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宇宙戦艦に魔法は使えません。  作者: 野紫
2章
19/104

2-10.王都へ・中篇

前回あらすじ:

 王都へ行く途中、火狐様に会いました。


 アルテミラル王国の王都ペデリンは大きかった。


 俺たちが護衛していた商隊の人が、街に入る手続きと税の支払をしてくれた。

 俺たちは、後に続いて行けばいい。


 中に入ると商隊のリーダーが

「帰りは3日後になります。

 それまではこの街の中で自由にしていて下さい。


 ケンテハルさん、宿の手配はよろしいんですよね」


 この仕事は、ケンテハルさんが仕切っている。


「王都には明るいんで、大丈夫です。

 ご心配なく」


「そうですか、ではお約束のお金をお渡しします。

 では3日後の朝に」


 往路で3分の1をもらうことになっていた。

 このお金が街での滞在費になる。

 きっちり人数で分けた後は、パーティーごとバラバラになる。


「3日後、日の出前に集まれよ。

 いなかったら、契約不履行でギルドに報告するからな」


 各パーティーには1人はこの街に詳しいものがいるそうだ。

 うちの場合はトゥールさんだ。

 国境警備隊にいたころ何度も来たことがあるらしい。


「王都への武器の持ち込みは制限されてるから、ここに預けていこう」


 街門の内側は中庭になっていて、街へ入るにはもう1つ門を通る。


「内の門は出入り自由だが、街の中に武器を持って入るには別の許可がいる。

 金がかかるし、3日の滞在では許可がおりないので、申請もしていない。

 当然俺たちは持ち込み禁止だ」


 中庭の塀にはドアの付いた荷物入れが並んでいる。

 ドアには金属の札が差し込んである。


「俺とヨガの剣、リーシェさんの弓と矢は中に入れる。

 ナイフや女性陣のショートソードは持ってても問題ない。


 ドアの札を取ると鍵がかかる魔法道具だ。

 金はかからない。

 ただし、20日入れっぱなしだと没収される」


 俺は初めての仕組みで戸惑う、ここはトゥールさんに任せよう。

 と思っていたら。


「安い宿と綺麗な宿、どっちにする」


 俺は、他の2人を指さし。

「安全な宿」


「そりゃそうか」


「お兄様、少しは考えて下さい」

「だよね」

 女性が2人もいるんだ、多少高くなるのはしかたがない。


 少し上等な宿に2部屋をとった。

 いつでも風呂が使えたから、それなりに高い。


「まず風呂で汚れを落として、後は部屋で休もうぜ。

 疲れた」


 もう昼過ぎだが、飯は食べてない。


「そうだな。

 でも、何か食いたい。

 宿で保存食はやめたいな。

 せっかくなら、外行ってみないか」


「ヨガに賛成」

 リーシェさんが賛成してくれる。

 キューさんも手を控えめに上げている、賛成のようだ。


 2人とも街を見て回りたいのだ、ワクワクしているのがわかる。

 俺も街の中を見たい。


 全員鎧を外して、午後の街をぶらついている。

 そう言えば、こんな姿で4人がいるのも珍しい。


 聖服の中に着ていたチェーンメイルを脱いだだけだから、キューさんの外見に変化はない。

 ただし、より女性らしい体のラインが出ている。

 視線がいかないように気をつけよう。


 トゥールさんは、簡素だが上品な服を来ている。

 何だ街で着る服を持ってきていたんじゃないか。


 リーシェさんは、言わないでおこう。


「なに、ヨガ。

 言いたいことあるの」


「リーシェさんが可愛いと思ったんですよね」


 キューさんは美人で色っぽく、リーシェさんは可愛い。

 すれ違う何人かは、視線を2人に向けてくる。

 その後に男どもに向ける視線には、敵意を感じるが。


「トゥールさん街で着る服を持ってきていたんですね。

 荷物になるのに」


「王都だと、知り合いに会う可能性があるんだよ」


「ラーディにも知り合いは多いじゃないですか。

 でもそんな格好しませんよね」

 辺境周辺が領地の男爵だから、ラーディの方が多いはずだ。


「ラーディとは別の種類の人たちだよ。

 あまりだらしない格好ではいられないのさ、めんどくさいがな」


 そうか、ここの貴族は冒険者じゃない。

 他の国より冒険者に理解があると言っても、そこは階級社会で生きる人達だ。

 面倒だろうな、そこは俺も共感できる。


 肉を串に刺して焼いたものを、屋台から数本ずつ買って歩きながら食べた。

 元々美味しい物だったろうが、楽しい雰囲気もあって特別な物を食べている感じだった。


 こうして食べ歩くのなんて初めてのことだ。

 今本当に俺は自由なんだな。


「ヨガ泣くほど美味しい?」

 うるっと来ていた俺を見逃さず、リーシェさんが聞いてくる。


「目にゴミがはいって」


 ーーーーー


「俺は寝てるから」


 翌日も街に行きたいと言った、妹への返事がこれだ。


 俺も宿にいたかった。

 昨夜ビチュレイリワから、今日は危ない目にあうので外にでないほうがいいと、予言じみた忠告を受けている。


「ヨガ、知らない街に若い女性を2人で行かせたりしないよね」

 リーシェさんが、荷物持ちとして俺をつれていくらしい。


 今回の護衛の報酬が1つ星にしては割がいいといっても、欲しい物を好きなだけ買える金額ではない。

 1つの店で色々吟味して、結局なにも買わずに出てくることも多い。

 持つ荷物はない、ただ付いているだけだ。


 でも俺がいる理由はある。

 男たちがチラチラとキューさんを見ている。

 俺がいなければ声をかけられていただろう。


 街の中には色々な店があり、婦人専用の服屋まである。

 一緒に中へ入るのは勘弁してもらった。

 入り口が見える場所で行き交う人々を見て待っていた。


 いろんな人がいる。

 人の数は多いが、種の数はラーディの方が多い。

 エルフまじりはそれなりにいるが、4つ耳族は少ない。

 獣人やリザードマンはこの街に入っては見ていない。


 見かける4つ耳族の人は、何か仕事をしているようだ、この街に住んでいるのだろう。

 この国には奴隷はいない、前を通る4つ耳族も仲間と笑いながら歩いている。

 一見差別はないように見えるが、完全にないわけではないのだな。


「ようヨガ。

 ちょうどよかった、今時間あるか」


 ケンテハルさんが声をかけてきた。


 向こうの店を指さして。

「荷物持ちの要因だよ」


「大変だな。

 こっちも頼みがあるんだが、ちょっと付き合ってくれないか」


[大変な目にあうことが確定しました]


(何だそれは)


<宿を出たところから、後を付けられていました。

 ヨガが知らない振りを出来ないかもしれなかったので、教えてませんでしたが>


(俺はこれから危ない目にあうのか。

 でもお前らが避けなかったということは、そこまで危険ではないのかな)


[はいその通りです。

 公爵が、リーシェさんを守れる力がヨガにあるか試すようです]


「付き合ってもいいが、あの店の中に入って2人に言ってくれ」

「一緒にここで待つよ」


 ケンテハルさんが待ちきれなくなって、どうしようか考え始めた頃、2人が出てきた。


 2人は、俺と一緒にいたケンテハルさんに気づいて

「ケンテハルさん、どうしたんです」


「昨日みんなと別れた後、俺は知り合いの男爵の家に行ったのさ。

 この街に別宅を持っている男爵も多くてな、早くから飲んでいた。

 酒の席で火狐様(ヒコさま)に会った話もしたんだよ。


 一緒に飲んでた中に若い貴族もいてな、そいつが早々に帰って親父に話しやがった。

 で、ブフルグ伯爵様が、話を聞きたいと今朝使いをよこされた」


「呼ばれたのケンテハルさんだろ、どうして俺を誘うの」


「最後ヨガが一緒だったからよ。

 そこでの話も聞きたいということでしょう」


「なにせ火狐様は伝説そのものだからな、全部聞きたいらしい。

 それにどうも他に身分の高い方々にも声をかけているらしい」


 行きたくねー。


「他の方々はお忍びだ、俺たちの前に出てくることはない。

 逆に気づいても、見なかったふりをしてくれ」


「行かないわけにはいかないんだろう」


「少し急ぎたい、2人には悪いけど一緒に来てほしい」


「俺には悪くないのか」


「ヨガが行くのは、朝にすでに決まっていたことだ」


 ついていくと伯爵の館につく。

 王都にある伯爵の別宅だ、作りが豪華だ。

 本当の屋敷は領地にあり、ここは王都で人と合うためだけのものだろう。

 見栄のため一層豪華なのかもしれないか。


 俺たちの話は夜のパーティーでの余興になるらしい。

 屋敷には夕方に着いていたが、全員一部屋に通され時間がくるのを待っていた。

 簡単な食事と菓子、お茶が用意されていて待遇は良かったが、何しろ暇だ。

 お茶を飲むしかない。


 日が沈むと伯爵家の従僕が呼びにきた。


「そんな気疲れしそうなとこには、行きたくない」

 女性2人はそのまま部屋で待っているそうだ。


 呼び出しの声に応じて、俺たちはパーティー会場に入る。

 視線は床に落としたまま主賓の前まで進み膝を下ろす。


「ブフルグ伯爵様のご指名により、参上いたしました。

 ケンテハルでございます」

「同じくヨガにございます」

 視線は床に向けたままだ。


「ヨガ、ケンテハル両名、顔を上げてください。

 そう緊張するものではない、呼んだのは話を聞きたかったためだ。


 お前たち以外は仮面を付けておる、今宵は無礼講だ」


 視線を上げ、目の前にいるブフルグ伯爵を見る。

 小太りの中年男性で、笑顔を向けてくる。

 この部屋にいる人は全員仮面を付けていた。


<他にも伯爵やそれ以上の貴族もいます。

 そしてテーブルの上にある水晶の飾りは、2人の姿と声を別の部屋に投影する魔法道具です。

 その部屋には公爵がいますね>


 ブフルグ卿はカラカラと笑いながら

「私が思っていたより、話を聞きたいと思われたかたが多くてな。

 まともにやってたら、話を聞くのに10日以上もかかってしまう。


 仮面を付けて頂いて、誰がいるのか分からなくしたのさ。

 その方がお前たちも気楽だろう。

 これは楽でよいな」

 貴族と言うより、小金持ちの商人と言われたほうがしっくりする。


「父上なにを言っているのですか。

 お集まりの皆様に失礼ではないですか」


 彼が息子か。

 横にいる夫人が、客に頭を下げている。

 言われている客も笑っているので、あまり問題にならないのだろう。


 なんて違いなんだ、家族も貴族も。

 これが同じ伯爵、そして家族だなんて。

 俺がしっているものとはあまりにも違う。


 最初にケンテハルさんが、火狐様に会った時の話をし。

 続けて俺が、火狐様と別れた時の話をした。


「なるほど、火狐様は死にたがっていらしゃったのか。

 我々は不老不死に憧れるが、死ねぬとは辛いのかもしれぬな」


 俺の話を聞いてブフルグ卿が感想を言った。

 それをきっかけに、他の客も色々聞いてきたが答えられるものはなにもなかった。

 一瞬あっただけなのだ、仕方がない。

 それで俺たちの出番は終わりだ、目立たないように部屋をでる。


 ケンテハルは用事があると、俺たち3人だけで帰ることになった。


 屋敷の裏口で

「では、お気をつけて」

 と3人になるが、怪しすぎるだろう。

 普通は門まで誰かついてくる、敷地内を勝手に歩かせるなど、させるわけがない。


 いよいよか。

 中庭を通る時、1人の男がいきなり襲いかかってきた。


 待っていたので、余裕を持って相手を地面に叩きつける。

 持っていた剣を奪って、首筋に当てたところで本命のご登場だ。


 何者だの決め台詞を言わせない、すぐに一撃を加えてくる。

 最初の男は俺に剣を渡す役だったようだ。


 反撃するスキがない、最初の攻撃から防戦一方になっている。

 体の動作は俺の方が早い、ピノの支援が必要なわけではない。

 だが相手の動きに無駄がない、最短の動作で次々と攻撃してくる。

 俺の方が早く動けているので、かろうじて防げているのだ。

 全く余裕がない、全神経を彼の剣に合わせそれを防ぐので精一杯だ。



 後ろに吹き飛び、庭木を叩き折っている。

 やられたわけじゃない、自分で後ろに飛んで逃げたのだ。

 正確にはピノが反応した、俺は何が起きたかわかっていなかった。

 ピノが補助脳に自分のしたことを上書きしてくれたので理解は出来ている。


 彼の今の一撃、急に速度が上がったのだ。

 制限を外した俺よりも早い。

 ピノが慌てて回避したので、加減が出来ず後ろに吹き飛んだのだ。


 俺と彼の間に、サラマンダーと防御壁が出来ている。

 リーシェさんとキューさんの援護だ。

 あの攻防中には割り込めなかったのだろう。


「ヨガ、大丈夫?」


 リーシェさんに手を上げて応える。


(今の殺そうとしてたよね。

 これ俺を試していたんじゃないの?)


 首に手を当てると、皮一枚切れていて薄く血が出ている。


[公爵が彼に命じていたのは、試せでした]


<私が介入しなければ、ヨガの首は飛んでましたね>


(これは無理、逃げ切れる方法を探して)


[その必要はありません]



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