45話 デジャブ
真っ暗な牢屋の中に女の子がいる。ボクは慌てて鉄格子を魔法の力でひん曲げてその子に駆け寄った。
「え? 誰 ひッ!? 近づかないでぇ!」
女の子は鎖によって身体を拘束されていた。ボクはこの子がボクと同じようにみうに騙されてここに閉じ込められ拷問を受けていたことを一瞬で理解して心の底から怒りが込みあがる。
マジでアイツらは害悪だ。同情するんじゃなかった。生きている限りこうやって弱いものを喰い散らすんだから死んだ方が社会の為だ。
「落ち着いて みう達はもういない ボクはあなたの味方だ」
「寄らないで お願いだから 寄らないで もうやめてぇーーー!!!」
髪を振り乱し狂ったようにボクを拒絶する。ダメだな。何を言っても聞きそうにない。
暴力によって心が恐怖に支配されているのだろう。すでに人が信じられなくなっている。
急に騙されて閉じ込められて酷い目にあったのだから仕方のないことではあるがここでボクを拒絶したらこの女の子はここで死ぬことになるだろう。この牢屋の主はもうここに戻ることはないのだから。
でも嫌がっているから無理やり連れていくのは止めた方がいいかな?人は人の意志を尊重しなければならいと言うもんね。
そんなわけあるかッーーー!!!
ボクはこの女の子の意思を踏みにじってでもこの子を助けてやる。
「静かにして またヒドい目に合いたくなのなら 黙ってボクに助けられろ」
そう言ってボクは魔法で鎖を破壊して彼女の拘束を解いた。愚かで救いようのなかったボクの過去をみているようでなんかイライラする。
「ついて来て」
女の子は戸惑っているのだろう。その場で立ち尽くしている。
「OK 分かったよ 自分で選ばしてあげる ボクについて来るならば キミを悪いようにはしないことを誓うよ でも別に キミがここに居たいのなら 居てもらって構わない キミの好きにするんだ」
「助けてくれるんですか?」
「うん」
「本当に?」
「うん 絶対に 助ける」
「ありがとうございます・・・ でもなんで?」
「それはボクがそうしたいからだよ いいから 来て」
ボクは女の子の手を引っ張った。今度はボクを拒否らなかった。
『ガジャ聞こえる? すぐにテスをよこしてもらえるかな?』
『はッ かしこまりました』
一瞬にしてテスタロッテが姿を現す。
「お呼びですか? 翼ちゃん」
「うん 戻るよ 王宮に」
これから世界商会と戦争だ。もちろん戦争なんてやりたかないよ。だけどまったり異世界生活をしたいと現実を逃避すれば、この女の子みたいに再びボクは奪われる立場になるだろう。もうそれは嫌だ。だからボクは再び戦う。
それに守らないといけない者がだいぶ増えてしまった。
アルナ、エマ、テスタロッテ、シュリ、そして名前もわからないこの女の子・・・
みんなの為にもボクがここで逃げる訳にはいかない。戦争が起きる原因を作ったのは他ならないボクなんだから。




