める性質はわかっています。
そのマナを使って魔法を行使しているのではないでしょうか>
軍馬にも性質を変えた魔石を載せているが、魔法は使えない。
以前俺が魔石のマナを使おうとした時は止められたが、ドラゴンなら可能なのか。
狙うなら、その魔石ということか。
マナで全身を保護してピノの力で高速移動、頭を狙っての連続攻撃、これならどうだ。
何十と拳や蹴りでの攻撃を頭に当て弱らせ、最後に渾身の一撃を拳を頭に突き入れ魔石を取り出す。
黒竜が倒れた、やっと1匹。
気は抜けない、なぜなら1匹倒す前に2匹の黒竜が戦闘に参加していたからだ。
高速移動を続け、なんとか2匹も倒すことができた。
<警告します。
体内温度が上がり過ぎました、冷却のため行動を控えてください>
動くなということだが、大丈夫だ疲れて動く気はない。
ドラゴン達の戦闘は続いている、『銀鱗翼竜』が火口上空でまわりを飛び回る黒竜に炎の攻撃をしている。
黒竜の攻撃は当たっているが全くの無傷だ、これならもうすぐ終わる。
いきなり空が三角に光る。
その中に『銀鱗翼竜』がいた、落ちてくる。
(何が有った!)
[4匹の黒竜で正三角錐を作り、その中を高エネルギーで一瞬満たしたのです]
正三角錐?、と思ったが頭に図形が思い浮かべる。
なるほどこの中に閉じ込められると、やられるのか。
4匹はその形を保ったまま下りてきた、もう一度、同じ事をしようというのだろう。
させない、1匹に狙いをつけて攻撃を開始した。
禁止されていたが高速移動で攻撃を再開する、もう少し持つだろう。
なんとか俺が1匹倒したところで、『銀鱗翼竜』は最後1匹を引き裂いていた。
俺が頑張らなくとも大丈夫だったか、いや俺も役に立ったと思いたい。
空に2回炎を吐いて黒竜を殲滅、これで敵はいなくなった。
<もうこれ以上の高速移動の連続使用はできません>
自分の体から煙が出ている感じがする。
(しないよ)
そう答えながら目の前の『銀鱗翼竜』を見た。
上空の敵へ炎を放つため伸び上がっていたが、音を立てて崩れ落ちそのまま動かない。
さっきの攻撃が効いているのか、こちらは本当に体から煙が上がっている。
(助けられないか?
ピノでなんとかならない)
”妾は望まない”
頭の中に声が響く、『銀鱗翼竜』からだ。
『竜騎士』のドラゴンと違い、言葉になっている。
「大丈夫ですか」
”騒ぐな妾は、もうすぐ死ぬ”
とんでもない事を言いだした。
「『銀鱗翼竜』様、諦めないでください。
その怪我を、なんとかします」
この場に居合わせたんだ、なんとかしなければ。
”敵の攻撃のせいではない。
もう寿命なのだ、奴らはそれを知って襲ってきた。
妾が消滅するには1年早かったが”
「寿命?
不老不死ではなかったのですか」
”妾とて生き物ぞ、死す定めは持っている。
600年生きれば死んで当然、どこぞの狐と一緒にするな”
「600年?
ですが、もっと古くから『銀鱗翼竜』様はいらっしゃったのでは」
1000年以上前の記録もあるはずだ。
「妾はそこまで年寄りではない。
母上たちであろう」
母上?
『銀鱗翼竜』様は世代交代していると言ったのだ。
「他の守護竜にも寿命があるのですか」
”当たり前だ”
守護竜に寿命がある。
俺はその事に衝撃を受けている、守護竜は不死だと思っていた。
魔王軍に敗れでもしない限り存在し続けると、誰もがそう思っていたはずだ。
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