闇の中 ボクはいた キミはいる?
闇の中で翼は目を覚ました。目を擦り、よく見ると知らない女性が居た。
「誰だッ!?」
「お目覚めになれましたか?」
彼女は医者だった。どうやら倒れたボクをベットの上で看病していたようだ。彼女は人を呼び、ボクの関係者が堰を切ったようにたくさん入って来た。
知ってる人も知らない人もいた。なんか泣いている人もいた。みな口を揃えて「良かった! 心配した! 安心した!」と言った。だけども、ボクの心は冷えきっていて、何を言われても何も感じなかった。
暫くするとみんな居なくなって、再び部屋は闇に包まれた。
「静かになったな?」
「誰だ?!」
前に居るのは、見知ったメイドだ。しかし、口調が違う。何より身に纏うオーラがあまりに禍々し過ぎる。
「人は俺を悪魔と呼ぶ」
「厨二病の人ですか?」
「厨二病とはなんだ?」
「黙れ 動くなッ! 動けば攻撃する。ボクは多分 強いよ」
「聞いといて 黙れとは人の子は奇異なることを言う。なにをそんなに恐れているのだ。 平静を装っているんだろが 身体が震えているぞ ギャッツハッハッ!!!」
笑い声が闇に溶けていく。なんで、誰も来ないんだ?体がメイドだからか?エマちゃは?エマは影にいないのか??あんな事があったからか??⋯駄目だ。思考が纏まらない。
「そう警戒するな。俺はただ お前の願いを叶える為に来ただけだ」
願いを叶える⋯なにを言ってる?
「わからんのか?聡そうに見えて そうでも無いのか?忌々しい商人どもの牢屋で会っただろうが 俺だ ストゥツガルドだ」
「あー あの時のですね。思いだしました。じゃあ その子の身体を乗っ取っているって事ですか?ここでは魔法は使えないはずですけど」
「人間どもがよく使う味方を識別する結界か?下らん どんなシステムでも必ず穴がある。宮殿の外で身体を乗っ取ってしまえば後は魔法は使い放題だ。記憶を覗いて お前の下僕どもに乗り換えて ここまで来たというわけよ」
「あなたが捕まったのは そんなあなたの穴をつかれたからですか? 」
「言うじゃないか 人の子 じゃあ お前ッ! 殺してやるよッッ!!! ウッヒャヒャヒヤヒャャッ!!!」
メイドの目が薄気味悪く紅く光り、殺気がその右手に集まる。
どうする?メイドを殺したら、ボクがみんなに責められるよね、なんか上手い言い訳はあるかな?
そこまで考えて、翼はゾッとした。なぜなら、メイドの子を殺す事になんの躊躇もしていない事に気づいたからだ。
ボクはもう本当に狂ってしまってるな⋯翼はそう思った。




