43話 復讐するはボクにあり その4
そもそもボクはやられたからやり返しているだけだ。コイツらみたいに何もしていない相手に害を与えているわけじゃない。
当然の報いにすぎない。てか攻撃されてやり返さずに一方的にボコられる方がおかしいよ。
まぁ、でもやり返さずにやられっぱなしの人は多いよね。ボクは前の世界では心の中で相手をデスったりせいぜいネットの匿名で悪口を言うのが関の山だった。悲しすぎる・・・
そんなのは全く意味がない。悪いことしたヤツは痛くも痒くもない。反省なんかしやしない。
今だってそうだ。コイツらはボクの顔すら覚えてないじゃないか。ふざけきってるよ。
「お前は翼? 翼か? 奴隷のお前がなんでこんな所にいるんだ」
「翼ちゃん!? 思い出した 翼ちゃんなの・・・」
「なんだ 思い出しちゃたんだ ちぇッ 残念だな 右手を吹き飛ばそうとおもったのになー」
「冗談だろ これは一体どういうつもりだよ?」
ボクはヒロの右手を十字架ごと魔法で吹き飛ばした。屋敷に風穴が空いた。
「えっ? 冗談じゃないよ 冗談でこんなことをするわけないじゃん ボクはマジだ 常にマジだった あなた達はボクに何をしたのかを忘れた?」
ヒロの絶叫が聞こえる。快感だ。ぞくぞくする。もう片方の腕も吹き飛ばしみようかな?どんな声で鳴いてくれるかな?
「どうしちゃったの?翼ちゃん どうして・・・こんな こんな酷いことをするんですか??」
「それはボクがあなたに聞きたかったことだ? なんでボクにあんなに酷いことをしたの?」
「酷いことなんかしてないよ 私たち友達でしょう もう止めて下さい!」
「友達? ボク達は友達だったんですか へーそうなんだ へー」
ボクはブチ切れた。もういーや、殺しちゃおう。
ボクはこの屋敷にきてからずっと溜めていた魔力を解放することにした。その刹那、翼の膨大すぎる魔力よって屋敷に振動が走った。
『翼さまッ 落ち着いて下さい それを打ったら貴女さま以外 ここにいるもの全てが消滅してしまいますッ!!!』
『え あー ごめん ごめん ちょっと頭にきちやってさ もう冷静になったから 安心して 』
ボクは魔力を抑えて殺さないように細心の注意を払ってみうに魔法を撃った。
鈍い呻き声とともにみうの口から血から溢れでた。見た目にはそんなにヒドい傷はないけど魔法で内蔵をぐちゃぐちゃに掻き回してあげた。
「えっと 誰か 回復魔法をお願いします」
死んじゃったら元も子もないからね。早めに回復させてあげよう。
「はッ かしこまりました」
みうの身体が魔法の眩い光りに包まれる。みるみると傷が癒える。魔法の力は偉大だね。
「みーちゃん 今 どんな気持ち?? これはみーちゃんがボクにやったことだよ これでも友だちと言える?」
「あ・・・ あ・・・う・・・」
「何を言っているのかわからないよ みーちゃん あなたはさ ボクに言わないといけないことがあると思うんだよね それとも今やったことを繰り返そうか? あなたがボクにそうしたようにさー」
みうの虚ろだった目に急に恐怖により生気が戻った。
「もう もうやめて やめて ください 私があなたにしたことを謝ります 心から謝ります だから もう やめて・・・ください・・・」
実際にみうがやったことを自分がやってみると思っていたのとは違い嫌な気分になった。胸くそ悪いな。
ボクが同じように謝った時にコイツはその言葉を無視してさらに拷問を繰り返したけどボクも同じようにするべきだろうか?
いや、もうやめよう。ボクには無理だ。良心が耐えられない。コイツとボクは違う。ボクはコイツみたいな外道じゃない。
コイツと同じレベルにまで堕ちる必要はない。もう十分だ。
今までは負け惜しみでこんな捨て台詞を心のなかで吐いてきたけど今は負け惜しみじゃない。なぜなら完全にボクの手の中にあって好きにできるんだからね。どうせ、公開処刑するんだしここまでにしておこう。もうボクの勝ち確は決まった。
そう思ったら急にみう達から興味がなくなってしまった。ボクはボクの気持ちが本当の意味で晴れたことがわかった。
思えば、この時ボクは愚かなことに自分の勝利を確信していたんだ・・・




