処刑開演 その2
なかな処刑は始まらなかった。 オープニングセレモニーやら、音楽の演奏やら、踊りやら、舞台劇やら、よく分からないものを長々とやっている。ボクはイライラしながら、そんなものを見ていた。2時間くらいたったろうか、やっとこれから3人を処刑するみたいだ。
「会場の皆様 お待たせしましたッ!これからァ 神様からの使者であり 世にも尊き御方 そしてッ 絶世の美少女 白き魔女様を奸計のもとで残虐非道の極みにおいて欺いた生きている価値が皆無の超極悪の3人組をご紹介しましょう!!!」
ボクの事を褒めすぎて、逆にバカにしている様に感じる。ここまで、ずっと聞いているのが苦痛だった。これはいったいボクに対するどんなプレイなんだ。
眩い光と共に魔法で3人が会場に転送された。凄まじい大ブーイングだ。石を投げている人もいる。石なんてそこら辺にないだろと思ったら、転送魔法を使って出しているようだ。そこまでして石を投げたいか?
正直、ボクは3人の事をこの状況でも恐れていた。なぜなら、みんなの目の前で僕が本当は白き魔女では無いという事や3人に酷い拷問を受けて、洗脳され、調教され、奴隷として、売られた過去を話し出すんじゃないかという不安があったからだ。
だから、僕は3人に猿ぐつわでもして貰ってしゃべれない状態にしてさっさと処刑して欲しいと頼んだ。
でも、それはできないと断られた。こういう国をあげての大きな処刑の場合、罪人は懺悔の機会を与えられるのが通例で、それはもう決まっている事だから変えられないのだと言う。それで、僕は名前の知らない偉い人とえらい揉めた。
結局、ガジャさんに裏側を話してもらって納得した。すなわち、これはあくまでも、国威高揚の為のショーなのだという。だから、ミライリアやボクにとって 都合の悪い事は決してしゃべらせないし、そもそもがきちんとした台本があるそうだ。
どうやって、その台本通りに動かすかと言えば拷問や時には洗脳を使うらしい。リアルな反応を国民に見せる為にそういった事はしないというケースも多いらしいけど、いずれにせよ、全ては完全にコントロールされているという。
「ご安心して下さい 私は拷問において プロ中のプロです 大陸の覇者 神聖ミライリアの威神にかけて 私のこの命にかけて 翼さまが恐れるような事態にはならない事を誓います」
そう言われて、ボクは納得したのだった。だけど、ボクがその場に登場する事だけは頑なに断った。出るように懇願されたけど、それは心の底から嫌だった。上手く説明出来ないけど、とにかく嫌だった。でも、殺される所はキチンと確認したかったから、隠れて見に来たという訳である。
3人が登場した時にボクの不安は吹っ飛んだ。3人の顔には全く生気がなく、何かに過剰に怯えている顔だったからだ。あれはボクだ。3人に拷問された時のボクだ。あーなってしまったら、抵抗する事なんて出来ない。それはボクが一番よく知っている。
3人は、懺悔をはじめた。観客は罵声を浴びせ、石を投げつけた。石はヒロの頭に当たった。ヒロの額から血が出た。それでもヒロは懺悔を続けた。みぅは泣いていた。しそれでも懺悔を続けた。3人とも感情のない人形の様だった。
そのあと、罪を認めたならば罪を与える、という事で拷問が始まった。それはそれは惨たらしい拷問だったが、観客は大喜びして歓声を上げた。
なんか、ボクは逆に引いてしまって、他人事になってしまって、謝っている人間を良くもまぁ、あんなにも痛めつけられるなと感心してしまった。てか逆か、謝って罪を認めたからこそ、叩けるのだ。これもネットと同じか⋯虫唾が走る。
もちろん自業自得だ。ボクにやった事が、自分たちに帰ってきただけだ。でも、それはボクにも言えることだ。これはボクが命じた事なんだ。だから、いつかはボクも⋯
ボクはこれ以上は見ていたくなかった。だから魔法で、空に向かって飛び上がった。
翼の姿を見つけて人々はどよめいた。叫び声をあげるもの、敬礼するもの、ひれ伏すもの、会場は狂喜乱舞となった。
ボクはそれを横目で見て、ただただ全てが嫌になった。そして、高く高く飛びたくなった。そう、高く高く⋯




