もっと高く もっと遠くへ
もっと高く、もっと遠くまで行きたくなった。
『処刑はもう よろしいのですか? 』
ガジャさんが魔法で通信をしてきた。
『うん あとは任すよ』
『畏まりました あとは 私めに お任せ下さいませ ツバサ様の御希望の通りに全てを 見事に 成し遂げて お見せしましょう』
『うん⋯』
とりあえず、雲を抜けて太陽まで 近づけるだけ、近づいて見よう。
なんだっけかな、あの話⋯みんなに、みにくい鳥だといじめられて、無理難題を吹っかけられて、死ぬしかなくなって、空高くまで飛んでいって、地に落ちて、それでも何度も何度も飛び上っていって、最後は血だらけになって、星になる話。
太陽に近づき過ぎて翼がなくなって落下しちゃうのはギリシャ神話のイカロスだもんね。なんだっけかな?思いだせないや⋯
多分、半日は飛んだ。お腹が空いた。いくら、飛んでも、どれだけ雲を抜けても、太陽はいっこうに近くならなかった。
周りは暗くなり、太陽は沈み、月が昇り、星が瞬いた。暗闇の中、ボクはがむしゃらに飛び続けた。
そして朝が来た。太陽の位置は変わらない。そう、何も変わっていなかった。この世界にも大気圏とかあるのだろうか?いくら飛んでも、寒くなったり、空気が薄くなったりする様子は全くない。てか、そもそもここは地球のような惑星なのだろうか?
太陽はある。月もある。星もある。夜もある。昼もある。朝もある。春もある。夏もある。秋もある。冬もある。
だけど、いくら飛んでも何も無い。とてもお腹が空いた。頭がクラクラする。魔力も底をついてきた。
もう復讐は果たした。ボクの願いは叶った。もうボクは空っぽだ。こんな世界はもう嫌だ⋯
神様はボクが望んだから、この世界に転生させたと言っていた。だけど、ボクはこんな事は望んでなんていなかった。
なんで、こんなに苦しい目に合わなければならないんだッ!!!!!
もう、魔力は完全に空だ。
「このまま ここから落ちたら 死ねるかな」
翼はそう呟いた。




