52話 わたしはあなたを信じています
「まずは勝手な行動をして 皆さんにご迷惑をかけてしまい ゴメンなさい」
『白き魔女』と呼ばれる魔法少女ツバサはペコりと頭を下げた。
「でも 安心してください 世界商会との問題は全てボクが解決しますからね ちょっとだけ待っていてください」
そう言うとツバサは魔法を使ってなんとそこから居なくなってしまった。残されたもの達は困惑しポカンとしたままその場に立ち尽くした。
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──ツバサちゃんのやることは全て意味がある。
私、アルナ・レオンハートはそう信じている。彼女の全てを受け入れる。あの時、そう決めたから・・・
でも・・・でも普通にもう少し説明をして欲しい。
隣りにテスタロッテの姿が見えたのでどこかにワープをしたのはわかったが、なかなか来なくてやっと来たと思ったら・・・なんの説明もなくまたすぐにどこかに行ってしまうなんて、流石にちょっとヒドくない?
いや、愚かだな。私は・・・
ツバサちゃんを信じていないじゃん。信じると決めたのだから信じなくては・・・
裏切られた訳ではないのに裏切られるかもと悩むのは時間の無駄だ。悩むのは実際に裏切られてからにすればいい。
私がしなくちゃいけないことは何かを考えるんだ。そして今すべきことをしよう。
──大臣のチェイコフがツバサちゃんの批判をしている。
あの男は本人の前では何も言えないただの小物にすぎないのだけれども誰か一人が文句を言い出すとそれに乗っかって皆が文句を言い出すようになる。すでに他の者がチェイコフの意見に流されている。このままではツバサちゃんへの不満が今度こそ爆発するだろう。
チェイコフはツバサちゃんが来る前もあれこれ文句を言っていた。だが私はそれを止めることが出来ずにいた。
なぜなら自分に自信がないからだ。皇帝にふさわしい人間ではないと自分で気付いているから・・・
──『鷲獅子の政変』と呼ばれる皇族同士の内乱により私の父は処刑された。私がまだ生後6ヶ月の時の話だ。そしてその内乱で私も死んだことになっていた。
教皇ヨハン13世はこの国を乗っ取ろうと画策していたが私は彼によって、その為の一つの道具として生かされていたに過ぎない。自分が皇族の血を継いでいた事を知ったのもつい最近である。
ただのお飾りだと裏で皆に陰口を叩かれているのは知っている。正当な皇帝と認められていないのだ。だからどうしても強く自分の意見を言う事ができない。
・・・本当に私は愚かだ。やっぱりツバサちゃんを信じてないじゃん!?
何が私にとって1番大切なのかハッキリさせよう。別に誰にどう思われていようが構わない。私の大好きなツバサちゃんが私を信じてくれてさえいればッ!!!
自覚しろ。私はこの国をツバサちゃんに託されて皇帝になったんだ。弱気になるな。ツバサちゃんを守る為に戦うんだ。
「静まりなさいッ!」
アルナは一喝した。
「神のお心は常人には計り知れ無いもの 白き魔女様は神の使徒として そのお役目を果たそうとされている 我々に出来ることは信じて待つことです」
驚きと共に視線がアルナに集まりその場は再び静まりかえる。
・・・言ってしまった。もう後戻りはできない。でも不思議と心地いい。
「白き魔女様を信じるのです 白き魔女様の為されることは神聖ミライリアの総意だと知りなさい そしてもし異論があるというならば 相応の覚悟を持って この場で私に申し述べなさいッ!」
アルナがそう言い放ったその瞬間に・・・
──ツバサとリーゼロッテが恰幅の良い老紳士を連れて突如としてその場に現れた。
「お待たせしました こちらは えーと 『世界商会』の会長の・・・何さんでしたっけ?」
「クロセット・オバラだ ここはどこかな?」
「ここは神聖ミライリアの『空の円卓』です」
「なにを言ってるんだね 君は!? イタズラは止めて直ぐに私をもとにいた場所に戻しなさい 今は早急に神聖ミライリアとの交渉の対策を打たねばならんのだよ」
「えと それをここでやってもらえませんか? 自己紹介した方がいいかな 顔見知りはいないですかね? まずはボクはツバサです 『白き魔女』って呼ばれてます そしてあっちがアルナです」
「神聖ミライリア 第38代皇帝アルナ・レオンハートです 確か一度 晩餐会でお逢いしましたね」
にこやかに微笑んでみたものの内心は気が気ではない。完全に想定外の展開だ。結局、私なんかが色々考えても無駄なのね。もうこうなったら自分の信じたことをやるだけだ。
えーい!出たとこ勝負だッ・・・!
更新をサボりがちで自己嫌悪に陥ってます。サブタイトルのようにできない・・・楽しみにしている方、申し訳ございません。
表記を翼からツバサに変えてみました。良さそうならツバサで統一するつもりです。




