53話 人を信じるなんてバカのすることだ
──人を信じるなんてバカのすることだ。
もちろん神様を信じるなんてもってのほかだよ。もし神様に願いを叶えてもらったという人がいたら会ってみたいね。
結局のところ、信じられるのは自分だけだ。
それがボクの短い人生で学んだことである。うん。悲しいね。でも信じるたびに裏切られたんだもん・・・
とにかくだ。『世界商会』と戦争になったのはボクのせいだから自分で全てを解決しなくてはならない。
ボクは人を殺す覚悟も人に殺される覚悟も持っている。でも当たり前だけど、そういう死のゲームはしなくていいならしないほうがいい。まずは戦争を避ける方法を考えよう。
何度も言うけどもボクは別に殺しに飢えてるヤバい人ではないのだ。平和を愛する泣き虫だけど心優しい人なのである。ホントだよ。
とはいえ、どーするべきか?
──閃いた。『世界商会』の一番偉い人を誘拐しよう!
トップの人をおさえれば上手くいく。ミライリアの前皇帝のグラムさんを殺した時もそうだった。
いや、上手くいってなんかなくないか?結果オーライだったとはいえ死にかけてめっちゃ後悔したよね?
・・・やっぱりボクは頭が悪いな。
生き残れたのは運が良かっただけだ。こんな雑な作戦がもう一度、上手くいくハズは無いよ。そんなこともわからないの?
──今回はボクは一人じゃないんだ。
騙しているとはいえボクを『白き魔女』として熱狂的に支持している人たちがいる。上手いこと利用するのもありだろう。
こう言うとボクは悪いヤツみたいだが、ガジャさんをはじめとしてそれを望んでいる人たちがいるんだからWin-Winの関係のハズさ。
みんなの負担もできるだけ少なくするし国にとって利益になるように交渉をするつもりだし別によくない?
ここはみんなに頼ってしまおう。そもそも『世界商会』の誰を誘拐すべきかも分からない。ボク一人の力ではワープをすることもできない。よくよく考えてみたらガジャさんとテスタロッテに相談しないとどうにもならないや・・・
・・・あれ・・・矛盾しているね。結局、ボクは人に頼ろうとしているじゃん。
いや、別に人を信じてなくても人を頼ったっていいのだ。裏切られるかもと頭に入れておいてそうなったら、どーするかを考えておけば対処はできる。
『えっと もしもし ガジャさん 今 空いてますか?』
ボクはガジャさんに念話をした。
『白き魔女様 私めは 何があろうと どのような時であろうと 貴女様のお声に全身全霊を傾ける所存でございます』
『え?! あ・・・ うん そうなんだ』
『それと 誠に申し訳ございませんが 恥ずかしながら学に乏しく その・・・ 存じ上げないのですが「もしもし」というのはどういったことを意味されているのでございましょうか?』
「もしもし」の意味なんて今まで考えた事がなかったけど、どいう意味なんだろう?
『いや そんなことは今はどーでもいいです 話を進めさてもらえますか? 世界商会の一番偉い人を捕まえに行きたいので 名前とその人が居る場所を教えて下さい』
『白き魔女様が御出になるのでしょうか? 何があるか解かり兼ねますし 御身を煩わせるようなことは畏れ多いことですので、出来兼ねますが・・・』
『いや あの ボクを敬ってくれるのなら ボクの意志を尊重してくれますか? 今まで我慢してたけど 結局いつも あなたはボクのやりたいことを邪魔しているよ』
『とんでもございません ご無礼をお許しください 世界商会の会長はクロセット・オバラという者でございます すでに我が手の者を数名 監視につけておりますので 今すぐにでも接触は可能でございます』
この人はなんだかんだで優秀だよね。かなりの確率でボクがやりたいと思ったことをすでに準備しておいてくれている。
『えと その中にテスの知り合いはいますか?』
『おります』
『合図をしたらテスを迎えによこして下さい それと ボクは世界商会と戦争を起こさない為の交渉をするつもりです その交渉を有利に進めるための材料を集めておいてもらえますか?』
ここで、ちょっと下手にでてガジャさんをおだてておこうかな。
『さっきは怒ってごめんなさい でもボクはあなたのことを本当は頼りにしているんです よろしくお願いします』
『そのような言葉をかけて頂き感涙の極みでございます ご期待に添えるよう粉骨砕身して尽くす所存でございます』
うん。上々だ。ボクは演技が上手いかもだね。




